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2013/10/30 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
臨時国会の緊張感のなさは、安倍首相のトルコ訪問に象徴されている。28〜30日の予定で、ボスポラス海峡横断地下鉄の開通式に出かけたのだが、果たして、行く必要があったのか。確かに、このプロジェクトは日本が円借款しているが、テープカットなんて、代理でも間に合財界人を引き連れ、今年2度目のトルコ訪問をしたのである。
「国会会期中、しかも、平日なのに首相が外遊するなんて、歴代政権では考えられなかったことですよ。重要法案がなく、日程に余裕があるならまだしも、状況はまったく違いますからね」(政治評論家・野上忠興氏)
改めて言うまでもないが、安倍政権は先週25日、悪名高い特定秘密保護法案を閣議決定し、国家安全保障特別委員会での審議が始まった。日本版NSC設置法案とともに、国の形を戦前に逆戻りさせるような重要法案だが、その国会に安倍はいない。
しかも、安倍は臨時国会を10月まで開かなかった。結果、会期は53日間と短くなり、祝日や土日を除くと、実質審議日程は今後30日もないのである。この間に戦前回帰法案だけでなく、産業競争力強化法案、国家戦略特区法案、社会保障プログラム法案など、矢継ぎ早に成立させなければならない。綱渡りのようなスケジュールなのに、安倍はテープカットに行くわけだ。
「原発の売り込みもあるのでしょうが、首脳外交を口実に国会を軽視しているとしか思えない。どうせ最後は数の力で強行採決できる。支持率が高いから、多少手荒なことをしても大丈夫。こうしたおごりに加えて、首相が国会に縛られる現状を改革するんだ、という妙な気負い、PRもあるのでしょうね。そんなことに巨額の税金を使っていいのか。大して切迫性のない外遊を何回するんだ、と問いたくなります」(野上忠興氏=前出)
◇無能首相が数の力で「オレ様」気取り
安倍の場合、国会軽視にも呆れるが、それ以上に問題なのは、国が直面している危機にまったく緊張感や切迫感、責任感が感じられないことだ。
原発の汚染水はどうするつもりなのか。大島の死者・行方不明者に行政の責任を感じないのか。消費税を上げて、景気対策はどうするつもりなのか。そもそも成長戦略実行国会ではなかったのか――。難題山積なのに、安倍ときたら、現実対応はできないし、将来展望も描けていない。ないない尽くしの無能首相が、数をバックに「オレ様」気取りなのだから、どうにもならない。
「安倍政権は福島第1原発の汚染水対策に“国が前面に出る”と言って、470億円の税金を投入しますが、公開されている契約情報を見ると仰天しますよ。鹿島と東電が落札し、凍土壁などをつくるのですが、『8年間で結果を出す』という中身なんです。今も汚染水がダダ漏れなのに、ナント悠長な契約なんでしょう。政府に危機感がない証拠です。大体、政府が前面に出るなら、東電の経営形態から見直すべきなのに、東電任せで、お茶を濁している。政府が5兆円を貸す賠償スキームも行き詰まっていて、日々の金利負担は最終的に電力料金という形で国民に跳ね返ってくる。待ったなしの課題から目をそむけて、原発輸出外交にかまけている場合ではないのです」(ジャーナリスト・横田一氏)
ついでに言うと、米カリフォルニアで起きた原発事故で、三菱重工は約4000億円の損害賠償を求められて、裁判になった。三菱重工は争う構えだが、原発事故の場合、国内では免責になっても外国では製造物責任が問われるケースがある。安倍の原発売り込み外交は危険な賭けだ。福島原発事故の真相だって分かっていないのに、狂乱外交というしかない。
◇本当はもう見限られているアベノミクス
台風被害に見舞われた大島への対応もひどいものだ。大島が被害に遭ったのは今月16日なのに、安倍がヘリで現地視察したのは27日だ。それも滞在時間はたった2時間。二言目には防衛、安全保障と言うくせに、やりたいのは「戦争ごっこ」で、国民の生命、安全には無関心である証拠だ。この間、確かに国会はあったが、トルコには国会をサボって行くくせに、なぜ大島には行けないのか。こういうところに、安倍の本質が見えてくる。
こんな調子の安倍だから、景気対策についても痴呆というか、脳死状態というか、ナーンにもしていない。
その結果、景気の現状はどうなったか。国民は大マスコミの「景気回復」ペテン報道にだまされていたら、とんでもないことになる。
「ユニクロのファーストリテイリングが今年の8月決算でついに売り上げ1兆円を突破しました。しかし、株価は上がっていない。クレディ・スイスの白川浩道氏は直近のリポートで『外国人投資家は“第3の矢”に対しては既に失望気味であり、よほどのサプライズがない限り、市場を動かすイベントにはなりそうもない』と切り捨てています。
アベノミクスを完全に見切っているのです。安倍政権になって株価が上がったのは為替による一時的な現象だった。日銀の異次元緩和であふれたマネーはメガバンクを通じて、対中投資に流れています。つまり、国内には流れない。安倍首相は五輪招致にしゃかりきになり、所信表明演説では高度成長期を引き合いに出して、『今の私たちもできる』と言っていましたが、高度成長期にあるのは中国です。今の日本を60年代と錯覚しているのではないでしょうか」(ビジネス・ブレークスルー大教授・田代秀敏氏)
◇自民党員は安倍をバカにしている
これがアベノミクスの真相、結末なのである。日本はとっくの昔から構造的に長期低迷の時代に入っている。しかし、「起業創業の精神に満ちあふれた国を取り戻す」とか言って、口先でゴマカしているペテン師が安倍だ。
こんな災厄首相に任せていたら、国民生活は破滅必至だが、大メディアはみ〜んな安倍応援団だし、野党は安倍の勝手を傍観している。自民党だって、かつては党内権力闘争があったのに、いまは牙を抜かれて、無能総裁の前に完黙している。国会の惨状、政治の劣化には目を覆いたくなってくる。
「安倍首相は24日の参院予算委員会で特定秘密の中身について『政権交代で新閣僚が誕生すれば、改めてその適否を判断することもあり得る』と言った。自民党内はのけぞっていましたよ。大臣が代わって秘密が変わるようでは、政府の恣意的な判断が入ってしまう。絶対に言ってはいけない答弁なのに、安倍首相は分かっていない」
これは誰あろう、自民党議員のセリフだ。党内ではこんなふうにバカにされているのに、表立っては批判は出ない。自民党も落ちたものだ。支持率の高さにビビり、バラマキ予算への期待に目がくらみ、すっかり骨抜きにされている。
かくて、6年前にたった12カ月で政権を放り投げた無能首相が「再チャレンジ」とか言って、きょうもやりたい放題――。国民は毎日が厄日である。