朴大統領は「セウォル号」沈没事故に関する談話を発表したが、韓国社会の動揺は収まらない (AP)
韓国、大手財閥に不安の連鎖拡大 負債、労災問題、爆発事故… 室谷克実氏
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140522/frn1405221140001-n1.htm
2014.05.22 夕刊フジ
韓国社会の動揺が収まらない。朴槿恵(パク・クネ)大統領が、涙を流しながら旅客船「セウォル号」沈没事故に関する国民向け談話を発表したが、不明者家族や犠牲者遺族などの反発が止まらず、社会全体が意気消沈しているのだ。こうしたなか、韓国経済を支える大手財閥でも「不安の連鎖」が拡大しているという。ジャーナリストの室谷克実氏が迫った。
悪い時には、悪いことが重なるものだ。
セウォル号沈没事故で、改めて照射された韓国社会の「日常的腐敗」、それを材料に、朴政権を揺さぶろうとする韓国左翼勢力の「棺(ひつぎ)デモ」感覚の跋扈(ばっこ)。もう、それだけで韓国の新聞は紙面がいっぱいになるだろうに、経済の中の「好調部門」を形成していた大手財閥の不安材料が次々と浮上してきた。
最大のそれは、今年1月22日付の連載「新・悪韓論」で、「スマホ不調で陰りの見えるサムスン もう1つの不安要素が…」で書いておいた、サムスン財閥の憂鬱が、とうとう現実になったことだ。
絶対の総帥である李健煕(イ・ゴンヒ)氏がついに倒れたのだ。「低温治療」「意識戻らず」と伝えられる。もはや彼が号令をかけることはないと見るべきだろう。
彼が健在な時代にも、決して一枚岩ではなかった。株式相続の問題は当面、発生しないだろうから、ゆっくりと3代目の李在鎔(イ・ジェヨン)体制に移行していくだろうが、その過程で3代目の寵愛を得ようと番頭たちが暗闘を繰り広げるだろう。北朝鮮の権力構造によく似ているのだ。
中核企業のサムスン電子は、赤字部門を即刻分社するからピカピカだが、財閥全体としてみれば、膨大な負債を抱えている。サムスン電子の半導体事業所で、白血病患者が出ている労災問題も深刻だ。
鉄鋼大手ポスコは、そもそもは国営企業だったが、いまや「民間人オーナーがいない財閥」だ。5月16日に系列46社の3分の1を売却処分することを決めた。資金調達のためだ。しかし、「財務内容の悪さ」より、プラントの経年劣化の方が大きな問題ではなかろうか。本体でも系列会社でも、爆発事故が頻発している。
今月7日には、浦項(ポハン)製鉄所第3高炉で火災が発生したのに続き、同10日にも第2高炉で、ガスバルブの交換作業中にガス爆発事故が起きた。
今年1月、インドネシアの合弁製鉄所では、完工後の高炉点火直後に事故が起きている。経年劣化だけではなく、「技術体制」(あえて『技術力』とは言わない)に問題があるのかもしれない。
現代自動車は相変わらず「大売れ、大売れ」の発表を続けているが、米モンタナ州の連邦地裁は13日、3人が死亡した交通事故はステアリングの欠陥が原因と認定し、2億4860万ドル(約252億4500万円)の懲罰的賠償を命じる陪審評決を下した。韓国内の自動車販売では、輸入車がジリジリと比率を上げている。
「堅実な財閥」とされてきたLGにも火がついた。LG電子製のスマホが充電中に爆発し、1人が死亡したのだ。韓国でスマホを製造する企業といえばサムスンとLGなのに、韓国紙は「L社のスマホ」と匿名報道だ。これは財閥とマスコミの“複雑な関係”の故だろうか。
韓国の不安の連鎖は、これだけではない。ソウル市の地下鉄で列車が追突したのを筆頭に、ソウル火力発電所で爆発火災があったり、空軍戦闘機が地上滑走中にミサイルを落下させたり、同国中部の牙山(アサン)市で建設中の7階建てビルが傾いて倒壊するなど、信じがたい事故が続発している。
後世歴史家は、セウォル号沈没は、韓国沈没の先触れだったと位置付けるかもしれない。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「日韓がタブーにする半島の歴史」(新潮新書)、「悪韓論」(同)などがある。