【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈1〉
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2014年6月10日 星の金貨プロジェクト
廃炉費用は当然電力会社が負担するもの…そんな考えは覆され、あなたに請求が回ってくる
原子力発電所を廃炉にするための方法など未確立、そこにどれ程の危険が潜んでいるのか、費用はいくらになるのか不明のまま
原子力発電所を不良債権化して責任転嫁、廃炉費用の負担から逃れようとする電力会社
デア・シュピーゲル 5月15日
追加費用が天文学的な金額に上る事を恐れ、ドイツの電力会社は廃炉の責任を政府に転嫁、費用の支払いを国民の税金によって賄うべく動き始めました。
そうなれば数十億ユーロの費用が必要になりますが、この提案をのむほか無いのではないか、ドイツ政府はそう考え始めている節があります。
ドイツの最新の、そして最難関となる課題の重量は275,000トンです。
これはオブリヒハイム原子力発電所を廃炉にする際に排出される鋼材、セメント材その他の放射性廃棄物の総重量です。
この莫大な量の放射性廃棄物があるのは、バーデン・ビュルテンベルグ州オブリヒハイムの町の中です。
ここにある放射性廃棄物は原子力発電所で使われていた配管類、発電部門の機械部品、タービン、発電機、そして原子炉圧力容器など。
そしてそのままでは放射線量が高過ぎるため、移動も解体も出来ない高レベル放射性核廃棄物が約10,000トンあると見られています。
これらは廃炉作業の中でまず、超音波洗浄やサンドブラストなどの前処理を行わなければなりません。
そして人間が行うには危険すぎる作業は、遠隔操作ロボットを使う必要があります。
原子力発電所の解体・廃炉は、完了するまでに15〜20年を要する、技術的に極めて複雑、そして困難な仕事です。
オブリヒハイム原子力発電所は本来、ドイツの電力会社EnBWの持ち物ですが、廃炉完了までに要する費用は5億ユーロ(約700億円)と見積もられています。
しかしドイツの他の原子炉と比較すると、オブリヒハイムの加圧水型原子炉は比較的小さい方なのです
グンドゥレミンゲンB号機(ミュンヘン北西)、あるいはバイエルン州のイサー2号機の様なさらに大きな原子炉を廃炉にするためには倍の10億ユーロ(約1,400億円)画筆用になるだろうと見られています。
多くのドイツ人は廃炉のタイミングが訪れれば、原子力発電所を使ってこれまで何10億ユーロもの利益を上げてきた電力会社が、当然その費用を負担するものと考えてきました。
自家用車のオーナーはそれがもう使い物にならないと判断すれば、自分で廃車費用を支払って処分する義務を負っていますが、電力会社だけには違うルールを認める必要があるのでしょうか?
ドイツの3大電力会社とその代表、E.On のCEOであるヨハネス・ティッセン、RWE社長、ピーター・テリウム、EnBW社長のフランク・マステューは原子力発電所の廃炉に何十億ユーロもの自社の資金をつぎ込むのではない、電力会社にとつて願っても無い結論で一致したのです。
彼らはドイツ政府とドイツ国民に、原子力発電所の廃炉の責任を転嫁したいと考えています。
▽ 原子力発電所は国家の『不良債権』
今や電力会社は彼らの経営にとって最大のリスクとなっている原子力発電所について、その廃炉を行うため、電力業界の『不良債権』とする事を提案しているのです。
2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故を見て、福ドイツのアンゲラ・メルケル首相はエネルギーヴェンデ、すなわちエネルギーの転換政策実行を決断し、ドイツ国内のすべての原子力発電所を、2022年までに段階的に閉鎖し、主に再生可能エネルギーに変える方針を導入しました。
閉鎖した原子力発電にとって、次なるステップは原子炉の廃炉です。
その廃炉作業に伴うリスクのあまりの大きさを見て、ドイツの各電力会社の経営陣は現存するすべての原子力発電所の所有権を放棄し、これから8年間の原子力発電所の経営を公共事業とするよう求めているのです。
そのために原子力発電所を不良債権とし、原子力発電所の廃炉と放射性廃棄物の処理を付帯する義務にしようとしているのです。
[下図 : ドイツ国内に残る原子力発電所]
この不良債権の処理責任はドイツ政府が負う事になります。
計画によれば、ドイツの電力会社は併せて300億ユーロ(約4兆2,000億円)をドイツ政府に提供します。
