残業制限はサラリーマンの生活を変えそうだ(写真と本文は関係ありません)
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140326/ecn1403261801005-n1.htm
2014.03.27
これは、大きなニュースではないが、味わい深い。精密機器大手のリコーが、社員の午後8時以降の残業を原則として禁止することを決めた。8時を過ぎて残業するには、事前に申請して承認を得る必要があるとのことだ。
かつて、評論家の小室直樹氏が「資本主義の本質は〆切りにある」と述べた。真意を直接伺ったわけではないが、期限のない契約は無意味だし、期間がないと利回りが計算できない。そして、人は、〆切りまでに仕事を仕上げようと努力する。
午後8時という絶妙な時間設定も含めて、これは効果的なマネジメントだと筆者は思う。
まず、毎日の勤務時間に〆切りがあることによって、仕事を時間内に終わらせようとする。仕事のスピードアップ効果が生じるだろう。
時には制約になることがあるとしても、多くの場合プラス効果の方が大きいだろう。
朝から午後8時まで集中して働くと、本来相当な量の仕事ができるはずだし、疲れもするはずだ。仕事が毎日続くことを考えると、余裕のある時間に帰宅して、十分睡眠を取った上で働いてもらう方が、会社にとってプラスだ。寝不足の脳と睡眠が足りた脳のパフォーマンスには大差がある。
加えて、〆切りがあることによって、いらない仕事をしないで済ませようとする。仕事の取捨選択が強化される。
一般に、仕事の進め方で重要なのは「重要な仕事からやる」プライオリティ(優先度)の設定だ。「毎日、会社から帰る前に、翌日やるべき仕事を6つまで(6つ以上だとそもそも多すぎる)優先順位を付けてメモに書き出し、その通りに実行せよ」という方法論が自己啓発書などでは有名だ。
午後8時までという制約を意識すると、処理すべき仕事の選択と順番を、多くの社員が考える。
ビジネスマンは、よく考えると「やらなくてもいい仕事」(例:出席しなくてもいい会議)をしている。これを省くことの効果も大きい。
もちろん、仕事によっては、連続的にまとまった時間が必要であったり、どこまでやれば完成するのかが読めなかったりするものもある。しかし、こうした仕事でも、仕事に細かな区切りや中間目標を設定することが有効な場合が多い。
筆者自身が原稿書きのような仕事をしながら痛感することだが、時間の〆切りを伴う中間目標を適切に設定できると、仕事の能率が上がる。
勤務外のメリットもある。毎日午後8時には仕事が終わる見込みが立つなら、社外の相手を含めて、仕事の後に会う約束をする上で好都合だ。スポーツや外国語の勉強のような予定を入れることもできる。デートの時間も約束できる。
そして、会社は人件費を節約できるのだ。 (経済評論家・山崎元)