雑感。安倍首相の国連総会出席
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2014年09月23日 在野のアナリスト
米国がシリアへも空爆を始めました。イスラム国を世界の脅威と位置づけ、事実上容認とされるシリアのアサド政権を飛びこしての攻撃です。ただ空爆は誤爆、民間人の被害も想定すると、根深い米軍不信を生みかねず、泥沼に入ってしまったようです。中間選挙の前に、米国がスタンスを鮮明にした形ですが、中東をどう安定に導くのか、その戦略もなく一方を叩いても、雨後の筍のように別の組織ができるだけです。そうしてできるテロ組織が、徐々に拡大している傾向をみれば明らかなように、学習し、組織強化を図っている。そのいたちごっこは今後も続くのでしょう。
安倍首相が国連総会出席で、渡米しています。深刻なのは、当地でディスカッションした中で、経済成長に関して「女性、高齢者の活用」と掲げた点です。以前から指摘しているように、今はミスマッチが問題です。公共工事には若い男性が必要であり、女性や高齢者は事務職など、肉体的な負荷のかからない職場を好みます。労働人口の減少への手当て、という意味で述べたのでしょうが、ミスマッチ解消への施策を示して、初めて成長戦略と呼べるものになるのです。
外交面では、プーチン露大統領の訪日を延期する方針を政府が固めた、と伝わります。一方で制裁し、一方で北方領土交渉はできません。米国重視、の安倍政権が米国の意向に逆らえなかった、という顛末ですが、その軸を外さない限り、北方領土も拉致問題も前へ進めないことがはっきりしました。米露、米朝が仲良くするときでないと、日本は交渉もできないということです。
北朝鮮は核問題で、露国はウクライナ問題で、米国は制裁を科しています。外交交渉はギブアンドテイクですから、日本が何かを与えないと相手も交渉に乗ってくれず、米国の制裁をふり切って、日本は条件を出さなければいけません。それは極めて困難で、タフな外交交渉が必要となります。残念ながら、日本にそれだけの交渉をまとめられる逸材はいない。それはTPP交渉で結果がだせないことでも同じ。最初に期待をあおりすぎたことで、収拾がつかなくなり、折り合いがつけられない。それは露国、北朝鮮との交渉でも、同じことをくり返しているのが現状です。
安倍氏が日中首脳会談に意欲、と伝わりますが、交渉は確実な結果がみえてから、情報を開陳するのが原則です。この時点で、日中首脳会談はまだ何の進展もない、ということが読み解けます。恐らく、中国側からの接触があっても、双方で条件面に折り合っていないのでしょう。国連改革にも前向き、と伝わりますが、では日本からどういうプランが提示できるか? 実は、具体策はほとんどないか、あっても支持が得られない内容になるとみられます。結果的に、ここも米国を軸としている限り、多くの国から支持される計画を打ち出せない、ということでもあるのです。それが安倍外交の限界、期待値の煽り方は凄まじいのに、結果が何も伴わない。円安に誘導したことでも、海外からは不信感があるともされており、国際社会での日本の評価、という意味でも安倍氏の国連演説はより興味深いものとなるはずです。テロ組織でさえ学習し、生き残りをかけている今、日本だけがのほほんと外交している。国際社会の厳しさを痛感するのか、それが試されるのでしょうね。