この金額は各企業において長年にわたり積み立てられ、この資金を基に最終的にドイツ政府によって廃炉作業と放射性核廃棄物の最終処分が行われる事になります。
資金の提供と引き換えに、政府は現在電力会社が原子力発電所に関わって持っているすべての危険負担を肩代わりする事になります。
この提案についての政府側の反応について、すべての電力会社がシュピーゲルの取材に対する返答を拒否しました。
E.On CEOのヨハネス・ティッセン、RWE社長のピーター・テリウムは、今年始め彼らのプランについて、その概略をドイツ政府に説明しました。
現在計画の細部に渡る作り込みが続けられており、彼らの提案が政府を取り上げる事になれば、直ちに交渉を始められるよう準備が進んでいます。
この時点で確実な事は、ドイツ国内の原子力発電所を廃炉にするための方法など確立しておらず、そこにどれ歩程の危険が潜んでいるのか、またその費用も不明のままであるという事です。
一方明白な事は、ドイツ国内のすべての原子炉を廃炉にするのに、300億ユーロ(約4兆2,000億円)ではとても足りないだろうと言う事だけなのです。
〈 第2回につづく 〉
http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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今日から「原子力発電所は国家の『不良債権』」を3ないし4回に分け、掲載致します。
原子力発電所の運転を続ければ。核廃棄物だけでなく、原子力発電所そのものが巨大な核廃棄物と化す。
福島第一原子力発電所のように事故を起こさなくとも、そこに原子力発電所が出現すれば、現にそこにあれば、それそのものが巨大な核廃棄物なのだという事をしっかり認識する必要があります。
そしてその巨大さは作った張本人の電力会社だけでは、いずれ処理しきれなくなる運命を持っているのだと言う事を。
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【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈2〉
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2014年6月11日 星の金貨プロジェクト
反原発運等が行った数々の主張が結局は正しいものであった事を、電力会社の計画が証明することになった
原子力が安全で、完全に制御可能なテクノロジーであると主張することは、もはや不可能
原子力発電を始めて半世紀、核廃棄物を安全完璧に永久保存する方法も、無害なものへと変えてしまう技術も、現実には存在しない
デア・シュピーゲル 5月15日
▽ 解決されないまま残っている重要な疑問
まず言わなければならない事があります。
それは多くの場合、原子力発電所の解体・原子炉の廃炉費用が、当初予想した金額より多額に上ってしまうという事です。
そして中でも最も緊急性が高く重要なのは、高レベル放射性核廃棄物を、安全に保管できる場所を見つけられるのか?という問題です。
ドイツは原子力発電所を始めて半世紀が過ぎましたが、未だにこの答えは見つかっていません。
ニーダーザクセン州にあるゴールベンの岩塩ドームに核廃棄物を一時的に保管する作業が始まってすでに30年が過ぎましたが、中間処分場として本格的に利用するための安全審査は未だに完了していません。
さらに電力会社はこれまでに16億ユーロ(2,240億円)もの巨額の費用を使ったにもかかわらず、永久処分場は未だに確保できずにいます。
昨年ドイツ政府は、2031年までに永久最終処分場として確保できる可能性のある場所を、他の州で調査する決定を行いました。
1カ所の可能性のある場所の調査を行うだけで、その費用は10億ユーロ(1,400億円)以上に昇る見込みです。
しかもドイツ人が近年学んだことは、大規模な公共事業は当初の見積額をたちまちオーバーしてしまうという事です。
未だに開業できずにいる新しいベルリン空港しかり、あるいはハンブルグ・エルブ・フィルハーモニー・コンサートホールしかりです。
新ベルリン空港やハンブルグのコンサートホールは、あまりに複雑な構造のため建設予算がオーバーしてしまったとお考えですか?
であれば極めて危険な高レベル放射性核廃棄物を、数千年の間安全に保管し続けるための施設を建設するには、どれ程複雑な設計と工事が必要になるのでしょうか?
