10年前から警鐘を鳴らしていた藤田紘一郎氏/(C)日刊ゲンダイ
拡大必至の「デング熱」 代々木公園に近い繁華街は要注意
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2014年8月30日 日刊ゲンダイ
「10年前からデング熱の国内感染を恐れ、警鐘を鳴らしてきました」
こう言うのは、熱帯医学に詳しい人間総合科学大教授の藤田紘一郎氏。70年ぶりに確認されたデング熱の国内感染者が10代女性に続き、20代の男女にも広がったことを受けての発言だ。
3人は都内の学校に通う同級生。秋の学園祭に向け、ダンス練習をしていた代々木公園で感染したとみられる。東京都はデング熱を媒介するヒトスジシマカを駆除するため、公園に殺虫剤を散布。“撲滅作戦”を実施したが、危ないのは公園だけではない。
「デング熱は、ヒトスジシマカが感染者の血液を吸って別の人を刺し、ウイルスを注入して2次感染を起こします。人から人には感染しません。私が研究で何度も訪れたインドネシアやタイ、フィリピン、インドなどは患者数が特に多い。そういうエリアで感染が広がるのは、決まって人が行き交う都市部の繁華街。代々木公園に近い渋谷や原宿、新宿は要注意です」(藤田氏)
厚労省や東京都は「デング熱が感染を広げる可能性は低い」と“火消し”に躍起だが、ヒトスジシマカは日本に広く分布する。蚊に刺される人をゼロにはできないだけに、ちょっと信じがたい。
「米国では99年、アフリカをルーツとする西ナイル熱の感染者が初めて確認されました。これも蚊が媒介する病気で、その後も感染者が増えています。このケースからも分かるように、蚊が媒介する病気のブロックは困難です。デング熱が今後、東京の繁華街を中心に感染拡大するのは間違いない」(藤田氏)
■日本人全体の免疫力が低下
発症すると、発熱や目の痛み、関節痛などを起こす。まれに命が奪われるが、感染しても発症せずに済むことも少なくない。今回の3人は10〜20代と若く、ダンス練習に打ち込む元気があった。ウイルスから身を守る免疫力が強いはずだが、3人とも発症しただけに要注意。感染拡大が危ぶまれているのだ。
「免疫力を左右する腸内細菌の数は、戦前に比べて3分の1に激減。日本人全体の免疫力が低下しています。免疫力は加齢によっても下がる。特効薬もワクチンもないデング熱の予防には、免疫力を高める努力が欠かせません。そのための工夫のひとつが食事で、腸内細菌を増やす食物繊維や発酵食品を積極的に取る。もうひとつは寝不足を避け、疲労をためないこと。ある免疫細胞は、寝不足によって働きが5分の1に低下します」(藤田氏)
がんや糖尿病などの病気で、免疫力が低下している人はなおさらだ。