雑感。政治と中銀の信用
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52665448.html
2014年11月03日 在野のアナリスト
円安が止まりません。追加緩和の前からは4円近く、円安になっています。黒田バズーカの第一弾、13年4月4日のときは3日間で93円台から6円ほど駆け上がり、100円の下辺りをしばらく推移しています。当時はやや円高という水準でしたが、今回はすでに円安の水準にあり、サプライズ効果としても動きが急で大きい。GPIFによる外債、外国証券買いを見越して、との説明もありますが、10兆円程度の円売り要因だけでは説明がつきません。円キャリーの復活、とするのも長期金利でさえ2%前後の金利差、短期金利なら1%もないので、それほどおいしい取引ではありません。そもそも、海外に目をむけても投資先がないので、借りるメリットが見当たらないのです。
これが、日銀の自己資本の毀損をみこした日本売りでなければよいのですが、実態が明らかになるのはまだ先です。112.5円に一つの壁があるとされましたが、一気に抜けた。この勢いがしばらく止まらなくなる恐れもあり、そうなると企業ダメージが深刻になる恐れも出てきます。だからといって、追加緩和を中止する、と言えばさらに日銀の信用が失墜するでしょう。急激な円売りに対し、円買いで対抗するのは本末転倒ですが、しばらく為す術もない点が気がかりです。
国会予算委で、安倍氏の暴論が止まらなくなってきました。質問にたった枝野民主幹事長の「不適切な関係」としたJR総連からの政治献金を、FBでも批判します。さらに朝日新聞の「撃ち方やめ」発言は捏造としました。しかし「撃ち方やめ」は他紙も同様に記事にしており、朝日だけではありません。さらにそれを記者に洩らした人物は特定されており、発言そのものをその後、否定したのであって、捏造でもありません。安倍氏の悪いクセ、批判や攻撃されることに弱く、反論が的を射ていない、偏狂なものの見方を露見する、という事態になってしまっています。
そんな中、飯島内閣官房参与がある番組で、年内解散について言及しました。自民党内の引き締めにむけた、ブラフだとみられます。そもそも、飯島氏は安倍氏に請われて参与になったものの、大した活動はしていません。極秘訪朝のつもりが、北朝鮮に暴露されて北朝鮮ルートが消失した。米国の政治家、政権の意向を探りにいき、問題ないと報告したものの、その後のオバマ政権が厳しい態度をとり、報告は間違っていた、など。とにかく、仕事をしていない、というより、やること為すこと失敗続きです。政権中枢との信頼関係はない、と思って間違いありません。役立たずとされたくないので、今は役に立つことを必死でしている、という状況でしょう。
世論調査をみても、経済政策、原発政策、安倍政権ですすめてきた諸施策の大半が、3〜4倍の割合で、賛成より反対が多い。いくら野党の支持が低いといっても、これで解散は難しい。今回の黒田バズーカ第二弾でも、株高になっても円安になれば、さらに庶民の生活は苦しくなる、との認識が広がるのですから、痛し痒しです。最大の解散が難しい理由は大義がないこと、です。
何を争点にするか? 国民に何を訴えたいのか? よく分かりません。仮に消費税増税を争点にすれば、自民は大敗するかもしれない。過半数を保っても、議席を減らせば総裁として責任をとらなければいけないのが、自民です。解散はブラフですらなく、また安倍氏に何のメリットもない。しかも、ここに来て逆ギレ芸を連発する安倍氏に、国民もうんざりし始めています。訴えることが偏狂な内容なら、それこそ国民にそっぽを向かれる可能性が十分に有ります。
安倍氏のもつ偏狭で、偏狂な体質は、直る見込みがありません。偏狭、偏狂とも、思想、行動、人付き合いに対して多くの人が抱くものです。それをこれまでは勢いで誤魔化してきた。理性、理屈で封じ込めてきたわけではないのです。これで日銀の追加緩和が、辺境の施策とみなされれば、日本は三流国に転落するでしょう。政治家も、中央銀行に携わる者も、まず『勉強』が必要だろうと感じさせてしまうのが、日本の現実というところなのでしょうね。