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2014年08月06日
スカイマーク(東証1部・コード9204)が2011年2月に発注した超大型旅客機のエアバスA380・6機の代金支払いが滞り、エアバス社から解約を通知されたうえで7億ドル(700億円)もの損害賠償を請求されているようです。
6機合計の代金が1915億円で、そのうち265億円が支払済みで資産計上(建設仮勘定)しています。これは解約しても返金されるはずがなく、全額減損すれば純資産(2014年3月末で442億円)の6割が吹き飛んでしまいます。
スカイマークにとっては深刻な経営危機となりますが、よく調べてみると「信じられない凡ミス」が積み重なった結果のようです。
まず2011年2月時点で、海外進出(具体的にはニューヨーク線)のために新品の超大型機を6機も発注したことです。海外進出を否定するわけではありませんが、何もエミレーツ航空など中東の航空会社がデラックスな超大型機を大量発注して世界中の路線に進出しているビジネスモデルを真似する必要はなかったはずです。
西久保社長はLCCの拡大と燃料費の増加で収益が急激に悪化したと説明していますが、そうでなくてもすぐに行き詰まるビジネスモデルだったはずです。
そもそも世界の航空機市場では超大型機の需要は大変限定的であり、A380の受注残318機のうち140機がエミレーツ航空と偏っています。ライバルのボーイング社は、このクラスの機体を製造していません。
これは航空機リースの買い手がつかないことを意味します。事実スカイマークも、一旦引き取った後でリースバックする方式でも(これは価格変動リスクをスカイマークが負います)リースの買い手がつかず、今回の顛末となったわけです。
リース市場で中古機を調達して海外進出するのであれば、何も問題はなかったはずです。
さらにこれだけの巨額投資にもかかわらず、為替予約を全く行っていなかったようです。購入を決定した2011年2月は1ドル=82円前後で、その後の約1年間は75〜80円だったので、いくらでも有利な為替予約を行うチャンスがあったはずです。
これは円安になったからという結果論ではなく、企業経営の鉄則です。6機合計の代金が1915億円というのは「円安で膨れ上がった金額」で、購入決定直後の2011年3月期有価証券報告書には1559億円と記載されています。
それから実際にエアバス社に、支払い延期や納入時期の延期や一部キャンセルを申し入れた経緯も、大変に稚拙な交渉でエアバス社に「いいようにやられた」形跡があります。オプション契約だったはずの2機まで損害賠償の対象になっています。
だいたいキャンセルされて困るのは(新たな転売先を見つけることが困難な)エアバス社の方で、さらにエアバス社の事情で納期が延期される可能性もあったはずで、「おたおた」せずにエアバス社の足元を見てしっかり交渉すれば、こうはならなかったはずです。
ここまで来てしまったからには、スカイマークはさっさと法的整理(民事再生ではなく破産)して、損害賠償金全額を踏み倒す必要があります。冗談ではなくこのままでは7億ドル(700億円)を全額むしりとられて、同じ結果(破産)になってしまうからです。スカイマークの2014年3月時点の純資産は442億円しかなく、支払い済みの建設仮勘定の265億円を減損すると160億円以下になってしまいます。
結果が同じなら、さっさと破産して「国外流出」を防ぐべきです。さらに支払済みの265億円の一部でも取り戻すように頑張るべきです。航空会社の破産など欧米では珍しいことではなく「気にしない」ことです。
スカイマークの行方にも関連する話題ですが、エミレーツ航空の航空機発注残高はA380の140機も含めて約10兆円もあります。確かに本社のあるドバイは欧州・アジア・アフリカからほぼ等距離にあり、世界のハブ空港としての要素は備えています。
しかし、やはり危険と隣り合わせのビジネスモデルです。あれだけ安泰と思われたドバイの不動産開発事業も、2009年11月にあっさりと破綻してしまいました。
航空事業とは、大変にダイナミックでリスクの大きいビジネスですが、規制に守られてこじんまりとしているだけでは生き残れないビジネスでもあります。
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