費用が全国で大幅下落 様変わりする「葬儀」
http://gendai.net/articles/view/life/149744
2014年4月24日 日刊ゲンダイ
「現代葬儀考」という著書が話題になっている。著者でジャーナリストの柿田睦夫氏が、旧来の葬儀形式が大きな変化を見せ始めている背景をこう分析する。
「2000年を境に葬式の形式が多様化してきました。理由は、貧富の格差が広がり、葬儀の出来ない人が増えたこと。あわせて葬儀業者の競争が激しくなり、格安競争が始まったこと。また、葬儀そのものの価値観についても見直されてきたことです」
実際、「日本消費者協会」が発表した「葬儀についてのアンケート調査」の結果は衝撃的だ。この15年間で、「葬儀費用が163万円も下落」したのは山梨、長野、岐阜、静岡、愛知。埼玉、東京、神奈川の地域は「128万円の下落」。東北6県は「89万円の下落」で、全国平均でこの15年間、48万円も減少した。
また、「葬儀をした場所」も大きく変わった。「自宅」6.3%(19.4%=15年前、以下同)。「葬儀専門式場」81.8%(56.1%)、「寺院、教会」7.6%(16.4%)、その他になっている。葬式の形式については、「仏式葬儀」91.5%(95.2%)、「無宗葬儀」4%(0.9%)だった。
■葬儀の形式は自由
こうしたアンケートから浮かび上がる「現代葬儀考」の特徴は、費用をかけない質素・簡素化だ。
3年前の秋、父の葬儀を出した埼玉県さいたま市在住のAさん(62=無職)は、お通夜、告別式を合わせて400万円を超える費用がかかった。葬儀費(葬儀専門式場)、飲食接待費、寺院(僧侶)費用がその主な支払先だ。
「400万円の半分は、戒名代として僧侶に支払いました。戒名には居士が欲しいという父の遺言でしたが、戒名代は高すぎたと、今でも思っています」(Aさん)
今年1月、母親の葬儀を出したBさん(50=都下在住)は「密葬」である。僧侶を招かない「無宗教」で、葬儀も自宅で行い、焼香は身内と少数の親族だけで済ませた。地方に住む高齢者の縁戚には連絡をしなかった。戒名も位牌(いはい)もない。かかった費用はひつぎや火葬場への支払いなど、30万円にも満たなかったという。
「生前、母は葬式は家族だけでいいから、と言っておりましたので、そのようにいたしました」(Bさん)
同じ親の葬儀でも、この費用の落差がすごい。
葬儀は、法律行為ではなく、どのような形式を選択しようとも自由である。家族葬(密葬)、音楽葬、花壇葬、仏式、神式とさまざまだ。前出の柿田氏が言う。
「葬式の大原則は、死んだ本人は何もわからないということ。葬式の主体は残された家族です。どんな形式にしても、心の整理がつくような葬式が望ましい。金銭の負担をかけることなく、音楽葬でも密葬でもいいから、やってよかったなと、印象に残る葬式が一番ですね」