大勢の学生がつめかける合同説明会。企業側も多様な取り組みが必要だ
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140312/ecn1403121759006-n1.htm
2014.03.13
ニコニコ動画などで有名なIT関連企業、ドワンゴは、同社を志望する学生から受験料を取る方針を打ち出した。選考対象を、真剣に入社したいと思っている学生に絞り込みたいとの意図だったのだろう。
厚労省から「学生のチャンスを狭めるので好ましくない」との指導を受けたようだが、このやり方はなかなかうまくできていると思う。相対的に同社への就職に真剣な学生を集めるスクリーニングとして機能する。
現代の就活は、学生がエントリーシートをインターネットで会社に送るところから始まる。1人の学生が100枚以上のエントリーシートを送ることもあり、人気企業は大量のエントリーの処理に追われる。次の選考プロセスに進める学生の絞り込みを専門業者に依頼する会社も少なくない。現実的には、単に広く募ることが、真剣な学生の就職チャンスを広げているのかは疑問だ。
企業では選考に手間とコストが掛かる。それなのにドワンゴの場合、学生から集まったお金は寄付したということだから、入試の受験料を商売の種にしている大学よりもよほど良心的だ。何の問題もないと筆者は思う。
企業の新卒採用は、企業によってもっと自由であっていいと思う。たとえば経団連加入企業で、「倫理憲章」あるいは「採用選考に関する指針」に署名した企業は、罰則がないとはいえ、一定の時期まで選考活動の解禁を待つなど、ある程度一律に採用活動を行う。
選考活動が前倒しになると、学業がおろそかになりやすいという大学側の意向に配慮したとされているが、これは無意味で有害だ。企業にとって重要な人材採用において、競争を回避して「談合」しているに過ぎない。
内定を早く確保すれば安心して学業に励むことができるという学生もいるだろう。いわゆる「青田買い」も大いに結構だ。
本来、大学に4年も行くのが無駄な学生も少なくあるまい。
あるいは、企業が早い段階で学生を確保して、学費を払うような関係があってもいいのではないか。採用活動の自由化は、企業と学生の関係について、新しい工夫を生む可能性がある。
もちろん、学業を終えてから職を探す学生がいてもいい。企業も常に採用にオープンなのが本来の姿だろう。
ソフトバンクは2016年入社社員から通年採用の意向を発表したが、これは極めて正しい。
企業は、新卒一括採用にこだわり、同期入社人材をまとめて扱うような雑な人材マネジメントを標準としない方がいい。一人一人を個別に見て、異なる使い方をすべきだ。
新卒の採用は、時期もやり方も企業の自由であっていい。人が大切だと本当に思うなら、企業は人材採用でも、もっと真剣に競争するといい。(経済評論家・山崎元)