「慰安婦問題で謝罪をしちまうと
韓国に永遠に強請られるから、謝罪
なんかしちゃいかん、強制じゃ無か
ったと証明しなきゃ、そうでない奴
は売国奴だ」・・・
という一部の意見があるが、本当か?
本当のところはどうだったのか。
日本売り飛ばしデイスカウントジャパンが画策されている
と危惧している方も多いようですが、
慰安婦問題とその後のゴチャゴチャとは一体何だったか、
歴史的・社会学的に整理しようとしています。
講演をした内容の教授自身によるツイッターがあり、
そのれがtogetterにまとめられていました。
宮台真司(社会学)教授の講演のご本人による要約です。
以下の引用は宮台公式サイトから転載です。
引用開始
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昨日「朝日新聞慰安婦報道問題をどう検証すべきか」という講演をしました。概要ツイートまとめ
14.10.22【宮台メモ】従軍慰安婦問題_マスコミ倫理懇談会@日本プレスセンター8F
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昨日10.23日本プレスセンタービル8Fで開催のマスコミ倫理懇談会で講演。
http://www.miyadai.com/?blogid=1&catid=4
題して「朝日新聞慰安婦報道問題をどう検証すべきか」。
朝日を批判する側も擁護する側も著しい愚昧にまみれている事実を指摘。
新聞各社、放送各社、出版社各社、代理店各社から計 人が出席。
概要を連投します。
@〜D
【パートA】 第三者委員会が抱える問題
@朝日新聞慰安婦報道を検証する第三者委員会はデタラメ
10/10金にラジオで『第三者委員会はデタラメ』の題で話す
以下、基礎事実とメンバーリスト
10/9木に第三者委員会が開催された
同日、研究者や弁護士のグループが人選の見直しを求める要望書を朝日に提出した
宮台も賛同人
A第三者委リスト
中込秀樹 73歳 元名古屋高裁長官
岡本行夫 68歳 元外務省総理大臣補佐官
北岡伸一 66歳 国際大学学長
田原総一朗80歳 ジャーナリスト
波多野澄雄67歳 内閣府アジア歴史資料センター長
林香里 51歳 東大大学院情報学環教授
保阪正康 74歳 作家
B世間の批判は凡庸
左の批判:密約問題有識者委員会で有名な政府御用学者・北岡伸一が含まれる
右の批判:軍による強制を認めるアジア女性基金呼掛人・岡本行夫が含まれる
それより大切なのは
⑴誤報が果たした国内外への機能の測定
⑵誤報を除去した慰安婦の実態探索
⑶妥当な評価軸
C「第三者委についての研究者・弁護士の要望書」ポイント
⑴慰安婦問題に専門能力がある研究者が含まれない
※93年談話後に発見された五百以上の関連公文書を分析する専門能力
⑵国際人権機関に関係する法律家や人権NGOメンバーが含まれない
⑶女性人権侵害問題を扱うのに7名中1人のみ女性
D危惧されるのは経営幹部の過剰反応や官邸との手打ち
危惧の所以は「吉田調書」記事問題での報道取消
9/26金、弁護士200名が報道取消に関する申入れ
報道「待機命令違反で撤退」⇔事実「待機命令を聞き違え撤退」
報道取消は「命令があり、命令が従われなかった」事実を否定する印象
E〜O
【パートB】第三者委員会への頓珍漢な反応
E朝日の慰安婦問題虚偽報道に対する頓珍漢な反応
自民党国際情報検討委員会9/19決議
⑴虚偽記事により国際社会が日本の歴史を歪曲して認識、日本の国益が損壊
⑵朝日の謝罪で強制連行も性的虐待も否定され、日本批判は論拠崩壊
⑶名誉回復のため国連など外交の場で国として主張を発信せよ
