いい気になり過ぎ安倍暴走政権
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2013/11/7 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
老舗が食品偽装をやっていたところで、もう誰も驚かないだろうが、豪州産成型肉を和牛と偽っていた「奈良万葉若草の宿三笠」はミシュランに3年連続掲載された有名旅館だ。最高級の「おもてなし」を提供するはずの旅館が食品偽装だから、「おもてなし」の底が割れる話だ。
ユネスコの無形文化財の登録が決まってから、「和食はスゴイ」「世界一」なんて、業界関係者は沸き立っていたが、いまはシュンとなっておとなしい。日本の「食“文化”」なんて気取ったところで、一皮剥けば、こんなもんなのである。
もちろん中にはマジメで、スゴイ味を出している店もあるのだろうが、今度の食品偽装は、表面だけを見て、味の区別もつかないくせに、グルメを気取る連中、社会、メディアへの強烈な皮肉であり、警告だろう。
◇消防車増やして「安全宣言」か
ま、それでも、食品偽装程度であれば、「ごめんなさい」で済む。でも、安倍政権はもうひとつ、「世界一安全だ」と胸を張って世界に売り込んでいるものがある。言わずと知れた原発だ。何が世界一なのか? こっちの「安全偽装」は見過ごせない。
元東芝の原発技術者の後藤政志氏はこう言った。
「福島原発の事故の原因がきちんと分かった上で対策を施し、『安全だ』と宣言したのであれば、分かります。しかし、現実はまったく違います。すべてを津波のせいにし、地震の影響はなかったことにして、対策を立てて、事足れりとしている。福島原発は電源が喪失しなくても、水位計などが壊れて注水が確認できない状態だったんですよ。フロントガラスが覆われた車を運転するようなものです。
しかし、その対策はおざなりにして、『津波被害から電源を守れるようにしたから安全だ』と言う。家が火事になったのに、消防車の数を増やしたから大丈夫と言っているのと同じです。日本の原発は世界一どころか、諸外国に比べて、10年単位で遅れているんですよ」
しかし、安倍が「原発トップセールス」をアピールし、大メディアが原発の安全性よりも「エネルギーコスト」を重要視するものだから、「おかしいぞ」という意見は黙殺されてしまっている。世の中、あまりにも狂っている。
◇「日本人ならできる」と判断力を失った国民
今の世の中を覆っている奇怪な空気は何なのか。耳をすますと「ニッポン」「ニッポン」という空騒ぎが聞こえてくる。
安倍は二言目には「日本を取り戻す」「日本人ならやれる」と叫んでいるが、根拠はない。しかし、こうしたペテン政治家の威勢のいいワンフレーズに国民はすっかり、騙され、冷静な判断力を欠いている。これが今の日本じゃないか。
景気対策にしたってそうだ。アベノミクスで賃金が上がる根拠はないのに、多くの国民は「日本人ならばできる」という安倍のウソを信じて、消費増税を容認する。そこに「ちょっと待てよ」という冷静さがないのである。高千穂大准教授の五野井郁夫氏はこう言った。
「安倍首相が『日本人ならできる』という根拠は高度成長期の成功体験です。しかし、当時と今ではまったく状況が違います。五輪招致に成功したことで、『東京五輪の夢よ、もう一度』ということなのでしょうが、国の借金は1000兆円を超えている。インフラ整備をするにしたって、『お金はあるのか?』『復興はどうする?』と難題が山積しているのです。裏を返せば、どうにもならないから、高度成長期の幻想を振りまいているように見える。それだけ閉塞状況は深刻なのです。しかし、そういうことを言うと『五輪に水を差すのか』と言われてしまう風潮もある。威勢のいい幻想だけが注目され、人々がそれを信じ、マトモな意見が封殺されてしまう怖さ、異常をひしひしと感じますね」
◇声がでかいペテン師たちがはびこっている
フツーの感覚の持ち主であれば、この政権が強調する“おもてなし”に違和感を覚えるものだ。原発トップセールスに至っては、マユをひそめて当然である。安倍が「日本を取り戻す!」というセリフのうさんくささ。五輪、五輪と騒いだところで、弱っちい日本のスポーツの現状や、柔道で見せ付けられた不正や暴力、閉鎖性を思えば、むしろ、むなしくなってくる。しかし、そういう感覚の持ち主はひと握りで、安倍を筆頭にした「日本バンザイ」みたいな“アジテーション”にみんなが感化されてしまっている。
安倍だけでなく、橋下大阪市長みたいな口八丁政治家が人気を集め、跋扈し、国民が簡単に洗脳されてしまう風潮が恐ろしい。日本はいつの間にか、マトモな言論が機能しなくなってしまったのではないか。声がデカいペテン師がはびこる、野卑で下劣な社会になってしまった。
◇「謙虚さ」を失い右へ右へと暴走する社会
「日本は世界一」という奇妙な妄信の先に何があるのかも心配だ。
安倍が「日本を取り戻す」と言うときの日本は、大日本帝国そのものだからだ。その安倍は自民党の力をバックに特定秘密保護法はじめ、「戦争準備法案」を着々と進めている。本当に危険なのだが、冷静さを失った社会は気づかない。極右のナショナリスト、安倍の威勢のよさに流され、拍手喝采を送るのだ。結果、ますます、ペテン政治家が図に乗る構図。これには朝日の天声人語(2日付)もこう書いたほどなのだ。
〈(特定秘密保護法という)これほど危うい法案を短期国会で通そうとすること自体、(安倍自民党の)数を頼んだ驕りではないか。同じ流れで、新聞の首相動静もマル秘にという発言が、元閣僚から事も無げに飛び出してくる〉〈(この政権は)どこか怖いものなしの感がある〉〈他にも原発あり、改憲あり。経済だ、株だとかまけるうちに面舵いっぱい、気がつけば国の鼻先はあらぬ方に向いていたと悔やむのは避けたい〉
気取った文章だが、大新聞もこのままでは東条英機やヒトラーの二の舞いになりかねない懸念を示唆せざるを得なくなってきたのである。それなのに、世間ではそれが問題にならない。いい気になっている安倍への批判もうねりにならない。この辺が本当に恐ろしい。
「何が真実で何がウソか。社会が分からなくなっているんです。食品偽装もそうだし、原発安全宣言もそう。安倍首相の言う積極的平和主義も戦争宣言に他ならないのに、ゴマカされてしまう。みんなが扇動政治家にやられているんです。戦後の日本は侵略への『反省』と『謙虚さ』を精神的支柱にしてきた。しかし、それすらも自虐史観だとされ、批判されてしまう。中国にこぶしを振り上げることが英雄視されてしまう怖さ。ヒトラーが出てきたときとソックリですよ」(政治評論家・森田実氏)
前出の五野井氏は「過去の偉業への憧憬が、この国の風潮だとすれば、そういう国に未来はない。それ以上に怖いのは、政治家の憧憬が大日本帝国であるかのように見えることだ」と語った。
正鵠を射抜いているだけにハッとする。