安倍改造内閣について
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52639486.html
2014年09月03日 在野のアナリスト
安倍改造内閣が発表されました。以前も述べたように『安倍氏の心の保健をするための内閣』、略して『安保内閣』の様相を一層強めてきました。おトモダチのメディア、政治記者などは絶賛するこの改造内閣、しかし詳細にみると実はかなりの問題を抱えています。まず小渕氏を入れるために、額賀派からバーターされた竹下氏が復興担当相、おトモダチの麻生財務相が推した山口氏が沖縄・北方担当相。つまり復興、沖縄問題など、政権が重視するべき重要な担当相が、能力主義ではなく党内バランスによる人事考課になっている点。福島も沖縄も、安倍政権では重視されない、浮かばれない、ということがこれをみてもハッキリしてきました。
一方で、原発再稼動を控える経産相に、ホープである小渕氏。他の女性閣僚はいずれも安倍氏の取り巻きで、高市総務相、松島法務相、山谷拉致担当相、有村女性活躍・行革担当相が並びます。ここで松島氏、有村氏などは安倍応援団であることが評価され、入閣となりましたが、女性活躍は目玉の成長戦略のはず。ここにも人事として重視されない人材がついています。
西川農水相はTPPによる論功で、江渡防衛相は集団的自衛権による論功で、それぞれ入閣した。つまり安倍氏に協力する人を優遇した。これは安倍氏と距離をおくと、入閣できないことを暗に示します。そして党役員人事など、二階氏以外はすべて閣僚からの横滑り。おトモダチの、おトモダチによる、おトモダチのための改造という面が色濃くなっていて、おトモダチ以外は論功か、推薦をうけた人、という人事における安倍氏の性向が如実に現れているのです。
しかも、自らが弱体化させた派閥、その領袖クラスを役員に据えて抑えこみにかかる、という皮肉も露呈します。弱体化しているので抑止力もなく、谷垣幹事長をはじめとして、顔と名前で党の不満を抑える、という難しい課題を突きつけられた。しかも、これだけ重鎮を優遇するのですから、当然のように党の若手は面白くありません。一度でも安倍氏に逆らった人、敵対した人は安倍氏が首相でいる間、入閣は叶わない、そう見限った人からの反発も予想される形となります。
昨日も指摘したように、消費税10%への道は完全にでき上がった。経済重視でもありませんし、麻生財務相、甘利経再担当相が留任した時点で、日本の凋落は予告されたようなものです。仮に来年度から10%に上がるとしても、駆け込み需要は大して盛り上がらない。むしろ家計が防衛的になり、今年度の景気はさらに落ちこむかもしれない。GPIF改革程度でお茶を濁し、市場対策をしても日本の景気そのものが崩れたら、焼け石に水どころか、逆効果にさえなりかねません。
今回、はっきりしたことは安倍氏の盲目さ、です。確かに次期総裁候補をとりこみ、安定化したように見えますが、支持率が下がると閣内不一致の動きがでてくる。特に、党内で抑えこまれる若手、安倍政権の下では閣僚の目がなくなった待機組、それらは対抗馬の出現を望み、独自の動きを始めることが確実です。今回、もう一つ名前をつけるなら、安倍氏のシンパ、族議員にならなければ、自民党内で役にもつけない、ということで、『シン族内閣』ということになるのでしょう。シンは安倍氏の名前である晋三から、つまり安倍氏の『シン族』にならないと、党内出世もできない。おトモダチどころか、その上の関係までいかないと、閣僚の約束手形にならないとなったのです。
閣僚の布陣をみても、何に力をかけ、何を軽視しているか? それがはっきりします。最後に望月環境相・原子力防災担当をみると、安倍氏がやはりこの部門を重視していない、ということがはっきりします。安倍氏にとって、国民は関係ない。自分のストレスを如何に下げるか、を重視した今回の改造。『シン族内閣』が、身内ほど仲が悪いという世の常を踏襲するようだと、身体検査が甘いといわれる今回の組閣、この政権の弱点が早く露呈することも、想定しておいた方がいいのでしょうね。