Fなぜ頓珍漢か1:国内問題化の経緯A
⑴83年、吉田清治「私の戦争犯罪」上梓→話題にならず
⑵91年8月、元慰安婦を名乗る女性ら→問題化(12月提訴)
⑶92年、応答した吉見義明による軍公文書群発表→大問題化
⑷以降、慰安婦研究本格化;吉田証言資料とせず
Gなぜ頓珍漢か1:国内問題化の経緯B
⑸92年1月、朝日は大問題化に応答し吉田証言記事
⑹92年7月、秦郁彦の現地取材&反証(正論ほか)
⑺93年8月、河野談話。吉田証言(軍強制連行)用いず
結:吉田証言記事は引金でない
談話:@軍要請で設置 A軍直接・間接関与で管理・移送
Hなぜ頓珍漢か2:国際問題化の経緯α
国連人権委・女性への暴力に関する特別報告・最終(96年クマラスワミ報告)が契機
報告は、朝日吉田記事に多く依拠するG・ヒックス「慰安婦」を通じて吉田証言を極く一部引用
報告の構成は吉田証言に全く依拠せず元慰安婦16人聴取に依拠→最終報告&勧告
Iなぜ頓珍漢か2:国際問題化の経緯β
吉田証言への言及たった2箇所
1箇所目《吉田清治は⋯国民勤労報国会の下で他の朝鮮人とともに1000人の女を慰安婦として連行した奴隷狩りに加わったと告白》
2箇所目《秦郁彦博士は慰安婦に関する歴史研究とりわけ吉田清治の著書に異議を唱え⋯》
Jなぜ頓珍漢か2:国際問題化の経緯γ
クマは日本を含む人権委決議で任命された特別報告者
政府招待で日本訪問、政府の情報提供で報告書作成、政府情報と矛盾する記述なし
96年53回人権委はクマを盛大な拍手で迎え、日本を含め全会一致で報告書採択
Kなぜ頓珍漢か2:国際問題化の経緯δ
報告は日本の法的責任回避をハーグ陸戦・ジュネーブ条約に基き批判
採択妨害すべく政府はクマを中傷する文書配布→各国批判→撤回&回収の恥
政府は説明資料と弁解(訂正でなく回収したが?と揶揄)、全会一致採択に賛成という恥
結:吉田証言の影響は僅か
K[追加]
「名誉回復のため政府として言うべきことを言った」結果の恥晒し
「何を」批判されているか分からぬ者は〈表出〉できても〈表現〉できない
カタルシス(気分スッキリ)をもたらすのが〈表出〉
expressionで impressionを操縦するのが〈表現〉
Lなぜ頓珍漢か3:軍の設営維持関与を示す公文書続々ⓐ
93年後本格化した研究を戦争責任資料センタ(研究者&市民)主導
93年3月発足、11月から「季刊戦争責任研究」に資料&論文続々
吉田証言への言及なし
93年談話〜14年6月迄の新発見公文書529点、研究者&市民が政府提出
L[追加]
資料リスト:http://goo.gl/ch1l0C
公文書一部閲覧:http://goo.gl/DZsEoF
資料リストにある「海軍航空基地第2設営班資料」に以下で注目
Mなぜ頓珍漢か3:軍の設営維持関与を示す公文書続々ⓑ
『終りなき海軍』(78)中曽根康弘(海軍設営班矢部班主計長)
《原住民を襲う》部下のために《苦心して、慰安所を作ってやった》
対応公文書:海軍航空基地第2設営班資料
《主計長の取計で土人女を集め慰安所開設》
Nなぜ頓珍漢か3:軍の設営維持関与を示す公文書続々ⓒ
『いま明かす戦後秘史』(83)鹿内信隆(陸軍経理部)
《調弁する女の耐久度とか消耗度⋯どこの女がいいとか⋯将校は何分⋯といったことまで決め⋯料金も等級をつける。それを規定するのがP屋設置要綱で⋯》
公文書の数々と合致
Oなぜ頓珍漢か3:軍の設営維持関与を示す公文書続々ⓓ
朝日が誤報しようが訂正しようが海外メディアにとってはどうでもいい
朝日の誤報が日本の名誉を国際社会で傷つけた原因という説は勘違い
それより日本政府を弁護する側も批判する側(クマ含め)も頓珍漢
