生活保護受給者を支援する団体は“決着がつくまで”、毎日国会前で座り込みを行う。=13日、永田町 写真:島崎ろでぃ=
生活保護法改悪 受給者「年寄りにひどい仕打ちだ」
http://tanakaryusaku.jp/2013/11/0008197
2013年11月13日 20:45 田中龍作ジャーナル
この国は弱者にとっての最後のセーフティーネットまで奪うのだろうか。生活保護法改正(改悪)案がきょう、参議院本会議で賛成多数により可決し、衆院に送られた(参院先議だった為)。反対議員はわずか16人。
きょう参院会館で開かれた「改悪反対集会」で生活保護受給者の声を聞いた。
生活保護受給者の吉田広昭さん(50歳・荒川区在住)は「8月から給付額を下げられた。食費がとにかく高い。何を削っていいかわからない」と訴える。
吉田さんには寝たきりの父と脳内出血を起こした母がいる。両親の入院費をサラ金から借りて自己破産し、職場ではリストラにも遭った。介護と過労からうつ病になり、糖尿病も併発してしまった。医師からは野菜中心の食生活を指導されているが、野菜の値段が高騰して食べることができない。100円ショップでうどんを買ってしのぐ毎日だ。
「お風呂券をもらうが、枚数が少ないため毎日行くことができない。(銭湯代の)450円を出すことができない。臭いと言われたこともある」。
同じ荒川区に住む81歳の女性は、過労で足腰を痛めた。保護を受けるのに、「なんでお金を貯めておかなかったの?」と責められたという。
「医者に行くのに、いつもぼろぼろの下着を身に着けていなければならず、つらい。せめて新しい下着を買えればなあ。(生活保護法の改悪は)80歳を過ぎた年寄りにひどい仕打ちだ」と語る。
介護、リストラ、病気・・・。吉田さんは生活保護にたどり着くまでのさまざまな困難を語ってくれた。=13日、参院会館 写真:島崎ろでぃ=
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そもそも生活保護予算の10%削減ありきで見直しが進められていた法改正(改悪)は、憲法25条が保障した「生存権」に抵触するとの指摘があったため、先の通常国会で廃案となっていた。だが、政府は今国会にまたぞろ提出した。キモはほぼ同じだ。呆れる他ない。
キモとは「申請手続きの厳格化」と「扶養義務の強化」だ。
これまで受給希望者は社会福祉事務所の窓口に行き口頭でその旨を告げれば申請書類をもらえた。だが改正後はまず必要書類を揃えて提出しなければならない。「勤めていた会社の給与明細」「家賃の支払い」「自分の資産」…。
生活保護を申請するほど追いつめられた人が、かつて勤めていた会社の給与明細を保存しているとは考えにくい。
勤めていた会社が潰れたり、ブラックだったりするケースは きょうび 珍しくも何ともない。どうやって給与明細を取り寄せることができよう。
路上に弾き出された状態にある人が家賃の通い帳や預金通帳なんぞ持っていようはずがない。厚労官僚はどこまで世間知らずなのだろうか。「特別の場合、書類は提出しなくてもよい」という『但し書き』がついているが、窓口の役人が「特別ではない」と判断すれば、それまでだ。原則はあくまでも「必要書類」を揃えてから申請しなければならない。
「扶養義務の強化」も酷だ。生活保護申請を出すと親戚に照会が行く。扶養できる親戚はいないのか?と。これでは申請したくても親戚に憚って申請できない。生活に困っていることを親戚に知られたくないからだ。
「申請手続きの強化」も「扶養義務の強化」も、要は生活保護申請させないための壁だ。安倍内閣は法改正(改悪)により高い壁を作ったのである。
参院本会議で同法の改正(改悪)に反対した山本太郎議員は「いま手を差し伸べなくてはならない人への対応で国の品位がわかる」と話す。その通りだ。安倍首相の目指す「美しい国」とは誰のための美しい国なのだろうか。