危機管理に「想定通り」?
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52639693.html
2014年09月05日 在野のアナリスト
内閣改造をうけ、早々に行われた世論調査、おトモダチの読売と安倍政権に経団連がひれ伏す日経は、10%以上の支持率回復です。一方で共同は5%強、毎日などは横ばいと、結果は二分されました。総じて不支持率が5%以上の低下であり、これはそちらをみた方がよいのでしょう。ただ支持の理由に、女性閣僚の増加を上げるなど、世論調査の中身はスカスカであることが分かります。
そもそも平日の昼間に世論調査をとれば、より高齢者が応じる率が高く、言葉は悪いですが新聞に情報を頼る層、という言い方もできてしまいます。新聞による世論誘導の顕著な結果、とみると、新聞によって色の違いもよく分かるのでしょう。朝日を擁護する気はありませんが、例えば誤報問題でも『小渕幹事長』と一面トップでぶち上げた読売は、未だに謝罪、訂正文をだしません。人事なんてそんなもの、というなら、どうして断定的に報じたのか? それこそ東スポ得意の『〜か?』とでも書いておけば、憶測で済む話です。しかし逆に、一面トップに憶測記事を載せると、大新聞の矜持が許さなかったのか。結局誤報となっても、影響が軽微だから問題ない、という判断が働いているとするなら、大新聞としては極めて問題のある軽薄さ、とも指摘できます。
デング熱の対応に「場当たり的ではないか?」との指摘に、厚労省は「当初からの想定通り」と、どこかで聞いたような返答をしました。しかし感染の拡大、地域的な広がりに後手後手で応接していることは間違いなく、これもどこかの対応と似ています。安倍政権で広がる、「想定通り」と言っておけば、何か危機管理ができていたかのような手法は、正直に危険を感じてしまいます。
広島市の土砂災害も、想定通りだったからゴルフを続けたのか? つまり異例で、異常な事態が起きているとき、政府の要人がゴルフなどをしていれば、被害を軽視しているか、抜けているか、または想定通りというしかありません。つまり想定通りだから、訓練の通りに対応すれば問題ない、という態度です。しかも9月2日に市が避難指示を全面解除したのは、内閣改造前、防災担当の大臣が交代するためではないか? とも囁かれます。京都でも大雨が降り、まだ西日本の気象には不安も残る。地下水の流れも変わっていて、地盤も緩い中で、9月2日の想定通りに避難指示を全面解除して、本当に大丈夫だったのか? 結果は分かりませんが、不安に感じます。
米8月雇用統計が非農業部門で14.2万人増となりました。失業率は0.1pt改善したものの、やや悪い数字です。しかしFRBはすでに労働の質、に焦点をあてており、数字自体に意味はありません。問題は賃金上昇が緩やかで、インフレ率に追いついていかないこと。資産効果をドル高でとるなら、海外資産の還流がよりすすむかもしれません。米国としても次の一手はとても難しい。
そんな中、麻生財務相が補正予算の編成に言及、しかし市場はぴくりとも反応しませんでした。市場からみて補正予算は『想定通り』。むしろ打つことにより、消費税の再増税が確定するので、ニュートラルよりマイナスの判断となります。今回、海外投資家は日本の駆け込み需要の反動減、その大きさに驚いており、打てば来年はマイナス成長も予見しており、補正予算程度ではそれを補えないと見ている。これは政府としても「想定通り」とは言えない事態となっています。
安倍改造内閣の評価は海外でも二分されますが、総じて批判の方が多い。主要閣僚が変わっていないので、従来から批判してきたメディアは当然、批判的です。WSJなど、市場中心の媒体はGPIF改革を高評価する、程度です。安倍政権では、安倍氏の心の負担を増やさないよう、これからも「想定通り」と構え、問題ないという態度が増えるのでしょう。しかしそれが危機管理を危うくします。しかも経済面では、その悪影響が顕著になってきました。それも政府が「想定通り」と使い、対策が後手に回るためです。安倍政権のつかう「想定通り」、それを使っていれば安泰として、政治家から官僚までの口癖になってしまったことが、実は「想定通り」でない、ということになるのかもしれませんね。