エネルギー白書について
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52608954.html
2014年06月17日 在野のアナリスト
22日の会期末にむけ、国会が慌しくなってきました。会期中に閣議決定をめざす自民と、時間稼ぎをして一定程度、抵抗したというスタンスをとりたい公明と、時間軸の勝負となっています。国民の権利が根底から覆される『おそれ』…の部分で、『おそれ』だと時の政府により解釈が変わる、などと語られますが、『日本の存立が脅かされ』や『他に適当な手段がない』、『必要最小限度』でさえ、主観に頼った判断になります。時の政府が無能なら、他に適当な手段がなくなりますし、必要最小限度も銃を一発撃つのか、ミサイル一発撃つかもそれは判断です。
例えば、日本では警察官が発砲すると、その是非について警察から「適切だった」と発表されるだけで、検証機関はありません。自衛隊も、武器使用について一々軍事裁判を開くことはないでしょうから、必要最小限度を判断するのは、主に現場となるでしょう。過度に怖れれば武器の過剰使用が懸念されますが、全員が口を噤めば、証拠もなく行為そのものが『他に適当な手段がない』、『必要最小限度』だった、と発表されるでしょう。この文言では恣意的にならざるを得ないのです。
閣議決定されたエネルギー白書、自民の見方が強く反映されています。LNGなどの輸入費が震災前とくらべ約10兆円増、とする一方、原発停止による穴埋め火力による増加分は3.6兆円と試算します。つまり6.4兆円は円安のせいで増加した、と読みとれます。それを端的に示すのが震災前と比べ、足元をみられたLNGのドル建て価格は1.4倍、円ドルはその間に1.3倍なので、量ではなく価格で約1.8倍になったと試算されている。しかも電気料金はその間に2倍、新規火力の導入ばかりでなく、動かせない原発維持費まで国民負担に回っている、ということが白書から読み解けます。
だから原発を動かさなければ、という論調で彩られており、しかもウランも自給ではないのに、エネルギー自給率が悪化としています。価格で比較すれば、上記のように輸入が増えたように見えるため自給率は悪化しますが、エネルギーを国外に頼る構図は原発を稼動させても変わりません。再処理が動けば別ですが、そのコストを考えると、逆に自然エネルギーや再生エネルギーでも十分ペイできてしまう。原発再稼動に、まともな正論は垣間見られない白書になっています。
CO2排出量の問題も、日本は発電時の脱二酸化炭素装置も海外に売り込んでいる。古くて設置できない設備もあるでしょうが、新たに設置できるのなら装置を組みこめばいい。原発が解決策では決してないのです。北米でもエネルギーが自給できるようになったのは、価格の高騰で、内製する方が安くなったから。今後も円安が継続するなら、国内でメタンやバイオマスを活用した方が、安上がりになる可能性もあり、その場合は自給率も改善するでしょう。
ソフトバンクが米ベンチャーと組んで、電力小売にのりだします。原発が本当に割安な電力か、それは自由化がすすめば、益々国民の目が厳しくなるでしょう。今でさえ嘘で固められた原発神話には、安倍政権の手法と似通うものも垣間見える。真実に堪えられる内容でないのは、エネルギー白書も同様です。化石燃料の可採埋蔵量は示しても、ウランの埋蔵量は併記しない。そんな形では、一向に原発の必要性は感じられない、となってしまうのでしょうね。