11月19日、山東省蓬莱市で園児11人が死亡する送迎ワゴン車の事故が発生し、悲しみに暮れる遺族ら(ロイター)。「なぜ中国にはスクールバスを買う金もないのだ」と政府や公務員に批判が向けられた
【中国ネットウオッチ】公務員「賃上げ要求」に中国ネット猛反発「嫌なら代われ」「いい思いしてるだろ」
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141208/frn1412080849002-n1.htm
2014.12.08 夕刊フジ
中国のメディアが最近、公務員の待遇の悪さについて頻繁に特集している。公務員の給料値上げに向けた「世論誘導」と見る向きもあり、ネットユーザーは「給料が低いのが嫌なら辞めろ」「代わりはいくらでもいる」と猛反発。中国においても納税者意識と税金の使途への関心が芽生え、公務員への風当たりが強まっている。
中国紙、新京報(電子版)は11月20日、末端公務員の“窮状”を特集した。同紙によると、北京市の一般職員の手取りは月額4千元(約7万6千円)から5千元(約9万5千円)。8年目でようやく5千元まで増えたという職員は「これまで子供を養うのも困難だった」と吐露している。
中国国家行政学院の汪玉凱教授は記事の中でこう指摘した。「全国には700万人あまりの公務員がいるが、多くは退職まで課長にもなれず、手取りは低いままだ。待遇の悪さは仕事の積極性にも影響する。待遇を改善するのは合理的だ」
この記事にネットユーザーは敏感に反応した。
「給料が少ないのが嫌なら仕事を変えろ!」
「公務員は人民に奉仕するのが仕事だろ。まさか金をもうけようと思っているのか?」
多くの公務員が“赤貧”だという主張にも異を唱える声が多い。
「これだけ多くの人が受験するのは、おいしい思いができるから」
「公務員はみな社長のような風情だが」
「同級生で公務員になった者は最も生活が潤っている。年中たいしたことをやらず、一番大変なのは上からの検査(査察)だけ。それで給料を上げろなんて、絶対反対!」
ちなみに2011年に上海市が公表した統計によると、10年における同市内の労働者の平均賃金は年4万6757元(約88万円)で、公務員の給与は決して一般労働者の収入に比べて低いわけではない。さらに多くの公務員には認可・検査権限などにからむ不透明な“副収入”があるともいわれている。
江蘇省灌雲県の税務部門職員が21日、賃上げを求めて「デモ」を行ったとの情報が報じられると、さらにネットユーザーの強い反応を引き起こした。
「われわれ庶民は、給料が気にくわないと訴えたらすぐクビだ。お前らもクビになるんだろうな」
同部門には120人の職員がいると報じられたことから、「小さな自治体の1部門でそんなに雇っているのか。そんなに仕事量はないだろ」となじる声も。
「嫌ならやめろ。失業している人間はたくさんいる」
「一般職員で年10万元(約190万円)もらえるだって!? うらやましい…」
「毎日、茶を飲んで新聞を読んで10万元か。全員、建設現場で仕事させろ」
この職場が税務部門だったことも、ネットユーザーをいたく刺激したようだ。中国で公務員の仕事は「鉄飯碗(決して割れない鉄の茶碗)」に例えられ、食いはぐれのない職業として時に羨望の眼でみられる。なかでも国民から税を徴収する税務部門の職員は待遇がよいことから「金飯碗(金の茶碗)」と言われ、人気の職場なのだという。
山東省蓬莱市では19日、幼稚園の送迎ワゴン車が横転したトラックの下敷きになり、幼児11人が死亡する事故が発生。定員8人のワゴン車に幼児ら15人が乗車していたことから、ネット上では「中国にはスクールバスを買う金もないのか? 公務員の汚職を調べろ!」と教育を軽視する政府や公務員に怒りが向けられた。
安倍晋三首相は衆議院の解散にあたり、「税制は議会制民主主義と言ってもよい」と訴えた。中国における納税者意識の高まりは、新たな政治改革を求める潮流へと変わるかもしれない。(西見由章)