加藤前支局長の初公判について報じる28日付の韓国各紙(大西正純撮影)
朴政権また告訴 韓国紙「噂の元側近が人事介入」報道めぐり
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141129/frn1411291507006-n1.htm
2014.11.29 夕刊フジ
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損(きそん)したとして産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が罪に問われた裁判で世界中から反発を受ける朴政権が、見境のない強硬姿勢に出た。大統領との密会が噂される元側近の男性が、政府の人事に介入していたと報じた韓国紙記者らを名誉毀損容疑で告訴したのだ。言論の自由などあってなきがごとしの政権に韓国メディアは戦々恐々だ。
加藤前支局長がコラムで、旅客船セウォル号沈没事故当日、朴大統領と会っていたとの噂を報じた鄭(チョン)ユンフェ氏は朴大統領の国会議員時代の秘書室長。朴大統領の弟らと「マンマンフェ」という組織を作り、大統領府に影響力を保持し、人事に介入している−と野党勢力が批判している。
韓国紙の世界日報は、大統領府が作成した文書を入手。政府高官が定期的に鄭氏と会って人事に関する意見を聞いていたことや、鄭氏が政権ナンバー2を辞任に追い込む“策略”を練ったことが記されていると報じた。
大統領府の総務秘書官らは、報道は事実無根として同紙社長と編集局長、社会部長、記者ら6人を名誉毀損容疑で告訴した。
加藤前支局長の裁判については「報道の自由の問題を提起している」(米メディア)などと世界中から批判されているが、多くの韓国紙の報道は及び腰だ。大手紙の朝鮮日報や中央日報、京郷新聞、ハンギョレは裁判翌日の28日の紙面で、加藤前支局長が名誉毀損の嫌疑を否認した事実関係を淡々と報じた。
韓国内で関心が集まっているのは、言論の自由よりも鄭氏をめぐる政治スキャンダルだ。裁判では、検察側が、鄭氏と、鄭氏が沈没事故当時に会っていたと主張する占い師を証人申請し認められた。起訴前の今年8月に社説で《産経新聞の韓国冒涜(ぼうとく)は度を超えた》と痛烈な産経批判を展開した東亜日報は28日、「鄭ユンフェ−占い師 法廷に立つ」との見出しの記事を掲載し、鄭氏らの証人尋問について「コラムが虚偽であると立証するのが目的だ」と報じた。
27日の裁判閉廷後、加藤前支局長の車に保守団体のメンバーが卵を投げつけた問題では、韓国警察が監禁や脅迫などの容疑で捜査を始めた。
国際政治学者の藤井厳喜氏は、「韓国の民主政治体制は脆弱(ぜいじゃく)であると、世界にさらしてしまった。外国人のジャーナリストを起訴したことは、『言論の自由はない』と宣伝しているようなもの。長期にわたって出国禁止措置をとることは新しい拉致問題であり、北朝鮮との差も分かりにくくなった。反日といえば何でも許される社会になっており、加藤氏の裁判は、もはや韓国政府による日本人へのヘイトクライムだ」と批判する。迷走はどこまで続くのか。