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2013/10/23 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
臨時国会が始まったが、民主党の野田佳彦前首相のホームページには信じられない記述が載っている。
〈所信表明演説での総理のご様子は、とてもテンションが高くすこぶるお元気そうでした。大変ハードな海外や国会の日程も精力的にこなされており、同慶の至りです〉
皮肉かと思ったら、こう続く。
〈一国のリーダーはまずタフでなければなりません〉
つまり、ヨイショだ。政権を奪われた相手にエールを送っているのである。この国の野党もついに落ちるところまで落ちたのではないか。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「民主党が前原誠司氏、岡田克也氏ら元閣僚を何人も予算委員会に投入しながら、散漫な質問に終始し、安倍政権を攻めあぐねている最大の理由は野田氏の『同慶の至り』という言葉に集約されています。野田氏には一刻も早く民主党を離党して自民党に入れてもらうことをお勧めします」
最大野党が与党と通じているのである。つまり、今の国会は茶番なのだが、野田のこれまでの言動を見れば、今さら驚くに値しないのかもしれない。
◇民主党をグチャグチャにして2大政党を死滅させた野田佳彦
小沢一郎を追放して民主党をグチャグチャにし、自民の谷垣禎一(当時総裁)と組んで民・自・公の「3党合意」にカジ切りしたのが野田だ。最後は民主党が破滅的惨敗を喫することが分かっていたのに自爆解散に踏み切り、2大政党制を死滅させた。
脳死状態になった民主党は参院選でもコテンパンにやられ、あっという間にねじれは解消。巨大与党の出現を許した。どんな法案でも自動成立という恐ろしい政治状況をつくり、特定秘密保護法、日本版NSC設置法、集団的自衛権の行使容認などのメニューがズラリと並ぶ。
本来であれば、野田は表に出てこられないはずだ。しかし、読売新聞の連載で消費増税法案を通したことを自慢し、HPで安倍にエールを送ってみせたのは、野田が安倍別動隊にほかならない証左だ。
もともと松下政経塾出身の野田は、父親が自衛隊のタカ派だ。先日の訪米では、太平洋艦隊の司令官を務めた米海軍のゲイリー・ラフヘッド前作戦部長と夕食を囲んだそうだが、「大提督と食事した」とHPに書いていた。“大提督”という表現からうかがえるように自慢だ。もちろん、集団的自衛権の行使にも賛成である。
かと思うと、野田政権時に民主党総括副幹事長だった篠原孝も21日の予算委員会で、「民主党と同じ轍を踏まないで」と安倍にアドバイスしていた。改めて、この国の野党は何なのか。世も末というか、ひどいことになっている。
◇教科書検閲と軍備拡大まっしぐらで戦前ファッショ化する日本
最大野党が安倍政権の軍門に下った政治状況でいま、何が行われているか。戦前ファッショ日本への急速な回帰である。
先週、沖縄県竹富町の教科書採択問題で文部科学省は初の是正要求に踏み切った。表向きは地方自治法違反だが、要するに国が指定する教科書を使わない竹富町はケシカランと、“法的圧力”をかけたのである。
竹富町が拒否したのは、押し付けられた教科書がほとんど米軍基地負担に触れていないからだ。政府に“検閲”まがいのことを要求された竹富町の慶田盛安三教育長が、「残念だ」と悔しさをにじませたのも当然だ。ジャーナリストの斎藤貴男氏はこう言った。
「竹富町は沖縄本島よりずっと南にある小さな島々です。そんなちっぽけな自治体が決定に従わないと、国の命令に断固従わせようとする安倍政権は、寸分の小さな価値観の違いも許すまいとする恐ろしさを感じます。教育問題でいえば、道徳教育を教科に加えようとしているのもどうかしています。愛国心を点数化して評価して、国の言うことが絶対だと信じる軍国少年を養成するつもりでしょうか」
教育の戦前化と併せて着々と進んでいるのが自衛隊の拡大・膨張だ。防衛省が年内をメドに見直そうとしている防衛政策の基本指針「防衛大綱」(中間報告)には、「海兵隊的機能」「無人偵察機」「敵基地攻撃力」などのキーワードがちりばめられている。
「新防衛大綱では南西諸島の防衛を重視していますが、自衛隊に海兵隊的機能を持たせて、尖閣への逆上陸を意識しているのは明らかです。長距離輸送が可能なオスプレイを導入しようとしているのは、米海兵隊のように、自衛隊員を機動的に尖閣まで運ぶためでしょう。アフガンなどで使っている無人偵察機『グローバルホーク』の導入も検討されていますが、これは米軍との情報共有を緊密化し、隙間のない警戒監視態勢を敷くためです」(軍事ジャーナリスト・世良光弘氏)
グローバルホークもオスプレイも1機当たり約100億円もする。だから、政府は国民を納得させようと自衛隊の活躍をPRし、それを安倍ベッタリの大メディアがデカデカと取り上げている。自衛隊の災害救助にケチをつける気はないが、防衛省は台風26号で大被害が出た伊豆大島に1000人規模の「兵隊さん」を派遣し、懸命に捜索にあたる姿が繰り返しメディアで流された。
こうして、国民の安全のためには、自衛隊が必要、もっと機動的に動くには海兵隊化が不可欠……と、国民に刷り込んでいくのである。
◇野党もメディアも安倍別動隊
そこへもってきて、中国・韓国を毛嫌いする国民が増えている。異常なヘイトスピーチを批判するどころか、一緒になって中韓叩きをするメディアばかりだ。安倍政権は安保・外交の中長期的な基本方針「国家安全保障戦略」をまとめ、そこには“中国と北朝鮮の軍事的脅威”が明記された。大マスコミと政府がヘイトスピーチを煽っているようなものだ。
前出の斎藤貴男氏は、「政府の本音は集団的自衛権行使の狙いが米国の軍事活動を助けるためだということを隠したい。本質から目をそらすためにことさら、中韓との危機を煽り、国民のナショナリズムを高めようとしているようにも映ります」と言った。
安倍やら野田やら右翼の魑魅魍魎がバッコする中、政府の策謀と喧伝にまんまと乗せられている国民が目を覚まさないと、歯止めなき軍備拡張が続く。行き着く先は米軍との一体行動で、日本は「戦争する国」になる。世界に誇る平和憲法はなし崩しにされ、米国同様、テロの標的となり、国民の生命を守るとかいって、戦争に突き進む国となっていく。
そうした動きがこれだけロコツなのに、誰も異を唱えない異常、野党もメディアも安倍別動隊である恐怖。それを国民が感じなければ、旧日本復帰への加速化を止める手立てはない。