安倍政権が3年続くのか来年までかが問題
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2013/11/8 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
きのう(7日)は、日本の未来を占う意味で象徴的な一日だった。
安倍政権が前のめりになっている日本版NSC創設関連法案が、たった21時間の実質審議であっさり衆院を通過したと思ったら、すぐさま本会議で特定秘密保護法案が審議入り。いずれも国家安全保障特別委員会で議論するのだが、両法案はセットだから、ベルトコンベヤーに載せられた商品のごとく、通過していく。
そのスピードはアレヨアレヨだし、次に待っているのは、もちろん集団的自衛権の行使容認なのである。政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「日本版NSCと秘密保護法案、そして集団的自衛権の行使は、軍事国家への回帰をもくろむ安倍政権の『3本の毒矢』なのです。そのうち早くも2本が放たれた。これらは民主主義を破壊する猛毒の矢です。大変な事態が進行しているのに、体を張ってでも止めようとしない野党も、大々的に批判しないメディアもどうかしています。何か弱みを握られているのでしょうか。日本は議院内閣制の国なのに、NSCができると、そこが国の根幹である外交・安全保障の司令塔になる。そのトップに立つ安倍首相は大統領のような権限を手中にすることになる。権力を官邸に集中させ、国権の最高機関の座を国会から奪うつもりなのでしょう。3本の毒矢によって憲法は形骸化し、合法的に独裁政治が始まってしまうのです」
年明けには、安保法制懇による集団的自衛権見直しの報告書が出される。これをベースに「国家安全基本法案」を閣議決定し、国会に提出する段取りだ。9条を改憲しなくても、海外での武力行使や武器輸出を認めてしまう“平和憲法骨抜き法案”なのだが、法律だから過半数の賛成で成立する。与党の数をもってすれば簡単な話だ。
誰も「戦争ができる国にしてくれ」と頼んだ覚えはないのに、米国と一緒になって、地球の裏側までスッ飛んで行き、戦闘するための法整備が整ってしまうのだ。
こんな横暴を許していいのか? 日本は曲がりなりにも民主主義を標榜している国だ。それなのに、民意を無視するどころか、ダマシ討ちのような“禁じ手”で、平和憲法をナシ崩しにし、民主主義の生命線である「国民の知る権利」までも封じ込めようとしているのが安倍政権だ。あまりに汚いし、乱暴ではないか。いくら数の力があるとはいえ、「のぼせ上がるのもいい加減にしろ」である。
「この国会で審議すべきテーマは国会改革や社会保障制度改革、成長戦略など山ほどある。日本版NSCや秘密保護法案がどうしても必要で、それが日本のためになるというのなら、ハッキリ国民に説明して、通常国会できちんと審議すればいい。ところが、12月6日までの会期では十分な審議時間が取れないのを分かっていながら、臨時国会で審議して、ムリヤリ成立させてしまうなんて、数の力をカサにきた横暴以外の何モノでもありません。それでいて、自分は平日に国会を休んで外遊に出かけてしまうのだから、とことんフザケた政権です」(政治評論家・野上忠興氏)
この調子で、安倍はどんどん国の形を変えてしまうつもりだ。そんな政権が3年も続くのかと思うと、空恐ろしくなる。
◇早く潰さなければ日本と国民の運命はヤバイ
こんな政権は何が何でも引きずり降ろさなければダメだが、カギを握るのは来年だ。裏を返せば、来年を乗り切られたら万事休すだ。
政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「来年4月の消費税アップは、国民生活を直撃する。その頃にはちょうど春闘も重なり、ベアが注目される。ここで給料が上がらなければ、生活は苦しくなる一方で、『アベノミクスは何だったんだ』という話になります。それで支持率が下がり始めれば、今のような強気の国会運営もできなくなる。景気回復が幻でアベノミクスがイカサマだったとバレれば、安倍タカ派政権は間違いなく行き詰まっていきます」
ほかにも安倍のお腹が痛くなりそうな要素はゴロゴロしている。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「来年は安倍首相にとって試練の年になる」と、こう言う。
