総選挙後に分かったこと
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52669343.html
2014年12月16日 在野のアナリスト
昨日、コメントにも記載しましたが、ここ3回の比例投票先をみる限り、自民1700万、公明700万、民主950万というのが、各政党のもつ基礎票で、ここからほぼ動いていません。そうなると自民は国民の20〜25%程度しか、投票先として選ばれなかったということです。事前の世論調査では、安倍政権の支持率が50%近かったことから考えても、かなり違和感のある数字と言えるでしょう。これは世論調査が間違っているか、自民圧勝の流れで支持母体の動きも鈍ったか、その両方か、というところですが、3回の数字に変化がないことからも世論調査の側に疑義が生じています。
世論調査が、ランダムで電話をかけているものなら、結果は変動が大きくなるはずです。何しろ、国民の半数以上が無党派なのですから。無党派で安倍政権支持、という人も中にはいるでしょうが、自民支持でも安倍政権は嫌い、という人も合わせると、50%に近い政権支持率は異常な数字です。無党派層が、圧倒的に政権を支持していることになってしまうからです。一方で、政党支持率でみると自民30%、民主8%、公明5%ぐらいを平均とすると、この得票率とも合致しません。自民の数字に合わせると、凡そ民主14%、公明9%近い支持率がなければなりません。メディアのとる世論調査と、実態との乖離は、単なる議席数とは異なる形で、如実に示されたといえるのでしょう。
民主は海江田代表が落選、代表選のやり方でもめていますが、上記の数字を考えなければなりません。民主は3回の選挙でほぼ同数の得票なのですから、このままでは自民には未来永劫、勝てません。基礎票が二倍近く差をつけられているのですから、浮動票を集めなければいけないのに、出てくる名前は昔、杵柄すらとれなかったメンバーです。野田氏、岡田氏、玄葉氏、安住氏、前原氏、枝野氏を並べてNO GAMEと称していますが、これでは戦いにならない。浮動票にどう訴求し、自民との基礎票の差を埋めるしか政権への道はないのですが、まだそれを間違えています。
間違えているのは、安倍氏も同じ。安倍ノミクスが支持された、としますが、安倍ノミクスの前、2012年の総選挙に比べ、100万票しか上積みできませんでした。これは支持母体がもどった部分であり、浮動票はまったく乗っていない。つまり国民の支持はありません。年内に経済対策…というのも、経済政策が成功しているなら、こんなことにはなっていません。しかも安全で低廉なエネルギーを…と語りますが、原油安によって火力の存在感が増しました。つまりもっとも安全で、低廉なエネルギーが火力に置き換わったのであり、高リスク、高コストの原発を慌てて動かす大義はありません。むしろ原油安のメリットをもっとも受けるのが火力発電なのですから、それを享受せず、あえて原発を動かすことはデメリットでしかありません。
総選挙後、市場は2日続きの大幅下落です。原油安に伴う海外要因も大きいですが、最大は日本の買い材料がなくなった。安倍ノミクス推進、とは言いますが、構造改革や規制改革について、安倍氏は何も言及していません。一方、憲法改正など自分がやりたいこと、恐らくそれを始めたら、日本はそれ一色になることを前のめりに語りました。これで外国人投資家も見切りをつけ始めたのです。コモディティ関連の損失を日本株の売りでカバー、というばかりでなく、17000円を超えても日銀、GPIFは大量の買いを見せた。また自社株買いも増えた。逆にここから大きく売りこめば、減損処理が必要となり、日本株崩しという戦略もここからは想定できてしまうのです。
つまり日銀は国債の利子を、これまで国庫に返納してきました。しかし損失を抱えればそれもできなくなり、財政ファイナンスの循環が崩れます。そうなると景気対策に使う予算も減り、緊縮財政を迫られ…と、日本が悪循環に陥ることにもなる。再びETF買いを始めた日銀の危機感は、相当なものなのでしょう。今回の選挙、自民大勝というばかりでない、様々なことが判明したという意味で、実は安倍氏にとって今後のマイナス面が増えることともなりました。議席数だけではない、裏の意味。それを知ると外国人投資家も売りたくなる。日本から逃げ出したくなる。政労使会議で、2年つづけて政府が賃上げ要請するような国で、事業をしたくない、となるのです。安倍氏が殊更にこだわった「安定した政治」を崩すのは、実は今回の解散によって暴かれた数字、それを知って動く様々な勢力、ということになるのかもしれませんね。