免震構造が裏目に出る/(C)日刊ゲンダイ
一瞬で高層ビル倒壊 NHKが報じた「キラーパルス」の恐怖
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2015年1月21日 日刊ゲンダイ
都心の超高層ビルが瞬く間に崩れ落ちる――。「NHKスペシャル 阪神・淡路大震災20年」(18日放送)には、多くの視聴者が驚愕したんじゃないか。番組では、大阪直下の活断層「上町断層帯」で大地震が起きたと想定。鉄骨造り25階建て、高さ100メートルのオフィスビルが横倒しになる様子をCG映像でシミュレーションしていた。
超高層ビルまでも倒す揺れの原因。それは、大震災で神戸の市街地の木造家屋などを一瞬で倒壊させた「キラーパルス」だという。
「キラーパルスは一般的に、震源が破壊する過程で発生する地震動が1〜2秒周期になる現象のことです。地盤が固い軟らかいに関係なく、特に内陸直下型地震の際に起こります。ただ、震源の破壊過程と関係なく、似た現象が起きることがあります。都市部など平野部は、表層地盤が軟らかいので地震動の周期が1〜2秒になる。例えば、昨年の長野県北部地震、07年能登半島地震で一部で被害が拡大したのは軟弱な表層地盤が一因でした」(筑波大システム情報系・境有紀教授)
通常、地震の揺れは周期が0・5秒以下だが、1〜2秒になると木造建物や10階建て以下の中低層建物に大きな被害を及ぼす。地震の揺れの周期が、さらに長くなるとそのダメージは鉄筋コンクリートや鉄骨の高層ビルや高層マンションに及ぶ。最近は、「免震構造」が増えたが、「3〜7秒程度に周期が長くなって『長周期地震動』が起きた場合、免震構造がかえって揺れを増幅させる可能性があります」(境教授)という。
■隣り合うビルがぶつかり合って…
番組によれば、「キラーパルス」は最新の研究でどこでも起きる可能性があるというから、気になるのは日本一の高層ビル街が並ぶ東京近郊だ。
防災科学技術研究所のHPによると、オリンピック効果でマンションが乱立する豊洲や有明などの湾岸エリアや横浜・みなとみらいエリア、淀橋浄水場の跡地に高層ビル群を造った西新宿などは表層地盤が軟弱とされる。実際、東京で震度5弱だった東日本大震災では、西新宿の高層ビルの上層階が目視で分かるほど大きく揺れていた。
「震度7レベルの大地震で『長周期地震動』が起きた場合、耐震や免震構造であっても危険です。直下型より、震源が離れている方が被害は大きい。04年の中越地震(M6・8)では、250キロ離れた六本木ヒルズにある森タワービルのエレベーターのメーンワイヤが切れました。東日本大震災の時は750キロ離れた大阪府の咲洲庁舎(55階建て)で300カ所以上、壁がはがれるなどの被害が出ています。東京近郊の場合、東南海・南海地震が起きた場合が最も心配されます。高層階では揺れ幅が5メートルともいわれていて、隣り合うビルがぶつかり、人が外に放り出される可能性がある。建築基準法改正前の1981年以前の古いビルは崩れることも想定したほうがいいでしょう」(武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏=地震学)
想像をはるかに超える事態となりそうだ。