福島第1原発免震重要棟2階の緊急時対策本部で事故対応の指揮を執る吉田昌郎所長=2011年5月(東京電力提供)
政府、「吉田調書」を初めて公開 「全面撤退」強く否定
http://www.47news.jp/CN/201409/CN2014091101001420.html
2014/09/11 16:54 共同通信
政府は11日、東京電力福島第1原発事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が吉田昌郎元所長=昨年7月に死去=から当時の状況を聞いた「聴取結果書(吉田調書)」を公開した。関係者を非公開で聴取した政府事故調の調書が公開されるのは初めて。
調書の中で吉田氏は、東電が第1原発から全面撤退すると当時の政権が解釈したことを「誰が逃げようとしたのか」と強く否定。2号機の原子炉水位が低下し危機的状況になった際の心情を「われわれのイメージは東日本壊滅。本当に死んだと思った」と吐露している。
吉田氏の調書はA4判で約400ページ。
◇
「吉田調書」要旨
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=82844
2014年9月11日 16:40 沖縄タイムス
政府事故調査・検証委員会による福島第1原発・吉田昌郎元所長の「聴取結果書(吉田調書)」要旨は次の通り。
【事故調の趣旨説明】
―どういう事故が起こったのか、それがどんな経過で進んだのかを明らかにして、後々の人たちがこの経験を生かすことができるような知識をつくりたいと思っている。責任追及を目的にしていない。事と次第によっては言葉がほぼそのまま公にされる可能性がある。
「結構です」
【津波到達】
「異常が起こったのは全交流電源喪失が最初。非常用ディーゼル発電機が動かない、津波が来たみたいだという話で、この時点で『えっ』という感覚だった。これは大変なことになったと。当然ながらシビアアクシデントになる可能性が高い。次はどうするんだということが頭の中でぐるぐる回っていた」
【1号機非常用復水器の操作】
「非常用復水器は大丈夫なのかということを何回も私が確認すべきだった。こちらから聞かなかったことを猛烈に反省している」
【格納容器ベント】
「一番遠いのは官邸です。大臣命令が出ればすぐに開くと思っている。そんなもんじゃない。電源がない。最後は手動でやるしかないと、バルブにアクセスしようとしたが、放射線量が高すぎてアプローチできなかった。ベントと言えばすぐできると思っている人たちは、われわれの苦労が全然分かっていない」
【首相の視察】
「『ベントどうなった』と言うから、われわれは一生懸命やっているが、現場は大変ですという話はした。私だって格納容器の圧力を下げたくてしようがないのに、できないというぎりぎりの状態。総理大臣が飛んでいようが安全を考えれば早くしたい」
【首相官邸からの電話】
「何で官邸なんだというのが最初だった。ずっとおかしいと思っていた。菅氏はごく初歩的な質問をしていた。4回ぐらい菅氏が出てきた」
【1号機爆発】
「全然想定していなかったという状況。われわれは格納容器の爆発をすごく気にしていた。水素が建屋にたまるというところまで思いが至っていない。事故想定の中に入っていなかったというのは、原子力屋の盲点」
【海水注入中止命令】
「注水した直後、官邸にいる武黒(武黒一郎フェロー)から電話があり『官邸ではまだ海水注入は了解していない』と。だから中止しろという指示だった。ただ私は注水停止は毛頭考えていなかったから、私の判断でやると。担当している防災班長には『中止命令はするけれども絶対に中止しては駄目だ』と指示して、それで本店には中止したという報告をした」
【3号機爆発】
「現場から四十何人行方不明という話が入ってきた。私はその時死のうと思った。本当に四十何人亡くなっているなら、そこで腹を切ろうと思った。しかし一人も死んでいない。仏様のおかげとしか思えない」
【2号機の危機】
「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らない。本当にここだけは一番思い出したくない。ここで本当に死んだと思った。2号機はメルト(ダウン)して、格納容器を破って放射能が全部外にまき散らされる最悪の事故になってしまう。細野豪志首相補佐官に、操作する人間は残すけれども、最悪のことを考えて、関係ない人間は退避させますからということを言った。われわれのイメージは東日本壊滅です」
【全面撤退問題】
「何をばかなことを騒いでいるんだと。現場は逃げたのか。逃げていないだろう。これははっきり言いたい。撤退みたいな言葉は誰が言ったか知らないが、使うわけがない。本当は2F(第2原発)に行けとは言っていないが、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思った」
【津波対策】
「福島県沖の波源(津波の発生源)というのは今までなかった。そこを考慮してやるということは仮想的にはできるが、費用対効果もある。何の根拠もないことで対策はできない。マグニチュード9が来ると言った人は、今回の地震まで誰もいない。それを何で考慮しなかったんだというのは無礼千万だと思っている」(吉田氏以外の肩書は当時)(共同通信)