政権による社会的抹殺を助長する特定秘密保護法[高橋乗宣の日本経済一歩先の真相]
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2013/11/22 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
参院選の争点にもならなかった特定秘密保護法案が、ロクな審議もされないまま成立しそうだ。この間、多くの国民はアベノミクスの打ち上げ花火に目を奪われていた。改憲をめぐり、「知らないうちに変わっていたナチスの手法を見習えばいい」と強調したのは麻生副総理。
国民に騒がれないよう静かに進めればいいとの主張だったが、この法案をめぐる動きを見ていると、ナチスのやり方を実践しているようだ。
メディアでは、「国民の知る権利が損なわれる」といった警戒感が目立つ。それも確かだろう。法案には、「その他」という表現が36回も出てくるそうだ。合法的に隠される秘密は無限に広がる恐れが強い。「テロに狙われている」と規定すれば、福島原発の情報も「特定秘密」になる。「高濃度の放射性物質が漏れている」と公表すれば、懲役を食らうわけだ。知る権利など、お題目に過ぎなくなる。
それよりも恐いのは、政府に都合の悪い意見を言う人たちが、社会的に抹殺される恐れがあることだ。
10年以上前、ある経済の専門家が突然メディアに出なくなった。犯罪を犯したわけでもなければ、自ら引退を決めたわけでもない。活躍の場を与えられなくなったのだ。通信社や商工会議所が主催する講演にもお呼びがかからなくなった。その結果、表舞台からパッタリと消えたのである。
その人物は、政権を批判するスタンスを取っていた。どうやらそれが、ときの政権にとって都合が悪いとなったらしい。
なんでも陰謀で片づけようとするのは好きではないが、知り合いの役人によると、日本には政権批判する勢力をパージする仕組みがあるという。歯に衣着せぬ物言いが目障りになり、活躍の場を奪われた可能性が高いようだ。
こうした下地がある中で、特定秘密保護法が施行されればどうなるか。特定秘密によって、勝手に「テロに関わっている」と判断されれば、家族や友人まで監視される。最終的に地位を失うこともあるだろう。それによって不利益を被ったとしても、名誉を回復する方法はない。裁判を起こしたところで、政府が何をやったかは秘密にされるのだ。60年後に、そうした事実が明らかになったところで、失われた時間を取り戻すことができるわけではない。
このままでは、自らの考えに基づいて表現したり主張したりして生きていくという民主主義の原点が失われるだろう。