トラブル続きの仁川アジア大会。開会式でにこやかに手を振っていた朴大統領の政策運営も問題だらけだ(共同)
韓国経済、アジアで“最悪”更新中 朴槿恵政権の“失政”も要因に
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141003/frn1410031820007-n1.htm
2014.10.03 夕刊フジ
仁川(インチョン)で開催中のアジア大会では日本、中国とメダル争いを展開する韓国だが、家計の負債(借金)比率では、すでにアジアのトップを独走している。さらに、業績に陰りがみえるサムスン電子や現代(ヒュンダイ)自動車など主力企業の株価急落によって、国民年金にも巨額の評価損が発生。朴槿恵(パク・クネ)政権の混乱も国民生活の足を引っ張った。韓国経済が“借金漬け”の状況から抜け出せるかは不透明だ。
韓国銀行(中央銀行)のデータによると、今年6月末時点の家計の負債額は1040兆ウォン(約108兆円)となった。昨年末に1000兆ウォンを突破した後も借金増のペースは落ちず、5四半期(15カ月)連続で過去最高を更新した。
ドイツの保険大手、アリアンツが公表した世界の富に関する調査「グローバル・ウェルス・リポート」では、世界各国の家計負債の状況についてまとめている。それによると、韓国の2013年の家計負債は国内総生産(GDP)比で92・9%と、08年の84・3%から拡大した。
何かにつけて日本に対するライバル意識をむき出しにしがちな韓国だが、日本の家計債務のGDP比は13年時点で80・7%。この統計をみると、韓国はまぎれもなく「アジアでトップの家計負債大国」といえる。
背景にあるのは住宅ローンや住宅担保ローンなどの増加だが、これは今後もさらに拡大する恐れがある。というのも、景気低迷を受けて韓国政府は7月に緊急経済対策を打ち出したが、その柱の一つが住宅ローンの規制緩和なのだ。
『韓国経済崖っぷち』(アイバス出版)の著書がある週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏はこう解説する。
「規制緩和で担保評価に対する融資額の比率を引き上げたため、今後不動産価格が下落すれば担保割れが起こり、ローン支払いが滞る事態が多発する恐れがある。さらに収入に占める債務比率の上限も引き上げたことで、過剰債務という最悪の事態も懸念される」
家計の借金がさらにふくれ上がるような景気対策を公表したにもかかわらず、肝心の消費者心理は一向に改善しない。韓国銀行が9月26日に発表した9月の消費者心理指数は先月と同じ「107」で、4月の旅客船セウォル号沈没事故以降足踏みが続いている。現状の景気判断はやや改善したものの、今後の見通しについては「97」と、8月の「100」から3ポイント悪化してしまった。
朴大統領の政権運営も韓国経済の低迷を長引かせる要因の一つとなった。セウォル号事故後の景気低迷を受けて、政府は41兆ウォン(約4兆2800億円)規模の景気浮揚策をぶち上げ、家計所得増大に焦点を合わせた税法改正案も用意した。ところが、政権運営のまずさもあって国会は5月3日以降、1件も法案処理できない状態が続いた。9月末になってようやく正常化したが、「失われた5カ月」は大きかった。
家計の借金の比率が高い韓国だが、老後を支えるべき国民年金も頭の痛い問題を抱えている。韓国の経済メディア、アジア経済は、韓国市場のツートップであるサムスン電子と現代自動車の株価がそろって急落していることで、今年に入って3兆1000億ウォン(約3200億円)の評価損が生じていると報じた。
急速なウォン高や景気低迷を受けて韓国企業の業績の悪化は鮮明だ。韓国銀行は9月26日「第2四半期の上場企業の経営分析」も公表しており、それによると、調査対象となった上場企業の4〜6月期の売上高は2・9%減となり、リーマン・ショック直後の2009年以来のマイナス幅を記録した。
10月1日に英金融大手HSBCが発表した9月の製造業購買担当者指数(PMI)の速報値は48・8と、前月の50・3から大幅に悪化、景気判断の節目となる50を下回った。HSBCのエコノミストは「韓国の製造業は強い逆風に直面している。特に中国の需要低迷が影響しており、2014年の韓国経済の強さに慎重な見方をしている」とコメントした。
公共機関の負債も高水準で、韓国企画財政部の資料では、2015年の40公共機関の負債規模は524兆ウォン(約55兆円)を見込んでいる。
その結果、韓国銀行の統計では、6月末の家計と企業、政府の金融負債額は合計4244兆ウォン(約442兆円)で、3月末時点より48兆ウォン(約5兆円)も増えている。
仁川アジア大会では2日時点の獲得メダル数は中国がトップの322個、韓国は2位の215個と3位の日本(186個)より優位に立つ。しかし、家計の借金では韓国がアジアトップの地位を確立しそうだ。