http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140516/ecn1405161140005-n1.htm
2014.05.16
消費税増税に伴う消費減は「想定内」で夏場以降は回復に向かうとの楽観論の一方で、景気の先行きを示すはずの株価はこの1月以降、下落局面が続いている。いったい、どちらを信じるべきなのか。
筆者の答えは「どちらも信じるな」、である。
まず、消費税増税がもたらす消費マイナス効果。消費税率アップ分を含め物価が前年比で3%以上、上昇する中で、全産業で賃上げ率が1%にも満たない状況で、消費が増えるというのは奇跡でも起きない限り無理なのは小学生でもわかることだ。
「マクロ」(経済総体)で見れば、年間480兆円程度の国内総生産(GDP)のうち家計消費が6割を占める。その家計の負担増は増税と社会保険料引き上げ、公共投資削減の合計分だけで10兆円を超す。昨年1年間で増えたGDP4・6兆円の2倍以上の有効需要を政府は家計から召し上げる。産業界は3月から新規求人数を減らす動きを見せている。雇用情勢が悪化に転じると、家計はますます萎縮するだろう。
株価のほうはどう考えるべきか。株価が景気実体を反映するというのは、あくまでも一般論であり、今の日本に当てはまるわけではない。
本グラフが示しているのは、昨年末まで米ダウ工業株30種平均に同調してきた日経平均株価がこの1月から剥離(はくり)して下落基調に転じたことである。日本の企業収益や実体景気の上昇基調とも大きくかけ離れている。日本の株価は日本の景気指標では決まらないのだ。
日本株価を決めるのは、株式売買シェアの6、7割を占める「外国投資家」であり、本拠は米国、すなわちニューヨーク・ウォール街である。ならば、ウォール街の主役である投資ファンドの日本株売買判断基準こそが決め手になる。かれらの投資手法はコンピューターによる自動売買である。そのプログラムはドル建てで計算し、全保有株式に占める日本株のシェアを固定するしかけになっている。
筆者の計算によれば、米国の投資家の保有海外株式シェアは昨年を通じて18%前後で推移し、その海外株に占める日本株のシェアは昨年初め8%だったのを、4月以降9%台に引き上げ、今年1月までほぼ同水準を保ってきた。ドル建て換算で日本株の保有シェアを一定に保つためには、円安または米国株高で日本株を買い、逆の場合は売りとなる。
円安が一段落した1月以降は、米株価が日本株の決定要因になるが、米株価に対して日本株価はついていけなくなった。投資ファンドが運用資産中の日本株の保有比率を引き下げ、売り浴びせたのだ。
日本売りのもっともらしい「理由」は証券アナリストたちによって、何とでもつけられる。「規制緩和など成長戦略が不十分」というのが特に多いが、しょせんは売り抜けるための口実に過ぎない。強欲がらみの野次を気にせず、安倍政権は追加増税をやめ、脱デフレの道を自力で成し遂げる決意を示すべきだろう。 (産経新聞特別記者・田村秀男)