考えるだけでも、最高に複雑な設計と工事が必要になることは目に見えています。
10億ユーロ(1,400億円)、20億ユーロ、いや300億ユーロ(4,200億円)が必要になるのか、前もって予測する事は不可能です。
こうして理由から各電力会社は、原子力発電の解体・廃炉費用を政府に肩代わりしてもらいたいと考えるようになったのです。
▽ 反原発運動が正しかった事を証明する現実
1970年代と1980年代に巻き起こった、多数の人々が参加する事になった反原発運等が行った数々の主張が結局は正しいものであった事を、多くの点において各電力会社の計画が証明する事になりました。
1986年のチェルノブイリ原発事故、そして2011年の福島第一原発が引き起こした原子力大災害の後、原子力が安全で完全に制御可能なテクノロジーであると主張することは、もはや不可能です。
そして核廃棄物を安全完璧に永久保存する方法も、あるいは無害なものへと変えてしまう技術も、現実には存在しません。
これらの事実が明らかになった今、原子力発電のすべての経済的な側面が、白日の下にさらされる事になったのです。
現在太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー開発にそうしているように、政府は原子力発電の開始時期に補助金を出していました。
いずれが正しいかあなたの判断を待つしかありませんが、これまで政府は原子力発電に対し170億ユーロ(2兆3,800億円)〜800億ユーロ(11兆2,000億円)の国民の税金を投入してきました。
原子力発電が軌道に乗り、利益を上げ始めると、その利益は国民に返される事無く電力会社と株主たちの金庫の中にしまい込まれる事になりました。
そして原子力発電が終わりを迎えようとしている今、その費用負担が再び国民一般に求められようとしています。
現在のところ、ドイツの経済界、そして中道・左派連合を形成する社会民主党員(SPD)のエネルギー担当大臣のシグマール・ガブリエは、この問題に関する公式コメントを明らかにしていません。
5月上旬、ガブリエ・エネルギー担当相はE.onとRWEの社長との会談を土壇場でキャンセルしました。
その理由について、ドイツの原子力発電からの転換の道筋を定める再生可能エネルギー法の解説の手続きを一刻も早く完了させたいというものでした。
〈 第3回につづく 〉
http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈3〉
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2014年6月13日 星の金貨プロジェクト
当初の試算をはるかに上回る、原子力発電所の解体・廃炉費用、資金調達に追われる電力会社
莫大な廃炉費用、訴訟の取り下げと引き換えに、政府資金の拠出を迫る電力会社
石炭やガス、そして原子力発電所による発電事業の収支は、もはや辛うじてとんとんという状態
デア・シュピーゲル 5月15日
▽ 大きな危険に直面させられる政府
ドイツ政府のエネルギー担当大臣であるガブリエリは、論議の的となっているこの課題の多い問題をこれから長く議論もしないまま放置するわけにはいきません。
ドイツの各電力会社は原子力発電が作り出した負の遺産である核廃棄物の問題から、できるだけ安い費用で逃れようとしていることは誰が見ても明らかであり、政府としてはそれをそのまま受け入れるのは困難です。
事実、政府側は電力会社の提案については交渉の上、手を加えなければ受け入れられないというのがその立場です。
長期間原子力発電を続けてきたE.on、RWE、EnBW、そしてVattenfall(ファッテンフォール)の電力各社だけが危険負担を強いられている訳では無く、ベルリンの政府も大きな危険に直面することになります。
これまで電力会社はいくつかの訴訟において、政府に対し約150億ユーロ(2兆1,000億円)の補償を求めています。
福島第一原子力発電所の事故発生を見たメルケル政権はドイツの原子力発電の全廃を決定、これを受けE.onとRWEはドイツの違憲審査裁判所に補償金の支払いを求める訴訟を起こしたのです。
この訴訟はドイツ政府の決定が、電力会社の財産権を不法に侵害したかどうかについて争われています。
判決は2015年に下されるものと見られていますが、法律の専門家もこの訴訟の結審を予想することは難しいと語っています。
ファッテンフォール社は同じくクリューンメル原子力発電所とブルンスビュッテル原子力発電所の計画外の早期閉鎖について、30億ユーロの補償金の支払いを求めて、ワシントンにある調停裁判所に訴訟を起こしています。
エネルギー憲章条約の存在により、ファッテンフォールのような外国の企業がアメリカで訴訟を起こすことは可能であり、判決が下されればドイツ政府はこれに従わなければなりません。
