集団的自衛権 民意どこに 「賛成」「反対」割れる世論調査
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2014年6月4日 東京新聞朝刊 こちら特報部:[ニュースの追跡]より 俺的メモあれこれ
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集団的自衛権の行使問題に関する報道各社の世論調査結果が大きく違っている。ある新聞に「7割容認」の見出しが躍れば、別の社は「反対が過半数」。各社の論調を反映しているようにも見える。同じテーマでこれほどの差があっては、世論調査の信頼性が損なわれることにならないか。(榊原崇仁)
◆読者回答 論調と一致? 「数字が独り歩きせぬ状況を」
「国民の理解広がる 集団的自衛権行使」。読売新聞の2日付朝刊(東京本社発行の最終版、以下同じ)の見出しである。
根拠は、読売が5月30〜6月1日に実施した世論調査だ。記事では「集団的自衛権の行使容認派が7割を超えた」と報じたほか、「邦人輸送中の米輸送艦の防護」「国際的な機雷掃海活動への参加」の回答は、賛成がそれぞれ75%と74%。行使容認に前向きな読売だけに「圧倒的な支持が示された」と強調した。
読売と同様、行使容認を支持する社説などが目立つ産経新聞も、FNN(フジニュースネットワーク)との共同調査の結果として「7割容認」と伝えた。
安倍晋三首相が解釈改憲による行使容認を目指す中、5月から6月にかけて各社の調査が相次いだ。ただし、どこも読売のような結果が出たわけではない。
朝日新聞の調査は行使容認に賛成が29%、反対が55%と慎重論が過半数。東京新聞などが5月19付朝刊で掲載した共同通信も賛成39%、反対48.1%だった。東北大の河村和徳准教授(政治意識論)は「読売の調査であれば、読売読者の回答が多く集まった可能性がある」とみる。
各社はコンピューターで無作為に作成した番号に電話して1000人あまりの回答を得た。「自分が購読してない新聞社は親近感がなく、そこの調査には応じないケースが少なくない。回答したのが読者ばかりだと誌面の論調と調査結果が一致しやすくなる」(河村氏)
慶応大の小林良彰教授(政治過程論)によると、事前に日程が決まった首長選の調査では、報道機関は外部の有識者を招き、中立的な視点を取り込んで質問の仕方を検討する。しかし、今回のような緊急調査では「時間的余裕がなかったかもしれない」と小林氏は指摘する。
質問の選択肢に注目するのは、埼玉大の松本正生・社会調査研究センター長(政治意識論)だ。
朝日や共同は行使容認に賛成か反対かの二択にしたのに対し、読売や産経は「全面的に使えるようにする」「必要最小限で使えるようにする」「使えるようにする必要がない」という3つの選択肢を示した。
読売と産経は前者2つを合わせて「賛成が7割」と結論づけているが、実は、「全面的に容認」は読売が11%、産経が10.5%にとどまる。「最小限で容認」はそれぞれ60%、59.4%だった。「集団的自衛権は一般の人にとって分かりにくく、回答にとまどう多くの人が中間的な選択肢を選んだのではないか。外交問題は是非の判断が付きにくい側面もある。小泉政権の自衛隊イラク派遣の時も社によって世論調査の結果が違った」(松本氏)
とはいえ、各社の世論調査結果に違いが出ると、それこそ世論が迷走することにならないか。松本氏は報道各社にこう求める。
「数字が独り歩きするような状況をつくってはいけない。なぜこの数字が出たのか、他の調査と何が違うのか、冷静かつ丁寧に伝えてほしい」