集団的自衛権の行使容認の二つの党
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52625138.html
2014年08月01日 在野のアナリスト
台湾の高雄市でガス爆発がおきました。工業用に地下にひいたパイプラインから漏洩したとみられ、大きな被害が出ています。日本でも、こうした例は少ないですが、工業地帯に住宅があるケースは多く、例えば5月に起きた町田でマグネシウム火災を起こした工場も、住宅に囲まれていました。日本では自衛隊や米軍の基地も、住宅街に隣接するなど、今そこにある危機です。
ガスラインがあるのにガス検知器がない、その安全意識の低さは問題ですし、ガス漏れを確認しながら、住民を避難させなかったことも疑問です。日本でも電線やガス管、水道管などをまとめて地下化する計画もありますが、ガス漏れで爆発したら? インフラは一気に破綻します。水漏れで作業に支障をきたしても、復旧に時間がかかります。まとめれば効率的ですが、リスクとの兼ね合いを考えないといけない。それはガス管を住宅街にひいた高雄市も同様なのでしょう。
安倍氏が歴訪先で、内閣改造を9月第1週に行う、と告げました。1ヶ月も前のこのタイミングで発表した意図は、猟官の動きを活発化させたいのでしょう。それは政権への忠誠度であり、決して能力をアピールしろ、というのではありません。官僚主導体制である安倍政権では、個別の政治家の能力より、むしろ失言や政治資金絡みのトラブルを抱えていないか、が重視されます。その上で、集団的自衛権の行使容認に、賛成することが絶対条件となってくる。また支持率低下と、石破幹事長の交代の動きとが重なり、党への締めつけが弱まったことから、しばらくは閣僚就任というえさをチラつかせ、党内を黙らせる必要性も生じているのでしょう。
次世代の党が、石原氏を最高顧問、平沼氏を党首、山田氏を幹事長として発足します。憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、極右勢力の誕生です。ただ安倍政権も同様に、集団的自衛権の問題を語るとき、自衛隊員が参加を拒否する、や日本人が死ぬ、といった情緒に訴える反対ばかりがめだちますが、真に必要な議論は財源です。集団的自衛権を行使するには、莫大な財源が必要で、どの国でもその捻出には苦労します。来年度予算の概算要求の検討もはじまっていますが、増税しても来年も赤字。ここに集団的自衛権の行使を足せば、赤字額は大幅に膨らみます。
次世代の党もそこに明確な答えはない。安倍政権も同様です。経済成長すれば…という威勢のいい声は聞こえても、安倍政権下で金融緩和と財政出動をこれだけ行っても、成長率は駆け込み需要があった1-3月期で実質、前期比1.6%増です。これが年間つづけばすばらしいですが、4-6月期には異常な数字が並んでおり、大幅な落ちこみが予想され、新たな財政負担には耐え切れません。
つまり自民党で、携帯電話税などの更なる増税、社会保障費削減などが盛んに議論されるのも、集団的自衛権の行使を訴える党は、必ず財政問題に直面するためでもあります。人口動態や、環境の変化を訴えて、増税の必要性を説明する向きはありますが、それを織りこんでここまで政策をとっていない時点で、そんな理由では赤点です。そしてそこに、新たな財政負担の拡大をともなう、集団的自衛権の行使、という問題がかぶさってきて、増税するしか手がない状態なのです。
安倍政権にしろ、次世代の党にしろ、集団的自衛権の行使にともなう、新たな財政問題に答えをだす必要があるのです。財務省の息のかかったIMFからは、10%の消費税でも足りず、15%にしないと不足と提言するのも、今の財政状況に、集団的自衛権の行使でかかる負担を足せば、当然足りないという結果になるからです。安倍政権では、増税が必須路線であり、増税後の今の異常事態でさえ、言葉を濁して誤魔化そうとします。官僚依存の安倍政権に突きつけられる問題とは、実は増税しなければ自分たちのやりたいことができない、という飽満体質にあり、地面にうまっているガス管と同じように、今そこにある危機と認識すべきなのでしょうね。