米国の早期利上げ観測?
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52626110.html
2014年08月10日 在野のアナリスト
世界は今、エボラ出血熱の感染が拡大しています。米国が感染者を国内の隔離施設にうけいれたのも、自国民だから、や人道的に、といった理由ではありません。言葉は悪いですが、人体実験できるためです。しかし対象者はそれで様々な治療が約束される。未承認薬の投与も、もしそれで効果があれば米製薬会社にとってもメリットがあります。後のパンデミックに備え、どんな反対があろうと、治験を蓄えておくのが国益、との強い意志が見え隠れします。
今回、もっとも危険と思われるのが、中国や東アジア圏などの人口密集地で感染者がでること。潜伏期間が長いため、どこでどう感染し、拡大するかが読めません。邦人の感染者がでた場合、日本は受け入れるのか? 搬送方法は? など、様々な検討をしておく必要があるのでしょう。
8日の米株市場はイラク空爆の影響もなく、大幅高しました。日経平均先物も15000円を回復していますが、今回の下落局面にはちょっと警戒が必要です。米市場の下げの理由として、一部で早期利上げ観測ともされます。しかし個人的には、米国には利上げする材料が乏しくなった、と感じています。以前、私は利上げしなければいけない理由として、住宅市場の投機的な動きを指摘しました。しかし大寒波がすぎても住宅市場はもどらず、落ち着きをみせています。雇用統計も、製造業の指標にしても斑で、以前とくらべても利上げを急ぐほどではない、とみています。
早期利上げ観測が語られる主因は、米国債の上昇ですが、そのきっかけは中韓などの新興国による、外貨準備の増加です。これは米政府が為替誘導に対し、黙認する姿勢をとったことで起きており、それだけ新興国経済に不安があることを意味しています。今のFOMCメンバーをみても、ハト派が優勢であって利上げを説明する材料に欠けます。外貨準備の増加、という動きでテクニカルに米国債が上昇したことを、後付けの理由として早期利上げという説明でお茶をにごしている。なので、行き過ぎれば米高官の口先介入で、中韓などを牽制し、この動きも収まるとみています。
問題は、そのとき中韓が堅調さを取り戻すか? ですが、今のままでは難しい。なので米国も支援のつもりで今は容認します。そして敏感なファンド勢は「早期利上げ観測」を口実として債先買、株先売を仕掛けているため、7月後半から米株市場が調整していますが、新興国から引き上げた資金は、結局どこかで運用せざるを得ない。資金還流をみて、先週末のように米株は上げてきます。
では日本は? 一昨日も示したように、企業決算は一巡しつつあり、しかも内容は微妙なものが多い。資金を引き上げる材料にされかねません。しかも、メディアが如何に報じようと経済指標は悪いものが目立つ。しかも中身はかなり悪い。しかも日銀のETF買いも力不足であることを、今回試してしまった。GPIF報道も、日経平均を100円も押し上げる力がなくなった。上昇を意識させる材料が途絶えつつあり、しばらくは弱含んでしまうことが予想されます。
米早期利上げ観測が、ただのブラフだとすれば、為替相場にも支援材料にはなりません。安倍ノミクスには誰も反応しなくなったように、円安でも輸出が増えないことを「想定外」ということ自体、経済の専門家としては検討不足となります。増税の影響を「想定の範囲内」などと述べるのも同様、過去の指標と比較することで意味づけする向きもありますが、状況の変化を織りこまず、ただ数値を並べて予想することは、実は正しくないのです。
新興国経済の変調、欧州の失速など、世界はある意味デフレ、不況のパンデミックに怯え始めたのかもしれません。そこにエボラ出血熱や、イラク空爆などの不透明要因が重なること、それを受けて大きな変動を起こしやすくなったのです。なので企業の決算がどうだろうと、下げるときは下げてしまいます。それはリスクオン相場と、オフの相場との違いという以上に、世界が刻々と変わりつつある状況に対して、株価という数字がどう動くか、ということでもあるのでしょうね。