「年内の妥結が難しくなったTPPは、来年の火種になる。農業関連団体などは、安倍首相のことを公然と『ウソつき』呼ばわりし始めていますが、そうした声が大きくなっていく。さらには原発再稼働。来年、原子力規制委員会の安全審査が終わった原発を動かすのか。それを国民世論がどう受け止めるか。汚染水の問題もあります。そもそも安倍政権は、民主党があまりにヒドかったために誕生した棚ボタ政権です。総裁選にしても敵失で、『どうしても安倍首相がいい』という積極的な支持があったわけではない。決して盤石ではないし、ちょっとしたことでほころびが生じる危うさを秘めている。地方選で自民党が負けたり、苦戦を強いられているのがいい例です。経済への期待だけで持ってきたような政権だから、アベノミクスの化けの皮が剥がれれば、一気に転がり落ちてもおかしくありません」
景気が失速する中で、再来年の消費税10%への引き上げ判断も迫られる。消費税を8%に引き上げた影響がどうなるか。安倍は来年7─9月期のGDPなどの経済指標を見て、10%への引き上げを判断すると言っているから、ちょうど1年後、11月頃には決断の時期がくる。さぁ、「やれるものならやってみろ!」だ。
「消費税増税で景気が冷え込むのは間違いありませんが、その一方で、バラマキ財政を支えるための増税も必要です。安倍首相は果たして決断できるのか。ここでブレたり、支持率が下がってくれば、安倍降ろしが始まる。そうでなくても、内閣改造を見送っている安倍首相に対し、自民党内のやっかみやフラストレーションは凄まじいものがある。そのあたりが政局のヤマ場になるでしょう」(山口朝雄氏=前出)
安倍は最近、論説委員との懇談会で「俺が東京オリンピックまで(総理を)やる」と“宣言”したという話が伝わっている。「マジか……?」だが、なにしろ普通の感覚の持ち主じゃないから、党の規約を変えて、本当に7年後までやりかねない。さすがにそこまではムリでも、あと3年間は国政選挙がない。野党は無力、メディアは政権ベッタリ。だから安倍が「3年は安泰」とタカをくくっている。
そうさせないためには、この先1年が剣が峰になるのである。
◇無邪気なナショナリズムが抑制できなくなる時が来る
さて、多くの国民は日本の右傾化をどう見ているのか。マトモな人間であれば眉をひそめているだろうし、こんな独裁暴走政権が長続きするはずないと思うのだろうが、気になるのが安倍を後押しする勢力の跋扈だ。
戦後日本の体制を支えてきた歴史認識を「自虐史観」と断罪し、侵略戦争の悲劇も反省も忘れ、「日本民族は優秀なのだ」と思い上がる人々。そういう人が増えて、ネオナチのごとく排他主義を叫ぶ現状は極めてヤバイ。彼らの声がデカい分、マトモな意見は封殺されてしまいかねない。そんな兆しが今も、そこかしこに見えるだけに、イヤーな予感がよぎってしまう。
「政権が順調に走るには、理性と感性、両輪からの支持が必要です。ところが、安倍政権の場合は非常にイビツで、個々の政策には『NO』の声が多いのに、ムードで高支持率になっている。世論調査を見ると、法人税減税には反対の声が多いし、汚染水の『コントロール発言』も信用されていない。集団的自衛権の行使も支持されていません。安倍首相もその辺は分かっていて、だからこそ、必要以上に感性に訴えてくるのです。実体がないのに景気回復の期待を振りまき、中国や韓国に対して強硬な姿勢を取り、大げさな身ぶり手ぶりで『強い日本』『誇りを取り戻す』と絶叫する。ムードだけの政治なのですが、そういうイメージ戦略に右寄りの支持層は留飲を下げ、感化されてしまう国民も多い。そこが心配です」(野上忠興氏=前出)
平和ボケの日本人は、「この時代に、まさか戦争なんて」とノンビリ構えているのかもしれないが無邪気なナショナリズムはアッという間に肥大化し、コントロールが利かなくなってしまう。それが時に取り返しのつかない悲劇を生むのは、歴史が教える教訓だ。前出の本澤二郎氏もこう言う。
「石原慎太郎氏が尖閣問題を表面化させ、中国の脅威をことさら煽った頃から、国粋主義が幅をきかせるようになった。そこへ極右の安倍政権が誕生し、大メディアが歓迎、迎合するものだから、国民は何が正しいかの判断もつかなくなっている。これは非常に危うい状況です。領土問題でコブシを振り上げ、戦前回帰するのが本当に正しい道なのか? 国民はそろそろ目を覚まさないと、トンデモない場所に連れていかれてしまいます。気づいた時は遅くて、法律でがんじがらめにされて、後戻りできなくなっている。そういう安倍政権の狙いに早く気づくべきです」
首相官邸でも、エスカレートする一方の安倍の右傾化に懸念を示す声がある。しかし、安倍とその周辺はイケイケだ。中韓に対しても強気一辺倒。聞く耳を持たなくなっているという。国民が目を覚ましてブレーキをかけないと、もう一度、過ちを繰り返すことになる。