朝日新聞の検証報道
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52625665.html
2014年08月06日 在野のアナリスト
朝日新聞による、慰安婦報道に対する検証記事。挺身隊との混同について、当時の研究の乏しさを原因とし、93年以降は両者を混同しないように努めてきた、としますが、公式に誤りを認めたのが今にいたった経緯について、説明はありません。済州島での強制性を訴えた吉田証言についても虚偽とみとめていますが、これも前段同様、かなり以前から食い違いや認識の誤り、当地の人々への聞きとりをしても、裏がとれないなどの問題がありました。30年以上、確認できただけで16回の引用を認めましたが、そのつど何ら検証もなく掲載したことになりますが、その説明についてはありません。
朝日新聞が、ようやくこれらの報道を誤りと認めた、一歩前進という人もいますが、個人的には左に向いていた顔が、やっと少し前を向くようになった程度で、前進はしていないと感じます。しかも、他紙も同様の報道を行っていた、と責任転嫁するに辺り、逆に他紙もその反証記事を載せるなど、子供のケンカのような有様であり、この国のメディアのレベルの低さを痛感します。
そもそも随所にみられる『慰安婦にさせられた』という部分。40人のうち信憑性のある19人の証言から、4人が「軍、軍属の関与」で、多くは民間業者の勧誘、だまして連れて行った、としています。しかし今でも性風俗に携わる女性はおり、中には家族、付き合う男性から命じられて、という本人の意志に反する部分があったとしても、多くが生活のため、貧しさから従事することが一般的です。この19人にそうしたケースがないのは異例ですし、当時の朝鮮半島は貧困に喘いでいたのですから、尚更おかしい。そこに対する検証は一切なく、強制性があったとします。
インドネシアで、オランダ人女性が慰安婦にされた、というケースをだし、強制性の裏づけとしますが、軍関与を示す証拠はない。個別事例として、当地の軍指導部が暴走した可能性は裏付けても、軍としての命令があったか、というのは依然として立証されていません。一部であったから全体としてもあった、という拡張論は、慰安婦問題を語る際によく用いられますが、論拠が不明です。こうしたケースは特に、実証できなければただの類推にすぎません。拡張論は、罪なき人を犯罪者扱いしてしまう、差別主義にもつながるもので、もっとも忌むべきものと云えます。そして『自ら慰安婦になった』ケースを除外しては、検証としては片手落ちともいえます。
朝日新聞では、意に反して『軍が関与した慰安所』にとどまることも、強制性と認定していますが、寡聞にして初耳です。働きたくない職場でも、仕方なく働いていたら強制性と認定できるというのですから、多くの労働者が当てはまるでしょう。辞めると言い出せない、逃げだせない、という形があった、と実証できているなら別ですが、そこはやはり類推でしかありません。
過去のことであり、厳密な意味で証拠をさぐるのは困難です。しかし人の記憶に基づく証言は、如何様にも改竄できてしまいます。それが本人であったり、他人の入れ知恵であったり、様々ですが、記憶は変容するのです。だからこそ、多くの証言をつき合わせ、物証を集めるなどして、実証主義を貫かなければ、こうした問題の正しさは見えてこない。相変わらず、朝日新聞ではその点に欠けます。自ら足をつかって集めた情報、というよりも著作物の引用や研究者の説明、といったものに頼っている。政治問題化している以上、研究者にもフィルターがかかっている恐れは拭えず、それを排除したかどうか、も検証としては不足している、今回はそんな状態です。
軍の関与を示す資料、という部分にしても、研究者でも見方が別れるなら、その全文を掲載するなり、転写して報じるなりして、読者の判断にゆだねればいい。背景を知らないと読み解けない部分があったとしても、その方がよほど親切です。我田引水のいいわけが多く、すべての文書に「だって、こうだったんだもん!」と、少し子供っぽい言葉をつけると、何となく朝日新聞の立ち位置が理解できるのでしょう。しかし実証主義に立脚しないと、やはり立つ瀬をなくすのでしょうね。