軍関与でなく軍関与不十分こそ問題
P〜㉕
【パートC】軍関与でなく軍関与不十分こそ問題
P公文書が示すのは93年談話通り
「@軍要請で設置A軍直接・間接関与で管理・移送」
クマ報告後の国際世論は「談話通り」を踏まえ政府批判
⑴業者強制連行を放置する不作為・知ろうとせぬ不作為
⑵本人自由意志の確認(親による売飛し等)を怠る不作為
⑶離脱を認めぬ自由意志侵害ケースの存在
Q政府 「弁護」の頓珍漢
政府と弁護者は従来、政府はやってない、業者がやったと責任逃れ
国際世論は業者の不埒を知って放置した不作為、敢えて知ろうとしない不作為を批判
吉田証言(軍強制連行)を前提にしない批判に対し、軍強制連行はないとの言い訳は頓珍漢
軍関与でなく軍関与不十分こそ問題
R政府「批判」の頓珍漢
国際批判の一部は、強制でなく慰安所の存在自体に向かう
だがナポレオン戦の反省から公設慰安所or私設慰安所公的介入が一次大戦まで標準的
二次大戦でも独仏は公設、英は植民地で公設(売春禁止条約21年批准ゆえ)
米国は例外で宗教性ゆえ一次大戦から私設公的介入図式
S軍による慰安所設置or利用は朝鮮戦&ベトナム戦でも継続
軍の慰安所設置or利用の批判なら或る時期まで全先進国が該当
19世紀初頭のナポ戦から20世紀半ばまで軍の慰安所設置or利用は公的に要求された
軍の慰安所設置or利用が公的に不可欠だと論証したのがヒルシュフェルト「戦争と性」
㉑「戦争と性」(原書1930年)とは
本年、宮台の要求で翻訳本(1956年)復刻
宮台が冒頭に長大解説
ヒルシュフェルトは同書で[管理売春×自由意志]提唱
政府(軍)による直接or間接管理(業者管理への徹底介入)を要求
この発想は今日も欧州で平時の売買春法制&行政を基礎付ける
㉑[補足]
マグヌス・ヒルシュフェルト『戦争と性』明月堂の宮台真司解説は以下
http://goo.gl/yVR5XW
㉒「戦争と性」の中身
ナポ戦:性現地調達(強姦)で戦後処理困難化&性病蔓延
一次大戦の長期塹壕戦:軍に性病と暴力が蔓延
性も兵站として提供せよ
慰安所の公設or私設公的介入(公認慰安所)必要
女の自由意志の担保には公設がベスト
《道徳的文句を言うなら戦争するな。戦争するなら文句を言うな》
㉓売春が合法な国68(国連加盟国195)
国のリストは宮台解説の注2参照
主要先進国(米国除く)で合法化
多くは管理売春を合法化
2000年以降も蘭・デンマーク・仏・スイス・独・墺・ニュージーランドが管理売春合法化
こうした売買春行政の法理もヒルシュフェルト「戦争と性」の理念通り
㉔ヒルシュフェルト的には売買春行政3種
⑴管理売春合法化(公設or私設公的介入)
⑵管理売春非合法化×業者目こぼし
⑶管理売春ガチ禁止
非管理売春はどのみち取り締まれず行政的意味が小
[管理売春×自由意志]だけが女を暴力&性病から守る
世論に感情的成熟がある場合は⑴、未成熟なら⑵
㉕結論:軍関与でなく軍関与不十分が問題
談話以降の新発見公文書529点が示すこと
⑴軍要請で設置
⑵軍直接・間接関与で管理・移送
⑶軍強制連行は例外的→補足
⑷業者が人身売買・騙し・拉致関与
ヒルシュフェルトに従えば⑶⑷は日本政府を免罪せず
業者結託如何を問わず軍関与不十分が問題
㉕[補足]
軍人が女性を暴力的に慰安所に強制連行した事案群のオランダ公文書
http://goo.gl/5QtnWv
特に国際的に有名なスマラン慰安所事件死刑判決が重要
日本政府の「見解」がどうあれ国際世論はこれらを記憶
それを踏まえぬ「見解」表明はクマ報告の際と同様に恥を晒す
㉖〜㉝
【パートD】問題の構図を理解するための素材
㉖補論1:今日では慰安所の等価物は男女混成部隊