これらの事実は、原子力発電燃料税を取り入れたヴォルフガング・シェーブル財務大臣(キリスト教民主同盟)にとっても頭の痛い問題です。
2011年に導入されたこの燃料税は電力会社に原子力発電所の使用年限の延長と引き換えに、燃料として使用したウラニウムとプルトニウムに課税するものです。
2、3週前、ハンブルグの金融法廷は、この課税が憲法に反するものであるとの判決を下しました。
もしこの判決がドイツの憲法裁判所と欧州連合司法裁判所(EUの最高裁判所にあたる)によって支持されれば、ドイツ政府は最高で50億ユーロ(約7,000億円)の賠償金支払いを求められる可能性があります。
もしそうなれば、連邦予算の健全化を目指す政府の取り組みは、ほとんど達成不能に陥ることになります。
ドイツの電力会社はこの損害賠償請求訴訟を切り札に、政府との交渉を進めようとしています。
ドイツ政府がもし原子力発電所を不良債権化するプランに同意し、その後押しをするならば、E.On のCEOであるヨハネス・ティッセンとRWE社長ピーター・テリウムは、いくつかの訴訟を取り下げ、これ以上損害賠償請求を行わない用意があります。
各電力会社の経営陣は、この提案がモラルを無視したものであるとも、政府への脅迫でも脅かそうとする行為でもないと考えています。
もしそれが可能だと解れば、企業のトップは株主に代わり企業の損失に対する補償を求める義務があります。
それをしないというのであれば、株主に対する説明責任が発生することになります。
電力会社と政府との間の交渉のために残されている時間はどんどん厳しくなっています。
最初の判断は2015年前半に下されるものと予想されています。
これらを総合的に判断した場合、この訴訟に関わっている弁護士のうちのひとりが次のように語りました。
「訴訟に関しては多分、電力会社側に有利か評決が下されるであろうことは明らかだと思います。」
そうなれば、政府側にはあまり選択の余地はないということになります。
多くのエネルギーの専門家が分析するところでは、政府が交渉のテーブルに着かなければならない理由は他にもあります。
現在のところ、原子力発電所の廃炉とそれに伴って発生する核廃棄物の処分について、各電力会社はそれを秩序だって進めるための態勢が出来上がっているかどうか明らかではなくなっているのです。
専門家は、今後さらなる税金の投入が必要になるかもしれないと警告しています。
電気を供給する企業は、本来であればこうしたコストの発生に備え、財政的に準備を行う法的な義務があったはずです。
しかし多くの場合、それは発電所という『現物の資産』によって担保されることになりました。
これはリーマン・ブラザースが抱え込んでいた各種の金融資産よりも信頼性が高いと言えるかもしれませんが、この数年間で発電所の資産的な価値は大幅に減少しました。
ドイツが行っているエネルジーヴェンデ(エネルギー革命)により、補助金を給付された太陽光発電や風力発電などの発電量は増え続け、従来の発電手段にとって代わり続けています。
「石炭やガス、そして原子力発電所による発電事業は、」
E.On のCEOであるヨハネス・ティッセンは長年こう主張し続けてきました。
「もはやその収支は、辛うじてとんとんという状態なのです。」
RWEは今年度だけで、発電所の試算的価値を50億ユーロ(7,000億円)減額させなければなりませんでした。
各電力会社は実際に解体・廃炉作業を始めるまでは、原子力発電所は積み立てられてきた費用で十分賄えるものと考えてきました。
しかしエネルジーヴェンデ(エネルギー革命)の進展と原子力発電の廃止が決まった今、その試算はもはや有効ではないのです。
〈 第4回につづく 〉
http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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この記事を読んで明らかなことは、
原発を1か所増やすごとに、社会的コストがその分膨らんでいくという事であり、
原発が1日余計に稼働すれば、やはり社会的コストがその分膨らんでいくという事です。
電力会社はそのコストについて精密な計算などはしておらず、その時になって足りない分はすべて国民にツケが回ってくるという事が実証されつつあるという事です。
現在の日本政府は経済の成長に原発の稼働は貢献をするという言い方をしていますが、それは
自分たちの政権が責任を持たなければならない「当面の経済成長に原発が貢献すると考えている」
というだけの事であり、
「多額の処理コストについては、自分たちは責任を取らずに将来の世代にそのツケを回す」
という事になります。
日本はこういう政治をいつまで続けるつもりでしょうか?
