セシウム50〜100ベクレル検出の福島産米は「準汚染米」か「安全米」か(FGW)
http://financegreenwatch.org/jp/?p=42787
4月 6th, 2014 Finance GreenWatch
他のネットで本FGWの記事が、やり玉にあがっていることに最近気づいた。福島県産の米のうち、セシウム含有量が50〜100ベクレルのものを「準汚染米」と表記したことへの批判だ。
「ベストアンサーを求める」サイトで、「福島産『準汚染米』って何ですか?」という質問に対し、選ばれた答えは「福島産の米を買ったときにその準汚染米とやらを引き当ててしまう確率は0.008%だし、その米を食べた所で被曝量は年0.1mSvにも及ばないのだから『準汚染米』なんて言葉で恐怖をあおるのはどうかと思うね」というもの。
放射性物質の食品基準は1kg当たり100ベクレルとされている。それ以上のセシウムが検出されると、米も魚も野菜も出荷制限される。ところが福島の米の場合、この基準を1ベクレルでも下回ると市場に出荷している。ベストアンサーさんは、50〜100ベクレルの米に出くわす確率は0.008%だから心配することはない、という。本当か。
福島県は米の全量検査(スクリーニング検査)をして、そこで50〜80ベクレル以上の数値が出た時にはゲルマニウム検査機による詳細検査詳細検査を実施する。0.008%というのは、これらすべてのスクリーニング対象米を分母とした数字だ。詳細検査対象は福島県が公表している平成25年産米の場合、692件。そのうち基準超過(100ベクレル以上)は28件(4%)で、これらは出荷停止された。ところが、50〜100ベクレルとなった595件(86%)は出荷されている。問題は詳細調査の案件は、対象米全体に点在しているのではなく、特定の田んぼに集中する点である。図は昨年10月に公表された詳細調査結果の一部である。46番の米は出荷停止となったが、他は出荷OKとなった。
ところが、これらの米はいずれも同じ田んぼから収穫されたものである。それぞれ30kgの袋に入れて別々に検査した結果、数値の差が出た。46番の米を「汚染米」と呼ぶ。では、それ以外は「安全米」と言えるのか。49番のように99ベクレルの場合もある。問題はまだある。福島県はこれらの50〜100ベクレルの米を出荷する際、図のようなラベルを添付する。しかし、50ベクレル以下だったのか、50〜100だったのかは消費者にはわからない。詳細検査の対象となったこともわからない。
こうした形で福島米が流通していることを知っている消費者の中には、安全度の高い福島米についても敬遠する向きがある。同県の出荷基準が「100ベクレルか、それ以外か」に二分されているからだ。
同じ食品でも水産物は多少異なる。米と同様に50ベクレル以上のセシウムが検出された場合、自治体が詳細検査を実施する。しかしその際に、100ベクレルにならなくても、100に近づく状態なら出荷自粛措置がとられることもある。話題を集めたのが、今年3月に群馬県の赤城大沼でのワカサギの自粛措置を巡る県と国(水産庁)の意見の違いだった。群馬県は、同沼でとれるワカサギのセシウム量が100ベクレルを下回っているとして、それまでの出荷自粛要請を解除した。これに対して水産庁はセシウム量が82〜100ベクレルで推移していることから、出荷自粛を再度、県に求めたという。http://mainichi.jp/feature/news/20140321k0000e040209000c.html
米は、同じ田んぼから収穫した米を任意に詰めた30kg袋のセシウム濃度が、基準から1ベクレルでも下回っていると、出荷される。全量を対象とした0.008%のうちの一袋として扱うのが望ましいのか。それともセシウム濃度が高い特定の田んぼの“準汚染米”として見るべきではないのか。その選択は、消費者が行えるべきだが、福島県の現状のシステムでは、消費者にはこうした情報が伝わらない仕組みになっている。
福島県や同県の米農家を批判するのがFGWの本意ではない。しかし、50〜100ベクレルのセシウムが検出されている米を、その事実と情報を消費者に伝えずに、出荷している状況を無視することはできない。本来、福島県や同県の農家は、東京電力によって汚染された田んぼや畑を徹底的に除染し、それに伴うすべての費用は当然だが、農地が安全に回復するまでの間の経済的逸失利益も、原因者企業に請求するべきである。”準汚染米“と言われるのが不快なら、そうした米が一粒も収穫されない田んぼへの完全回復を目指すべきだろう。請求に対して東電が逃げるようだと国に強く要求し、訴訟も厭わない断固とした姿勢をとることが消費者の理解と支援につながるはずだ。
そうではなく、安全度に疑念が出る数値が検出される米を、「消費者はわからない」かのように、そのまま市場に出荷する現行の体制を続けていると、福島県自体が風評解消の阻害しているのと変わらない。消費者は見ている。(FGW)