『鈴木敏文 商売の原点』(緒方知行/講談社)
本部のピンハネ!? セブン-イレブン加盟店が強いられる仰天の仕入価格
http://lite-ra.com/2014/11/--.html
2014.11.03. 【追及!セブン‐イレブン商法 第3弾】 リテラ
「フランチャイズチェーンにおける加盟店と本部との関係、取引先との関係は、相互信頼にもとづいた共存共栄でなければなりません。そのためには、お互いに約束は必ず守り、自分の責任を果たすこと。これは当然のことです」
『鈴木敏文 商売の原点』(緒方知行/講談社)でそう語るのは、セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長・最高経営責任者(CEO)を務める鈴木敏文氏だ。
セブン&アイ・ホールディングスは、全国1万7000店を越えるセブン-イレブン(以下、セブン)の親会社であり、鈴木氏の経営手腕がセブンを国内売上高3.7兆円という業界最大手に成長させてきたことは間違いがない。
しかし、「共存共栄」とは名ばかりで、1万数千店と推定されるフランチャイズ加盟店(以下、加盟店)とセブン本部との間では、多くの裁判が起きている。
その裁判の数はこれまで数十件に及ぶというが、内容を大きく分けると3種類に分類できる。
まずは、「廃棄ロス」を加盟店の営業費用(販売費)に含めるために、「廃棄ロス」分も加盟店が支払うロイヤリティが発生するコンビニ独自の「ロスチャージ会計」をめぐる裁判(最高裁でセブン側勝訴)。その詳細は「【追及!セブン‐イレブン商法 第1弾】加盟店に弁当を廃棄させて儲けるセブン-イレブンのえげつない経営術」で紹介した。
次は、フランチャイズ加盟店による値下げ販売をセブン本社側が妨害していた事実をめぐる「見切り販売」訴訟。こちらは20件ほどが係争中で最高裁ではセブン1勝、加盟店1勝。詳細は「【追及!セブン‐イレブン商法 第2弾】マスコミタブー!? 日経新聞が報道しなかったセブン‐イレブンの敗訴判決」で紹介した。
そして、3つ目が、本部が仕入れている真実の仕入原価を開示していないこと(加盟店オーナーは自分たちが仕入れた段階の仕入原価しか知らない)、本部と仕入先との間の仕入割戻し金(リベート)の全容を本部が開示していないことから、一部をピンハネしているのではないかという疑惑の解明を求めた「ピンハネ」裁判だ。
コンビニエンスストア業界では、加盟店オーナーが本部から紹介されたベンダー(納入業者)から直接仕入れるが、仕入れた商品の代金支払いは本部が代行する。しかし、ベンダーとの詳細な取引資料を本部側は開示せず、元加盟店オーナーなどが「本部に支払った額と本部の取引先への支払額に差がある疑いがある」と、開示を求めたのだ。
最高裁まで争われた裁判では、「(本部は)一定の条件の下で、加盟店経営者に対して報告義務を負う」ことを最高裁が認めたものの、事実関係を精査した差し戻し控訴審(2009年8月25日/東京高裁)では、金額などの開示は認めたが、請求書や領収書などの「原資料」の開示は認めなかった。本部の加盟店への報告内容にかかる費用を加盟店負担としている点など問題も残されており、その後も、同種のピンハネ裁判が起こされているのだ。
しかも、本部は真実の仕入原価を開示していないのをいいことに、セブンの加盟店は本部からバカ高いオーナー仕入原価で仕入れることを余儀なくされているという。「週刊金曜日」8月29日号に掲載された記事「セブン‐イレブン“鈴木帝国”の落日 連載第8回 鈴木会長は“嘘”をついたのか!?」によれば、複数の現役オーナーの協力を得て、「店で人気の16商品の仕入原価とスーパー店頭価格」を比較したところ、なんと、人気16商品中10商品がスーパーの店頭価格よりも高いオーナー仕入原価だったというのだ。
「若者に人気の『缶コーヒー』『ポテトチップス』『三ツ矢サイダー』などは一般的なスーパーに比べて3〜4割も高く仕入れされている。『スーパードライ』などの人気ビールも1割近く高い」(同記事より)
たとえば、ポッカコーヒーはセブンの店頭では123円で販売されるが、オーナー仕入原価は82円、スーパーの店頭では55〜62円で販売されているにもかかわらずだ。同様にカルビーポテトチップスは、セブンの店頭価格は152円、オーナー仕入原価は97円で、スーパー店頭価格は73円。アサヒスーパードライ(350ml)もセブンの店頭価格は221円、オーナー仕入原価は184円で、スーパー店頭価格は171円といった具合である。つまり、セブンの本社から仕入れるよりも、スーパーで買ってきて売ったほうが多くの利益が出てしまうことになる。ということは、その分の差額は、セブン本社の利益となっているのではないかと疑うのが自然だろう。
あるオーナーは、缶コーヒーメーカー・ポッカの営業部長から「(スーパーの店頭では55〜62円で販売されている缶コーヒーの)原価を42円まで下げることができる」とセールスを受けたことがあるという。
「『セブンさんも、それなりの量なら48円まで下げますよ』と。『えッ、そんな値段までできるんですか』と聞いたら、そっと小声で『実を言うと現金問屋はもう42円とか40円でやっているので、ウチはそれに上乗せできればいくらでも……』と本音を言ったんです。それでこっちも、『実を言うと、僕ら70円台で仕入れているんですよ』と言った途端、『ええっ!』とビックリして、固まってしまいました。『ちょっとそれ“裏”がありそうですね』と言ったきり、もう何も言わなくなったんです。それっきり部長は姿を現さなくなりました。要するに現場の部長もわれわれの原価を知らなかったんです。だからセブン本部と本社との特命取引で仕入れているんですよ」(同記事より)
このオーナーは、別の業者からさらに「返品不可での取引ならお菓子類ももっと安くしますよ」と持ちかけられたこともあるらしい。
「セブンは返品不可ですけど、一般小売店では新商品の場合は返品可です。だから、本部はかなりベンダー(仕入先)を叩いているはずです。利益率が高いのはそのためですよ」(同記事より)
鈴木会長の「共存共栄」がむなしく響くばかりだが、冒頭の「お互いに約束は必ず守り、自分の責任を果たすこと。これは当然のことです」という『商売の原点』も大ウソだという。2002年ごろには鈴木会長はオーナー懇親会でこう豪語した。
「『みなさん、このほどコカ・コーラを日本で一番安く仕入れることに合意しました。みなさんも家に戻って楽しみに待っていてください』と。社員も『日本一安く仕入れて定価で販売するから、利ざやがすごく大きい。だから小さい店で二十数人使ってもやっていけるんです』と説明していたんです。それを聞いて私も、どんなに原価が下がるのか注意していたんですが、その後なんの変化もなかったんですよ、高いままで……」(同記事より)
日本一安いはずのコカ・コーラ(1.5リットル)のセブンの店頭価格は307円、オーナー仕入原価は188円。いっぽうで、スーパー店頭価格は138円と大幅に安い、「逆に『日本一高い仕入れ』を強要されている可能性が高い」(同記事より)という。
セブンの「商売の原点」は、オーナーを食い物にするフランチャイズシステムにあるということなのだろうか。
(小石川シンイチ)