男女混成化で湾岸戦争(91)に派遣された軍人の63%が派遣期間内に軍内の異性と交渉
湾岸戦終了後ある駆逐艦では女性兵士の5%が妊娠
湾岸戦を期に米軍関係の病院では中絶禁止を事実上廃止
男女混成目的は、表は男女平等/裏は公認慰安所回避
㉗補論2:米軍は慰安所の公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋐
橋下発言で2013年5月に世論沸騰
《当時、従軍慰安婦は必要だった》
《米軍の風俗の活用を薦めた》
内容は妥当だが米軍将校に言うのは無教養
米国の慰安所行政の特殊な歴史を知らないから
沖縄米軍の戦後史を振り返って確認しよう
㉘補論2:米軍は慰安所公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋑
米国統治開始以降1万人の沖縄女性が強姦(ニューヨークタイムス)
沖縄女性に死者や性感染者も出る
沖縄民政府(52年から琉球政府)が米軍に慰安所公設を要求
米軍が拒否した背景:宗教原理主義の国ゆえ公設売春に予算使えず
㉙補論2:米軍は慰安所公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋒
米国は19c末のフィリピン植民地化以来一貫したやり方
ベトナム戦争でも同じ
基地周辺に現地民間業者の売春宿を集結
将校が現地行政や経営者と内通、非公式に条件や要求を伝達
だが性病管理はコストがかかるから業者はスルーし性病蔓延
㉚補論2:米軍は慰安所公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋓
沖縄でも同一図式
将校が現地行政や経営者と内通、女性サービス付飲食店(Aサインバー)を合法化
かかる店(特殊飲食店)が集結したのが特飲街
まず八重島、やがてBCストリート(パークアベニュー)に展開、性病と暴力が蔓延
㉛補論2:米軍は慰安所公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋔
米国は行政コスト負担せず
⑴特飲店で生じる性交は自由恋愛との建前で公認売春批判を回避
⑵民政府(琉球政府)が保健婦に特飲街を回らせ性病対策を啓蒙・スキン配布
慰安所に関わる道徳的・行政的責任と経費は全て沖縄が担う
㉜補論2:米軍は慰安所公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋕
事程左様に米軍将校に言ってもダメ
問題は橋下の瑕疵より米軍フリーライドの反倫理
「慰安所公設してないから性奴隷化に加担してない」は詭弁
兵への道徳説教が無効ゆえ慰安所公設が当時は倫理的
民間業者利用奨励が通らなくなり混成軍化
㉝補論2:米軍は慰安所公設ならぬ私設公的介入でやり過ごす㋖
時代変われば規準も変わる
問題は当時の規準に照らし妥当か
その点、軍関与不徹底による不作為こそ問題
右の「軍は手を下してない」は愚劣
左の「慰安所設置自体が奴隷化」も愚劣
米国の「公設してないから性奴隷化してない」も愚劣
㉞補論3:河野談話の評価
前段の認識は妥当
@軍要請で設置
A軍直接・間接関与で管理・移送
後段の謝罪ダメ
《甘言、強圧》がなぜ生じたか説明なし
ゆえに何を謝ってるか不明
軍関与の謝罪か、軍関与不徹底の謝罪か
何となく謝るだけ
だから「やっぱ謝らない!」の中二病出現
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引用終了
(宮台教授とは:
宮台真司(みやだい・しんじ)
社会学者。映画批評家。首都大学東京教授・・・)