<汚染水>期待のALPS不調で処理停止 県に焦り
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140323-00000017-mai-soci
毎日新聞 3月23日(日)17時22分配信
東京電力福島第1原発で、汚染水処理の切り札として期待される多核種除去装置「ALPS(アルプス)」が、処理不調により18日から停止している。ALPSの停止は事故収束に向けた工程への影響が大きく、詳細な原因も特定できていない。事態を重く見た福島県は20日、東電に早期の原因究明などを申し入れた。【高橋隆輔】
■3系統とも停止
アルプスは、トリチウム以外の62種類の放射性物質を取り除くことができる装置で、昨年3月から試運転を続けてきた。ABCの3系統あり、1系統で1日最大250トンを処理でき、通常はほとんどの核種が検出限界値未満になる。
ところが、17日にB系統で処理された水から、ベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり1400万ベクレル検出された。18日正午ごろにB系統を停止するまで汚染水数百トンが貯蔵タンクに送り込まれ、すでに入っていた処理済みの水約1万4000トンが再汚染された。異常の原因はまだ分かっていない。
また、処理後の水を一時貯留するタンクは3基あるが、3系統で処理された水はひとまとめにして送り込まれる。このため、汚染された一時貯留用タンクを除染するために異常のないA、C系統まで停止せざるを得ず、現在処理は完全に停止している。
■高まるリスク
アルプスのトラブルは直接環境に影響しないが、汚染水の処理がストップすることは、結果的にさまざまなリスクを生む。
まず心配されるのがタンクの置き換え計画への影響だ。東電は現在、ボルトで締めるフランジ型タンクから、漏えいリスクの低い溶接型タンクへ置き換え、さらにタンクの数を増やす作業を続けている。その際、新しいタンクには、処理後の水だけを詰めている。
しかし、今回のトラブルで、使い始めたばかりのタンク21基を汚してしまった。東電は「工程への影響はない」としているが、当該タンク群は、汚染水用に変更するか、すべて除染するか、いずれかの対応が必要になる。どちらの対応を取るかも現時点では決まっておらず、本当に影響が出ないかはまだ分からない。
2月末時点で、タンクの容量は約1000基で49万トンあるのに対して、蓄積された汚染水は約45万トン。昨年11月には、傾いたタンクの容量ぎりぎりまで移送した結果の汚染水漏れも起きており、タンク容量の逼迫(ひっぱく)は漏えいリスクとの背中合わせを意味する。
また、汚染水の放射性物質濃度の高さは管理上のリスクにもなる。漏えい時の環境への影響が大きくなり、ベータ線が鉄板で反射した際に発生するX線が作業員の被ばく量も増やしてしまう。東電が2014年度内にすべての汚染水を処理する計画を掲げているのはこのためだ。
目標達成にはアルプスのフル稼働が最低条件。東電は問題のなかった2系統を週明けにも再起動する方針で対応を急いでいるが、県原子力安全対策課の担当者は「アルプス不調の原因が根本的なところにあれば停止は長引いてしまう」と心配する。
事態を受け、県は早期に原因を究明し、影響を最小限にするために一刻も早い再稼働やサンプリングの回数を増やすことなどを東電に申し入れ、関係課長による会議も開いた。県原子力安全対策課の渡辺仁課長は「アルプスはいろいろな計画への影響が大きいので、情報を共有して対応に備えたい」と話している。