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【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈4〉
http://kobajun.chips.jp/?p=18681
2014年6月14日 星の金貨プロジェクト
使用年限の到来により、原子力発電所の設備すべてが巨大な核廃棄物と化す
原子力発電所を建設するという事は、自分たちの子孫に巨大な核廃棄物を押しつけるということ
あまりに巨額の廃炉費用を賄うには不良債権化しか道はない…それでも核廃棄物の問題は全く解決できない
原発の不良債権化により負担は国民全体へ、しかし廃炉のスケジュールは早まる
デア・シュピーゲル 5月15日
▽電力会社、『冬の時代』
各電力会社は深刻な問題に直面する中、電気を生み出す代わりに日々損失を生み出しています。
このため数千人規模の人員整理を行い、手持ちの有価証券等を現金化して財源に繰り入れるなどの措置を強いられています。
電力事業の継続のため法律で定められた引当金を全額確保できるのは、E.onとEnBWの2社だけのようです。
現状ではRWEは事業を継続するためには、増資を行わなければならなくなっています。
これまで長い間考えられなかった、電力会社の経営破たんという事態もあり得ない事ではなくなってきました。
もしそうなればその会社が所有する原子力発電所の解体と原子炉廃炉のための費用は、ドイツ政府が支払わなければならなくなってしまいます。
ドイツ連邦会計裁判所は、最近以下の判決を行いました。
「電力会社が原子力発電所の解体・原子炉の廃炉を実行できなくなった場合、ドイツ連邦政府は保証人として部分的、あるいは全面的な信用供与を行うべきかどうか検討しなければならない。」
メルケル政権の経済・エネルギー担当大臣のガブリエルにとって原子力発電所の問題は、ドイツの再生可能エネルギー法の改正の次の主要な課題になりました。
普段は政府と対立する各電力会社も、この問題についてはガブリエル大臣に協力しないわけにはいかないでしょう。
原子力発電所を不良債権としてしまうこと、あるいはもう少し歩み寄って『公益信託』とすることについては、ドイツ政府には3つの利点があります。
1番目はドイツ全体の送電網からの原子力発電所の除外が計画よりも早まること、あるいは電力が不足した時の予備電源として位置付けることにより、原子力発電の廃止のスケジュールが早まるという事です。
2番目は電力会社が経営破たんに陥っても、政府に直接の被害が及ばなくなるという事です。
なぜなら債権とした段階で、電力会社は負担しなければならない金額を事前に払い込まなければならないからです。
そして3番目が、電力会社が訴訟を取り下げることにより、ドイツ政府には原子力発電の全廃による補償金の支払い義務が消滅するという事です。
しかし利点だけではありません。
今後いったいいくらに膨らむのかその予測も出来ない核廃棄物の保管・処理費用については、ドイツ政府が全責任を負わなければならなくなるという大きな欠点があります。
▽公益信託を選択した場合のシナリオ
原子力発電所を段階的に廃止していくために公益信託をつくるというアイデアは、決して新しいものではありません。
すでに2年前、ラザルド投資銀行はこれと似た案を作成し、公表していました。
そして脱原発運動の先頭に立ってきたグリーンピースと緑の党も、政治の場において同様の提案を行ってきた経緯があります。
緑の党やグリーンピース側の提案は、電力会社の社内留保金すべてをこの公益信託に投入する一方、原子力発電所の廃炉と核廃棄物処理に伴うリスク負担に責任を持たせるというものです。
当然のことながらE.onを始めとする各電力会社は、自社の貸借対照表の中身が、すでに放棄したはずの原子力発電所という『負の資産』にこれから何十年もの間圧迫され続けることを嫌い、こうした提案をすべて拒否しています。
電力会社自らが『不良債権』という提案を行っている背景にあるのは、社内留保金を吐きだしたり、核廃棄物処理にともなくリスクを回避するためなのです。
結局のところ、原子力発電というものが本質的に持っている歪みが、今日の事態を招いたと言うことが出来ます。
