海外の見方と差を生じる日本
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52582292.html
2014年05月02日 在野のアナリスト
連休の谷間を狙ったように『TPP、実は合意』という記事がでてきました。しかも関税は維持されるものの、輸入枠が増えるため結局、国内のパイが食われる米など、関税の大幅引き下げを向かえる牛、豚。打診的に報じられてきたことそのままであり、自動車に至っては安全基準の引き下げまで、米の言いなりという印象です。しかも以前から指摘しているように、オバマ政権は全権委任されていないので、議会で「より厳しい条件を」という話になれば、ひっくり返される恐れもあります。
一部で、TPPは保留(Pマーク)だったが、尖閣は初めから声明に盛り込まれていたので、交渉材料ではなかった、と報じるところもありますが、TPPで合意できなければ、声明そのものがPマークになりかねなかったのですから、交渉材料で間違いありません。以前も指摘したように、先に「尖閣に安保適用」という言質をとったことだけが今回の成果であって、中身は完全敗北の状態です。
安倍首相は欧州歴訪で、原発稼動に意欲を示します。しかし欧州の記者からは疑問として呈されており、それに安倍氏は「日本は電力を輸入できない」と理由を述べます。ただし火力につかう重油、ガスも輸入なら、再処理がすすまない以上、ウラン燃料も輸入です。説明になっていません。しかも、経済効率という話もできない。なぜなら、独国など経済効率性で原発政策を見直しているからで、下手な説明は墓穴を掘ってしまうのです。独国は、何も電力を輸入できるから原発の停止を決めたわけではない。輸入した方が都合がいいので、そうしているだけなのです。
日本では盛んに韓国の旅客船沈没事故を報じますし、今日も韓国では地下鉄で事故もありましたが、世界の主な関心は日本ではあまり報じられないウクライナです。今回特徴的なのは、親露派の動きが暴力的なことです。デモをする権利は国民にありますが、重要施設を占拠したり、デモをする側を襲撃したり、欧州の監視委員を拘束したり、装備も含めて親露派はやりたい放題です。これは親露派がウクライナでは少数であることを示すと同時に、仮に独立や併合になっても恐怖政治、暴力政治でしか統治できないことを示すのです。これは将来的にも、親露派の動きが世界は受け入れない、だからさらに暴力的にならざるを得ない、ということを表しているのです。
全面戦争にはならずとも、ウクライナは当面、親露派がテロ組織化していく恐れとともに推移を見守らなければなりません。そしてそのとき、露国がテロ支援国となるのか、それは対露制裁にどういう形で影響するか。そうした情勢を、詳しく伝えるメディアはほとんどありません。残念ながら、政府と一体化したメディアでは、プーチン大統領との個別の信頼関係を崩さないため、それ以外の情報に埋没させ、ウクライナ問題を矮小化してしか報じていないのです。
経済も、原発も、そして海外情勢でさえも、日本だけが今、世界とは異なる見方、価値観をメディアから押し付けられている。それはとても危険なことなのです。集団的自衛権にしろ、米国は負担を日本におしつけられるので当然、好意的ですが、では欧州、アジア、アフリカの見方は? ほとんど報じられません。いつの間にか、国民は安倍政権からアベット(教唆)され、世界のアベレージ(標準)から外れる、ということになりかねなくなるのでしょうね。