外食、縮む夜間営業
マクドナルド 24時間店を2割減 すかいらーく 閉店時間繰り上げ
日本マクドナルドは年内に、約1800店ある24時間営業の店舗を2割弱減らす。朝型の生活スタイルが広がり来店客が減っているため、24時間店の縮小で収益改善につなげる。すかいらーくはファミリーレストランの深夜営業店の3割弱で閉店を平均2時間繰り上げた。人件費などコスト上昇による収益悪化もあり、深夜営業を見直す動きが外食産業で広がってきた。
マクドナルドの24時間営業店は、2013年末時点で全体の6割弱に当たる1840店。郊外店を中心に「午前7時〜午後11時」などのように営業時間を短縮し、14年末に約1500店まで減らす。開店・閉店時間は立地場所に応じて変える。
マクドナルドは消費者の利便性にこたえるため06年から24時間営業店を積極的に増やしてきた。ここ数年は1800店前後を維持してきたが、「深夜の来店客が減っている地域がある」(同社)ため、規模縮小に踏み切る。都心部など深夜需要の高い地域では24時間営業店の出店も続ける。
同社は他の外食やコンビニエンスストアなどとの競合が激しく、直近12カ月のうち9カ月で既存店売上高が前年実績を下回っている。
ファミレス各社も相次ぎ夜間の営業時間を短縮している。最大手のすかいらーくは「ガスト」「ジョナサン」など約3000店のうち、約2300店で午前0時以降の深夜営業を実施しているが、13年初めから見直しに着手。これまでに約620店の閉店時間を午前2〜3時などにして平均2時間繰り上げた。この1年間で1億数千万円のコストを削減できたという。
ロイヤルホールディングスが運営する「ロイヤルホスト」も11年1月に58店あった24時間営業店を19店まで減らした。ロイヤルホストの矢崎精二社長は「深夜営業を縮小する代わりに、売り上げが伸びているディナーを強化する」と話す。
販売機会のロスにつながりかねない夜間営業の短縮に踏み切るのは、若い世代を中心に消費者のライフスタイルが夜型から朝型へと変わってきているためだ。
モスフードサービスは4月、ハンバーガー店「モスバーガー」のほぼ全店の開店時間を午前7時にした。従来は午前9時や10時に開店する店舗もあった。それにあわせて一部店舗は午前0時以降だった閉店時間を午後11時などに繰り上げた。会社員やシニアの朝食需要を取り込むのが狙い。新商品の導入効果もあって4月の朝食時間帯の売上高は前年同月より3割強増えたという。
人件費や光熱費、原材料価格などが上昇し、コスト負担も重い。人材サービスのインテリジェンスによると、飲食店で働くアルバイトの3月の平均募集時給(全国)は942円と前年同月比1.1%高い。深夜は割増手当がつくため、東京都内の深夜の時給は1000円を超える。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの不破慎介シニアコンサルタントは「少人数で運営する深夜は複数業務をこなせる店員が必要だが、時給を割高にしても優秀な人材が集まらないケースが出ている」と指摘する。
原材料では輸入牛・豚肉の値上がりも目立つ。米国産バラ肉(ショートプレート)の冷凍品の卸値は前年比25%高い。
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働く若者、朝型にシフト
朝型生活といえば、まず高齢者が思い浮かぶ。スーパー各社が開店時刻を早めているのは高齢者を取り込むためだ。ただし、今の「消費の朝型シフト」には、もうひとりの主役がある。20代、30代の若手社会人だ。
森永製菓が昨年、東京都心で働く女性の若手社会人に聞いたところ「以前より朝型になった」人が43.4%と「夜型になった」(24.8%)を大きく上回った。61.7%が朝に運動や勉強などの活動をすることに興味があるとも回答している。
またアサヒ飲料の調査によれば、男性の若手社会人の多くが朝型人間に「健康で仕事ができる」イメージを持つ。夜型人間はその逆だ。39.0%が何らかの形で始業前の時間を活用しているという。健康志向と向上心が若者の目を朝に向けさせている。
かつて若者には就業後の夜こそ、酒や食事を通じ友人らとじっくり交流するための時間だった。携帯電話とネットがある今、顔を合わせる必要性は薄れた。宴会でも食事と酒、カラオケを1カ所で済ませ、短時間で解散する傾向が強まる。
出勤前にきちんとした食事を取り、運動し、勉強会で自分を磨き人脈を作る。夜は家族と過ごすか、ネットで情報収集や趣味を楽しむ。そんなライフスタイルが広がる。
伊藤忠商事が夜間の残業を原則禁止して朝型勤務を促すなど、仕事の場でも意識の変化を生かす動きが出てきた。バランスのいい食事やコミュニケーションの場の提供など、新たな朝型生活者を狙う企業の動きは今後も増えそうだ。
(編集委員 石鍋仁美)
[日経新聞5月3日朝刊P.13]