雑感。米雇用統計
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52668406.html
2014年12月06日 在野のアナリスト
麻生財務相が「株価は上がった、円安にもなった。大企業は利益がでている。出ないのは運が悪いか、能力がないか」と言い放ちました。これ一つをみても、安倍政権の経済運営には疑問符がつきます。これほど急激な円安、特に政府、日銀がバイアスをかけてまで円安に誘導するのを「運」で片付けられては、たまったものではありません。安倍政権に垣間見える、弱者は「運がない、能力がない」といって切り捨てる、そんな意図まで読み解けてしまいます。
昨晩の米雇用統計は、驚くべきよい数字です。非農業部門の雇用者数が32.1万人増。過去のデータも上方修正され、尚且つ時間当たりの賃金も上昇。ほぼ全業種で上がっており、力強い回復そのものです。失業率だけは5.8と前月と変わらず。ただ今後、この数字は悪くなることが見込まれます。全米を襲う猛烈な寒波は、昨年でも生産を大きく落ちこませました。また今回、金融取引も大きく伸びていますが、金融機関はリストラをすすめているはずで、かなり違和感もあります。
しかもファンド投資家が、今年1年の運用成績をみて、乗換えを検討するところが多数に上ります。米国のファンド勢も優勝劣敗、それが来年には顕著に出てきそうです。しかもこの動きは、投資行動の変化を伴いますから、全世界規模で不穏な動きがおき易くなる。例えば今年、コモディティ関連は壊滅的ですし、株式も裁定取引を主とするところは悪い、と伝わります。日本株も11月の最終週は、外国人投資家が現物、先物を売りこしていますが、これは日本株投資からの資金流出、という話と整合的ですので、12月はもっと売りが増えている可能性があります。
ファンドに投資するのは、年金などの機関投資家も多いですが、今後は低リスク投資が難しくなるのが現状です。FRBが量的緩和を終了した後、通常なら債券は売られ、利回りが上昇するはずですが、まったく逆になった。これでゼロ金利解除になっても金利が下がりつづければcnundrum。グリーンスパン元FRB議長がつかった『謎』ということになります。債券は有効な、安全な投資先になり難くなったのです。コモディティも当分、回復の見込みはない。株を買うしかない、だから株が上がるのであって、今の株高は決して経済政策の成功ではない。逆に失敗を意味しているのです。
経済政策が成功していれば、コモディティも上がり、金利も上がるはずです。そうではなく株価だけが上がる異常事態は、いずれ見直しを迫られます。正しい経済の循環から外れているからです。それこそ今の株高はコナンドラム、説明がつきません。不況時の株高を支える自社株買い、GPIF買い、日銀のETF買いなど、いわゆる信託経由の買いが支える現状は、決して市場の高値を維持できない。証券各社が、円安による業績改善効果を色々とだしていますが、1%ぐらいの上方修正というのがコンセンサスなのですから、数値的な根拠は現状の株高にはまったくないのです。
日本の長寿アニメでもある『名探偵コナン』があります。謎をとくものですが、彼でも今の株高を説明はつけられないのでしょう。「見た目は子供、中身は大人」がキャッチコピーですが、今は「見た目は大人、中身は子供」の人間たちが、経済政策を担っているのであって、こうした状況をつくりだしても反省もせず、功名を誇り、それで被害をうけている人にむかって「運がない、能力がない」と言い放つなら、早晩この国は謎解きが終わった時点で、ジ・エンドになってしまうのでしょうね。