民主党のマニフェストについて
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52667398.html
2014年11月24日 在野のアナリスト
メディアの世論調査が出揃ってきましたが、特徴的な、統一的な傾向として安倍政権の支持率の大幅低下、が挙げられます。朝日などではすでに不支持と支持が逆転、ほとんどのメディアで50%割れ、改造以降の右肩下がりが顕著です。解散に大義なし、と評されていることからも、郵政解散に準えることには無理があり、安倍首相の戦略に狂いが生じていることもうかがえます。
安倍氏はそれこそ郵政解散を手本としますが、熱狂を生んで投票率を上げるより、自民党内にも低投票率で組織票、との意見があって整合がとれません。さらにキレ芸を連発する安倍氏に、表に出るなとの厳命が下ったとされるなど、支持を得たくとも得られない。安倍氏のジレンマ、この政権支持率では仮に目標である自公過半数でも、安定政権など到底ムリ、という状況になって、初めて自らの決断ミスに気づくのでしょう。長野北部地震で官邸に押しこめることができ、せいせいした、との陰口も聞かれます。党内からも厄介者扱いされているのが現状です。
そんな中、民主党の政権公約が出てきました。ただ報道、研究用とされ、中身は流動的のようです。前回から、新聞のような紙面割りで重点項目を記載する癖があり、今回はそれを安倍政権批判に充てています。『今こそ、流れを変える時。』がお題目のようで、大見出しで4回も出てきます。さらに前回の参院選では隠しがちだった海江田氏を前面に立ててきたのが特徴です。
経済では『中間層の復活』が主眼ですが、円安対策では影響をうける層に「支援」と書かれるだけで、バラマキが否めません。しかも介護従事者への賃金引上げも掲げますが、これは消費税増税分に元々含まれていたもの。だから消費税増税は「延期」であって、停止ではない。複数税率の導入や還付つき税額控除の検討など、実にシステムを複雑化する方向は、効率性という観点からも疑問です。踏み込んでいるのは、日銀に「柔軟な金融政策」を求める点ですが、中銀の独立性は無視した意見ですし、そもそも「柔軟」の定義が不明です。全体的に「支援」という項目は多いものの、成長戦略とはかけ離れており、現状維持、もしくは場当たり的に補助、補填といった形の政策ばかりで面白みに欠け、これから政権をとろう、との覇気は感じられません。
公的年金制度の一元化、子育て支援、少人数学級など、これまでも話題になった項目は掲げますが、具体性がありません。原発は「避難計画なければ再稼動すべきでない」と、他人事に聞こえますし、安全対策は? と素朴に感じます。「厳しい姿勢でTPP」としても、具体的には何もないので、ふわふわしています。驚いたのは、沖縄振興には一括交付金とあるだけで、辺野古に関する記載はなし。関係住民の負担軽減、とはしますが、具体的な記述は一切ありません。
全体に言えることは、痛いところに手を出さない。3年前に政権を担っていたのに、その反省と改善点を示し、ではどうするか、という提案がない。むしろ現状を追認し、小手先で誤魔化そう、という後ろ向きの態度しか、このマニフェストからは読み解けません。悪く言えば無難で、とても流れを変えようとの、前向きな提案がないのです。よく言えば安定と、経験を踏まえた現実路線、といったところですが、やはり野党第一党としての迫力不足である点が気になります。
それこそキャッチコピーである『今こそ、流れを変える時。』とは、中身をみる限り感じられません。『今ここで、流れが変わってくれたらいいな』が、本音のようです。一強多弱と言われ、対抗勢力として名乗りをあげられれば、勿怪の幸いといったところでしょうか。海江田氏の最後の言葉にある「しっかりとした対抗勢力のあることが…」。野党第一党なら、「政権奪回をめざして…」と、嘘でも書かなければならないのです。目標設定のなっていない今のままでは、仮に今回の選挙で議席を増やしても、次の選挙までに海江田氏のすわる席はなくなっているのでしょうね。