20140927 R/F #090「小出裕章ジャーナル」【3つの東電発表から垣間見える事故の実相について】
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3つの東電発表から垣間見える事故の実相について「漏れたストロンチウム90が本当に1兆4600億ベクレルだとすればそれは4100万人分の年摂取限度に相当します」〜第90回小出裕章ジャーナル
http://www.rafjp.org/koidejournal/no90/
2014年09月27日 ラジオフォーラム
西谷文和:
東電の公表によりますと、8月29日に3号機の使用済燃料プールでがれき除去作業中に機器が落下したと。重さ400キロの「操作卓」と呼ばれる機器だけではなくて、操作卓を据え付ける170キロの架台も絡まって落下したと。接触した可能性のある燃料集合体は2体ではなくて10体もあるという、こういう大変恐ろしい発表があったのですが、小出さん、これ燃料集合体にこういう物が当たるということは、これかなり危険なんじゃないですか?
小出さん:
燃料集合体は一応、ラックという集合体1体1体を収納できるような格子状の金属製の置き場という物の中に収まっているのです。頭も、その金属製のさやの中に格子の中に収まっている状態で、基本的には保護されているはずだと思いますが、ただし今、西谷さんがおっしゃってくださったように、400キロの操作卓と170キロの架台も一緒に落ちてしまっているわけで、水中ですので何がしか衝撃のクッションはありますけども、それでもラック自体が破損をした可能性は私は十分あると思いますし、そうなると、燃料集合体がまた損傷をしているということはあるだろうと思います。
そうなると、もちろん放射性物質がまた使用済燃料プールの水の中に漏れてくる、あるいは、気体状のものは外部に出てしまうということが起きたんだろうと思います。
西谷:
ブクブクと泡になって出た可能性もあるということですか。それと、同じく東電が2号機の圧力抑制室の下部外面調査を発表したと。ロボットが繰り返し落下したため調査範囲が限られたと。これ、ロボットの画像で放射線量が高いと思われる画像の乱れが確認されたということを発表してるんですが。まず、ロボットが繰り返し落下したって、これ遠隔操作ですから落下しますよね?
小出さん:
そうです。先程の3号機の使用済燃料プールで、瓦礫を落としたという作業も全ては遠隔操作なのです。でも、現場に行くことができませんので、遠い所から無線操縦しながら作業をしているわけです。
大変難しい作業を燃料プールでもやってるし、この圧力抑制室なんていう所は、全く人が行くこともできないほどの猛烈な被ばく環境ですので、遠隔操作をするしかないし、ロボットという物も基本的には放射線に弱い機械ですので、なかなか上手くいかないし、これからも難航するだろうと思います。
西谷:
同じく東電が9月8日に発表したのですが、今年5月までの10か月間にストロンチウム90、それからセシウム137が2兆ベクレルも港湾に漏れていたということなんですが、これは東電自身の放出管理目標の10倍を超えているという数字なんですけども、先生これ大変な数字じゃないですか?
小出さん:
はい。皆さん、2兆ベクレルという数字を聞いても、多分ピンとこられないだろうと思います。いずれにしても、放射性物質ですので危険なものです。例えば、比較の例を聞いて頂こうと思うのですが、ストロンチウム90という放射性物質、それを例えば食べてしまう、あるいは飲んでしまうということをすれば、もちろん、その人が被ばくをするわけですね。
西谷:
内部被ばくですね?
小出さん:
そうですね。普通の一般の方々は、1年間に1ミリシーベルトという被ばくを超えてはいけないという法律になっているわけですが、そのために、一体どれだけストロンチウム90を食べたり飲んだりしたら、そうなってしまうかということは計算で出てくるわけです。その計算に従って言うと、仮に1兆ベクレルというストロンチウム90があれば2800万人分になります。
西谷:
1兆ベクレルのストロンチウム90は2800万人分の限界値、1日に?
小出さん:
1年間にそれ以上摂ってはいけないという量になります。
西谷:
2800万人といえば、これは日本の人口の4分の1?
小出さん:
そうですね。それから、セシウム137の方はストロンチウム90よりは少し内部被ばくの危険度が低いのです。そのため、もしセシウム137が1兆ベクレルあるとすれば1300万人分になります。
西谷:
1300万人って東京都ひとつ?
小出さん:
を超えてしまうかもしれません。それで、先日の東京電力の発表だと、ストロンチウム90が1兆4600億ベクレル、セシウム137の方が6100億ベクレルという発表の数字になっていまして、ストロンチウム90の方が約2倍多かったということになっています。それで、もしストロンチウム90が本当に1兆4600億ベクレルだとすれば、それは4100万人分の年摂取限度に相当します。
西谷:
ほぼ日本の人口の半分近く?
小出さん:
半分近くですね。それからセシウムの方は約800万人分です。
西谷:
大阪府の人口ぐらいですね。
小出さん:
いずれにしても両方出ているわけですから、日本人の約半分が1年間に許される限度の量ということになるだろうと思います。
西谷文和: ちなみに、ストロンチウム90というのは骨に溜まりやすくて、セシウム137は筋肉に溜まりやすいと。
小出さん:
おっしゃる通りです。
西谷:
だから、ストロンチウムの場合は白血病とかそういうものの可能性が高くなって、セシウムの場合は肺がんとか胃がんとか、そういうもの。
小出さん:
そうです。全身に危険が及ぶと思います。
西谷:
極めて危険な物質が大量に海に放出されてしまったんですけど、ここまで出たのは、もしかしたら建屋のトレンチから直接漏れてる可能性があると言われているのですが。
小出さん:
私は当然だと思います。2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が起きて散々な被害にそこら中があっているわけですね。福島第一原子力発電所の敷地の中でも沢山の機器が壊れたと思いますし、コンクリート構造物というのはもともと割れてますし、その上巨大な地震に襲われれば。
西谷:
マグニチュード9ですもんね?
小出さん:
そうです。そこら中でひび割れているのです。ですから、事故直後にトレンチがむき出しになっている岸壁の部分から水がジャージャーと流れていたのも確認されました。何か所もそういう所があったわけですけれども、それは、目で見えている所で割れていたから見えただけであって。
西谷:
地下になったら見えませんもんね。
小出さん:
地下は見えないままどんどん漏れていたのです、当時から。
西谷:
これ、今からでも先生がおっしゃるように、タンカーか何かに積みかえてというふうにした方がいいですかね?
小出さん:
私は必ずやるべきだと思います。
西谷:
これ、このまま放っといたら外洋に出ていくだけですもんね。
小出さん:
はい。このままではもう手の打ちようがありませんので、私はタンカーに移すべきだというのは、2011年3月の段階から発言をしてきました。もう既に3年半も過ぎてしまいましたけれども、あまりに遅いとは言え、やっぱりやるべきだと思います。
西谷:
今からでも遅くないということですね。
小出さん:
遅いのですけれども、やった方がいい。
西谷:
とりあえず遅いのだけれど、やった方がいいと。大変な事態だということが分かりました。小出先生、今日はどうもありがとうございました。
小出さん:
ありがとうございました。