天皇陛下の言葉、「智恵子」、そして伊丹万作の論評
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★孫崎享氏の視点ー<2014/01/01>★ :本音言いまっせー
日本は今、曲がり角にある。
それを示す言葉の一つが、80歳の誕生日における天皇陛下の言葉である。
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戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。
(略)
今後とも憲法を順守する立場に立って、事に当たっていくつもりです。
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天皇陛下の言葉はまさに日本の現状に危機感をもっての発言と思う。
「平和と民主主義を、守るべき大切なものと位置付けた」「そして憲法を作った」その離脱を図る日本はこの国をどうしようとするのかという思いと思う。
そして象徴的なのは公益の放送局たるNHKが「NHKニュース」を見る限り、「日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り」の部分を除き報じた点にある「日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り」と発言したのに注目した。安倍首相のNHK支配が強まり、憲法改正を図り、「平和と民主主義」から逸脱する日本にNHKは危機感を持つどころか助長の側に立っている。そこまで日本のマスコミの危機がある。
こうした中で「報告(智恵子に)」高村光太郎著『智恵子抄』を読んでみよう。
日本はすつかり変りました。
あなたの身ぶるひする程いやがつてゐた
あの傍若無人のがさつな階級が
とにかく存在しないことになりました。
すつかり変つたといつても、
それは他力による変革で
(日本の再教育と人はいひます。)
内からの爆発であなたのやうに、
あんないきいきした新しい世界を
命にかけてしんから望んだ
さういふ自力で得たのでないことが
あなたの前では恥しい。
あなたこそまことの自由を求めました。
求められない鉄の囲かこひの中にゐて、
あなたがあんなに求めたものは、
結局あなたを此世の意識の外に逐おひ、
あなたの頭をこはしました。
あなたの苦しみを今こそ思ふ。
日本の形は変りましたが、
あの苦しみを持たないわれわれの変革を
あなたに報告するのはつらいことです。」
自分の手で獲得したので獲得したものでない、「平和と民主主義の国家」これが今、日本からこぼれようとしている。
そあいて今一つ伊丹万作著「戦争責任者の問題」がある。
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多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。みながみな口を揃えてだまされていたという。
私の知つている範囲ではおれがだましたのだといつた人間はまだ一人もいない。(略)
「だまし」の専門家と「だまされ」の専門家とに劃然と分れていたわけではなく、いま、一人の人間がだれかにだまされると、次の瞬間には、もうその男が別のだれかをつかまえてだますというようなことを際限なくくりかえしていたので、つまり日本人全体が夢中になつて互にだましたりだまされたりしていたのだろうと思う。
(略)
このことは、戦争中の末端行政の現われ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオのばかばかしさや、さては、町会、隣組、警防団、婦人会といつたような民間の組織がいかに熱心にかつ自発的にだます側に協力していたかを思い出してみれば直ぐにわかることである。
(略)
このことは、過去の日本が、外国の力なしには封建制度も鎖国制度も独力で打破することができなかつた事実、個人の基本的人権さえも自力でつかみ得なかつた事実とまつたくその本質を等しくするものである。
(略)
そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配者にゆるした国民の奴隷根性とも密接につながるものである。
それは少なくとも個人の尊厳の冒涜ぼうとく、すなわち自我の放棄であり人間性への裏切りである。また、悪を憤る精神の欠如であり、道徳的無感覚である。ひいては国民大衆、すなわち被支配階級全体に対する不忠である。
我々は、はからずも、いま政治的には一応解放された。しかしいままで、奴隷状態を存続せしめた責任を軍や警察や官僚にのみ負担させて、彼らの跳梁を許した自分たちの罪を真剣に反省しなかつたならば、日本の国民というものは永久に救われるときはないであろう。
(略)
「だまされていた」といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。
いや、現在でもすでに別のうそによつてだまされ始めているにちがいないのである。」
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日本人が「自ら騙される」という道から脱せるか。
原発、TPP,集団的自衛権、秘密保護法、さまざまな試金石がある。