これまで何十年もの間、原子力発電を使い続けるために様々な策を用いてきた電力業界は、今やできるだけ早く原子力発電と手を切りたいと考えています。
「早くこの問題に決着をつける必要があります。」
ひとりの電力会社の役員がこう語りました。
それができるかどうかは、電力会社とドイツ政府に係っています。
原子力発電所という『負の遺産』を整理するため、双方とも何千億、何兆円もの費用負担を迫られています。
しかしこの問題に決着をつけられるのは、電力会社でもなければ、政府でもなく、また環境問題に取り組む人々でもありません。
国民全員が負担しなければならないのです。
不良債権とする・しないに関わらず、電気料金の値上げという形をとるか、増税という形をとるかの違いだけで、国民全員が莫大なコストを負担していくことになるのです。
〈 完 〉
http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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この記事は『原子力発電所は使用年限が過ぎれば、設備全体が巨大な核廃棄物と化す』という重要な事実も伝えています。
という事は現在原子力発電所が立地している日本国内の各市町村は、いずれ巨大な核廃棄物を抱え込むことになるはずです。
今宮城県では山形県と境を接する山側の3つの市町のいずれかに、福島第一原発の事故で出た核廃棄物の処分場を作ろうという国の計画が持ち上がり、地元が猛反対しています。
当たり前の話で、これらの市町村は福島第一原発の運営によってどのような経済的利益を得ていた訳でも無く、事故によって『出てしまった』廃棄物を引き受けてくれと言われても、理不尽な話だとしか思えないはずです。
こうした状況を考えれば原子力発電所によって『潤っていた」市町村が、核廃棄物の保管場所の負担という問題については、いずれその『全責任』を負わなければなくなるのでしょう。
そんな事実を認めるくらいなら、むしろ再稼働の方を認めたい、そういう事なのかもしれません。
しかし認めたくなくとも、巨大な核廃棄物と化した原子力発電所という『事実』は残ります。
その負担を負わなければならないのは、ここでも将来の世代なのです。
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【 『原子力発電所を不良債権に』、ドイツの主要電力各社が提案 】
ドイチェ・べレ 5月15日
ドイツは原子力発電の段階的廃止を決定しますが、巨額に上る原子力発電所の解体・廃炉費用について主要電力各社は、公的な負担を求めています。
これに対しドイツ政府は電力各社が責任を取るべきだとの見解を示しています。
ニュース誌デア・シュピーゲルの報道によれば、ドイツの主要電力各社は原子力発電所の解体・廃炉の責任を軽減するため、現在政府と交渉を続けています。
主要電力会社4社(E.ON、RWE、EnBW、スウェーデンのファッテンフォール)は、原子力発電事業と発電所の所有権を『不良債権』化し、公的資金による運営・整理についてドイツ政府と交渉を行っています。
この報道に対し、ドイツ政府はこの問題に関する各電力会社との話し合いが行われたことを否定し、どのような決定も行われてはいないとしています。
環境省は、原子力発電所を運営している各電力会社が、その解体・廃炉についての全責任を有していると強調しました。
電力会社の提案しているのは、これから8年間に渡り原子力発電所の解体・廃炉と核廃棄物処分について全責任を負う公的基金を設立するというものです。
電力会社側はこの基金を実現するため、すでに30億ユーロ(4,200億円)の資金を準備済みです。
「この提案は、原子力発電所のに関わる一切のリスクを、ドイツ政府に転嫁するためのものです。」
ロイター通信の記者が、この交渉に実際に加わっている匿名希望の関係者の話を明らかにしました。
この計画の存在はデア・シュピーゲルが初めて明らかにしたものですが、ドイツ政府は交渉が存在すること自体を認めてはいません。
3年前、福島第一原子力発電所の事故の発生を見て、メルケル政権は2022年までにドイツの原子力発電の段階的廃止を決定しました。
http://www.dw.de/german-utilities-want-bad-bank-for-nuclear-energy/a-17629231