拉致被害者の早期救出を呼びかける「国民大集会」に出席した安倍首相。ちなみに首相の誕生日は9月21日。日経平均は年初来高値を更新したが、一部の外国人投資家は日本の成長に懐疑的だ(AP/アフロ)
早過ぎる円安、日本株はいったん反落も 【今週のマーケット】実はまだ高値更新でない日経平均
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2014年09月21日 2014年09月21日 馬渕 治好:ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト 東洋経済
■ 円安のスピードは、やや速すぎる
先週の日経平均株価は、円安が原動力となり、1万6000円の大台を超えた。8月11日付の当コラムでは、「市場には寒い8月、暑い9月がやってくる」、9月からは株価が再度上昇基調を明確にする展開がありうる、と述べた。また円相場については、8月15日の米国債の利払いが円高材料と解説した。幸いなことに、足元の円安の起点は、ズバリこの材料が剥げ落ちた8月15日頃からとなっている。 そのため、株高にも円安にも違和感はない。ただ、今の円安は速すぎる。先週の大きな材料は2つあり、スコットランドの独立を問う住民投票と、米FOMC(連邦公開市場委員会)だった。前者については、「独立反対派が優勢」との世論調査を受け、市場は投票結果が判明する前から、「楽観への見切り発車」を行なった。早々に欧州株や欧州通貨が上昇、米株や米ドルもツレ高した(その分、逆に結果が出てからは反落した)。
後者のFOMCでは、声明に盛り込んでいた、「量的緩和終了後『相当の期間』低金利を続ける」、という表現は、「景気の強弱にかかわらず、長期間利上げしない」という意味合いになりかねず、FRB(連銀)内部では今回「相当の期間」という文言を削除しようとの意見が強まっていた。
だが、削った場合、連銀には利上げ前倒しの意図はまったくなくても、「文言変更」を見た市場が、勝手に早期利上げと邪推し、暴れまわる恐れがあった。
すでに多くの報道で、この文言を「削る」「いや、削らない」と騒ぎになっていたため、連銀は、急きょ「相当の期間」の文言を残し、市場に安心感を与える作戦に出た。この作戦が功を奏し、米ドル買いに「力を貸した」と、解釈できる。
■ 「綱渡り」続く連銀、浮上する「短期的リスク」
こうしてFRBのイエレン議長は、サーカス団の団長よろしく、市場という猛獣を、巧みに手なずけた。しかし今後も、イエレン・サーカスは綱渡りを続けなければならない。景気が悪化すれば、米株価や米ドルが大きく下落しかねない。逆に景気が過熱すれば、長期金利が一気に跳ね上がり、それが米株価を急落させ、やはり米ドル安につながりうる。
つまり、「タイトロープ」の右にも左にも転落できず、今後も微妙なバランスで金融政策の舵を取り続けることになる(ただ、現時点で無難に乗り切る可能性が高いと予想する)。
加えて、足元の円安には、短期的に危うさを覚える。日本の公的年金資金の外貨投資拡大に対する思惑、FX取引での、個人の米ドル買いへの飛びつき、シカゴ先物市場での円売り残の膨張など、需給面で過熱が生じているからだ。大きな円安トレンドは変わらないが、当面は、いったん円高方向へ振れ戻る展開を予想する。
前週末は、日経平均株価は「年初来高値」「6年ぶりの戻り高値」といった文言にあるように沸いたように見える。だが、実は日本株の動きは、急ピッチに円安が進んだ割には鈍い。
■ 円安の割に鈍い、日経平均の動きはどうなる?
日経平均は昨年末の高値を抜けたが、米ドル換算した日経平均は、株の上昇より円安が大幅なため、昨年末どころか、実は、今年7月末の戻り高値も下回っている。
実態面で見ると、8月分の輸出金額は前年比で1.3%減少し、輸出は円安下でも伸び悩みんでいる。これは、製造拠点の海外移転による部分もあろうが、多くの外国人投資家は、日本企業は特に家電を中心に、魅力的な製品作りができなくなり、国際競争力を失ったのではないか、との疑念を寄せている。
国内景気全般も、消費増税後は何とか回復基調にあるものの、内閣府は景気の基調判断を5カ月ぶりに引き下げた。
それでも企業収益は増益基調ではあるので、年末の日経平均としては1万8000円近辺を見込む。だが、前述のように、短期的には為替が円高へ反転するとともに、いったん株価も下押し、日経平均は1万6000円を割り込む可能もある、と警戒している。
今週の日経平均株価見通しは下値1万5700円、上値1万6500円を予想する。