株価下落でも日銀動かず
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2014年12月10日 在野のアナリスト
昨日発表されたAppleが横浜に開発拠点をおく、という話は、どうやら数十人規模ということのようで、これだと機種を丸々開発、設計するような規模ではなく、ソフトなどのプログラムのみの開発になりそうです。アジア最大の開発拠点と云われても、元々が米国メインの開発体制ではあったので、数十人のうけとり方は微妙ですし、雇用への寄与は少ない。選挙戦の最中、自慢げに語るほどの内容ではありませんし、詳細は発表がないので、まだ条件面で折り合いがつかず、検討段階なのかもしれません。それこそフライング発表の影響が今後でるのかもしれません。
東京株式市場は大幅下落しました。昨日、中国が担保基準を厳格化した、とは場中に伝わっていましたが、日本の市場が閉じてから中国株市場が大きく下落。ギリシャの選挙前倒し、ベネズエラ国債の急落、など一気に悪い材料がでてきた印象もありますが、実はこの程度の話はこれまでも出てきたのであり、最大の原因はいきすぎた楽観に黄色信号が灯ったことなのでしょう。
中国は、中央経済工作会議の開催に当たり、先の利下げのように緩和スタンスが打ち出される、との期待がありました。それが株式市場を急騰させ、バブルの懸念がありました。この担保基準の厳格化は、短期資金の借り入れに低格付け債は認めない、地方政府が窓口企業を通じて発行する債券が、ほとんど使えなくなります。しかしその規模が5000億元、約10兆円と大きく、その引き締め効果が大きい、ということがじわじわ伝わって大きく中国株が下げました。今後、低格付け債の発行が難しくなり、資金繰り懸念も生じます。今後は地方政府が直接、債券を発行できるため、その地ならしとの見方もありますが、窓口企業の破綻が相次ぐ可能性もあります。
日本の株高も、上海株高に引きずられていた面も指摘されます。利下げ後の2週間で26%も上げた。その間、日本も5%近く上げており、高値圏からオーバーシュートした原因ではないか、ともされるのです。しかも今日は日銀がETF買いに動かなかったことも、下げを誘引しています。
年末まで、日銀のETF買いは残り266億円。来年分を取り崩すか? と見ていた関係者もそれがないと知るや、売りを加速させました。一部でコモディティ関連の損失の穴埋めに日本株を利食いした、ともされますが、下支え要因の一つが消えたことで、今後も売り方優位の立場がつづく可能性があります。何より今が高値圏にあり、今回のように売りで大きな値動きがだせるのです。
自民党勝利で外国人が買う、という論調もありますが、政治の緊張感が失われれば逆に売ってくる公算も強い。個人の余力があるので押し目買いが期待、という話にしても、下値不安があると買えません。過剰流動性相場の中で、適性水準の見分け方も困難な中で、中国の流動性に不安が生じた。それが昨日から今日にかけた動きです。流動性の落ち着き具合と、水準感を試す、そんな動きが想定されますし、何より日銀の動きが不透明であって、予断を許しません。
安倍政権は公共工事など、予算を前倒し執行してきましたが、日銀もここにきて息切れしました。『今』をよく見せるために、『未来』を食いつぶすのか? 日銀の判断も重要となってきますが、それ以上に、増税判断の先送りを決めた安倍政権への、財務省側のささやかな抵抗が始まった、とするとこれは興味深い動きです。日銀が原理原則を建前に、株価下落を容認する、となればそれこそ売りを勢いづかせ、更なる下落を引き起こす恐れすらあります。中国も重要な経済の節目を前に、売りが嵩んだように、日本も選挙の前に売りが出てきた。イベント通過、というタイミングが意味するものは、SQ週の水曜日という以上に重要な内容を秘めるのかもしれませんね。