破たんの白元、争奪戦の舞台裏 なぜエステーは“降りた”のか? 混迷の殺虫剤業界
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140820-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 8月20日(水)3時0分配信
民事再生手続き中の日用品メーカー白元は、再建を支援するスポンサーに殺虫剤大手のアース製薬を選んだ。支援額は75億円で、アースが受け皿となる子会社をつくり、事業を引き継ぐ。提携先を決める最終入札には日系投資ファンドのイースト・インベストメント・キャピタル、米国系ファンドのテキサス・パシフィック・グループ、アースの3社が参加した。イーストが110億円を超える最高額を提示したが、白元の管財人は「資金調達の確証がない」とこれを退け、アースをスポンサーに選んだ。
アースは大塚製薬グループであり、国内殺虫剤市場首位で液体蚊取り器「アースノーマット」や防虫剤「ピレパラアース」、ごきぶり退治器「ごきぶりホイホイ」で知られる。2012年には入浴剤大手のバスクリンを買収した。消費者によく知られた白元ブランドを取り込むことで、量販店などへの価格交渉力を高めるのが狙い。アースの14年12月期の売上高は1416億円、営業利益は67億円と増収増益を見込んでいる。
白元は衣料用防虫剤「パラゾール」をはじめ冷蔵庫用脱臭剤「ノンスメル」、使い捨てカイロ「ホッカイロ」、衣料用防虫剤「ミセスロイド」、保冷枕「アイスノン」など息の長いヒット商品を次々と生み出し、非上場ながら知名度は高かった。
米ハーバード大学ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した創業者の孫の鎌田真氏が06年4月に社長に就任。鎌田氏は防虫剤からの脱却を進めたが、防虫剤の市場規模は250億円程度であり、日用雑貨の屋台骨を担うような大型の市場ではない。他の分野に進出するためM&A(合併・買収)に力を入れた。医療衛生品メーカーや入浴剤メーカーを傘下に収め、ノーズクッションつきマスク「快適ガードプロ」や入浴剤「バスキング」など衛生用品・入浴剤事業に参入した。
しかし、主力の防虫剤市場で競合のエステーに押されるなど競争激化で業績が伸び悩み、M&Aの資金負担などから財務状態が悪化した。再建を目指して13年5月、住友化学に対し第三者割当増資を実施、住友化学は白元株の19.5%を保有する筆頭株主となった。さらに今年1月には、使い捨てカイロ「ホッカイロ」の国内販売事業を「キャベジンコーワ」で有名な医薬品メーカー、興和に譲渡した。しかし、14年3月期は62億円の最終赤字を計上し、債務超過に転落。5月に民事再生法を申請。負債総額は255億円だった。
●アースとエステーの争奪戦
当初、白元のスポンサーはアースとエステーの争いになるとみられていた。エステーは防虫剤「ムシューダ」や消臭剤「消臭力」などのヒット商品を持ち、14年3月期の売上高は469億円。防虫剤は首位で、芳香剤は2位だ。
アースとエステーは2010〜11年にかけて殺虫剤業界3位だったフマキラーをめぐり争奪戦を繰り広げた因縁で、アースは国内殺虫剤市場で5割を握るガリバーだが海外展開に後れを取っている。これを挽回するために、早くから海外展開を図ってきたフマキラーの株式を買い占めて買収に乗り出した。アースが筆頭株主になるとフマキラーは、防衛策として防虫剤首位のエステーと資本提携した。エステーが筆頭株主の座を奪還して、攻防の果てに11年2月、アースは保有するフマキラー株式をエステーに売却して撤退した。エステーはフマキラー株式の25%を保有し、持分法適用会社に組み入れたが、現在は出資比率を10.4%に落としている。
白元をめぐって、アースとエステーの因縁の対決が再現するとみられた。しかし、エステーは1次入札では札を入れたが、最終入札への参加を見送った。その背景としては、白元の労組をはじめとする従業員の3分の2が「販売拠点などが重複する事業会社が(スポンサーになると)人員整理につながる」とする署名を白元の管財人に提出していたことが影響したとみられている。白元を買収しても従業員の抵抗が強くうまくいかないと判断して、エステーは最終入札から降りたようだ。
フマキラー買収の際とは逆に、今回はアースが白元を手に入れたが、殺虫剤業界はしばらく混戦が続く。
編集部