中国のGDPが今年米国を追い抜くかもしれないと報じる米公共放送
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ogasawaraseiji/20140502-00034988/
2014年5月2日 11時27分 小笠原 誠治 | 経済コラムニスト
冒頭から英語を出して恐縮なのですが‥次の英文を見て、どのように感じるでしょうか?
China Could Pass U.S. As Top Economy This Year
「中国は、今年、世界一の経済の米国を抜くことができた」
could は、can の過去形。canは「できる」という意味なので、couldは「できた」。だから、上のような訳になる、と。
でも、それは、ブー!
上の英文は、「中国は今年、世界一の経済の米国を抜くことができるかも」という意味なのです。
いずれにしても、米国の公共ラジオ放送のnprが、そのようなタイトルでニュースを報じているのです。
2010年に日本を追い抜き、GDP世界第2位の座に就いた中国。負け惜しみをいう訳ではありませんが、中国の人口は日本の10倍もある訳ですから、GDPで日本が中国に抜かれたとしても、それほど不思議なことではないのです。そして、その中国は、米国と比べても人口が4倍ほどある訳ですから、いずれ米国のGDPを追い抜いてもこれまた不思議なことではないのです。
中国が日本のGDPを追い抜いたといっても、1人当たりGDPでみれば、中国は日本の1/10の水準にしか過ぎないのです。そして、中国が米国を追い抜いたとしても、1人当たりGDPでは、米国の1/4の水準にしか過ぎないのです。
しか〜し‥
そのようなことがよく分かっていても、それでも中国が米国のGDPを追い抜くとなれば、米国にとってはショックなのでしょう。だから、こうしてニュースになるのです。それに、米国が中国に世界一の経済大国の座を渡す日がこんなに早く来るなんて!
そうでしょう?
何故、こんなにも早く中国が世界一の経済大国になろうとしているのか?
ここに来て中国の成長のスピードが加速しているのか?
事実は、その逆なのです。皆さんご承知のように、中国の成長率は少しずつ落ちているのです。
では、何故今年中国は世界一の経済大国になるかもしれないと、nprは報じたのでしょうか?
実は、世界銀行が、中国のGDPをドル建てに換算する場合、実際の市場レートではなく購買力平価で換算するならば、今年中に中国のGDPが米国のGDPを追い抜く可能性があると発表したからなのです。
確かに各国のGDPを比較する場合、市場レートを絶対の基準と考えていいかどうかは疑問であるのです。何故ならば、物価の安い国では同じ1ドルで購入できる食料の量も多い筈なので、市場レートで換算したGDPが小さくても、実際には思った以上に豊かな生活を送ることができるからなのです。
ということで、世界銀行は、購買力平価で換算したGDPについて言っているようなのですが‥
でも、nprは言うのです。中国は人口が多い、と。幾ら一国のGDPの規模が米国と同じようになっても、1人当たりのGDPは比べものにはならない、と。具体的に言えば、2011年の1人当たりGDPは世界で99位であって、エジプトよりも貧しい、と。
米国が世界1位の座を守りたいという気持ちはよく分かります。確かに、中国は、1人当たりのGDPでみればまだ貧しい国だと言うべきなのかもしれません。
しか〜し‥その中国が米国債を大量に保有しているのです。
GDPで米国が中国に抜かれるなんて、まだあり得ない!
抜かれたとしても、1人当たりGDPでは中国は貧しい!
そう思いたい米国なのですが‥そんな中国に借金を負っている米国!
米国が中国の意向を無視できないのは当然なのです。
以上