いまでも起きている抗議行動封殺の見せしめ逮捕 [斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」]
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2013/10/22 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
東京都出身のフリーター・園良太氏(32)が警視庁に現行犯逮捕されたのは昨年2月9日のことである。江東区役所のガラスの壁を蹴破った器物損壊容疑。原宿署の保護房に5日間、その後も独房に留置され続け、途中で威力業務妨害容疑に切り替えられて起訴された。
保護房とは完全に隔離された特殊な独房だ。食事は手づかみ。寝具はないし、洗顔や歯磨きも許されない。蛍光灯がつけっ放しで時間の感覚が失われ、時に収容者の精神に異常をきたす場合がある施設なのである。
「容疑の変更は僕がガラス代を弁償したから。検事は悔しがっていましたが、現場に居合わせた15人ほどの区職員の調書を新たにまとめて事件にしたようです」(園氏)
彼はもちろん、意味もなく暴れたわけではない。江東区はそれまで、JR亀戸駅に近い竪川河川敷公園で暮らす野宿者たちを強制的に排除し、彼らの小屋を叩き壊す行政代執行にまで及んでいた。
団体交渉の予定も一方的にキャンセル。園氏は支援グループの一員として区役所を抗議に訪れたところ、両手両足を宙づりにされて追い出され、「入れろ」「入れない」の押し問答の末、件の逮捕に至ったのだった。
「自動ドアの電源まで切られましたよ。区と警察は一体で、数十人単位を動員する警備計画があらかじめ用意されていた」
ところで園氏は、いわゆる運動圏の有名人だ。イラク反戦デモを振り出しに、フリーター労組や麻生(太郎)邸見学ツアーなどに関わり、3・11の直後からは東京電力への申し入れを繰り返して、「東電前アクション」へと発展させた。
だから周囲では、「逮捕後の流れは明らかに見せしめだ」というのが定説。実際、この間には東京や大阪で反原発絡みの逮捕者が大量に出ており、そのせいか最近の運動が当局側と融和的になったとの指摘が少なくない。
園氏が言い渡された東京地裁の判決は懲役1年、執行猶予3年。彼が区役所を訪れるまでの経緯にはまるで言及がない。
あらゆる抗議行動の封殺に通じる無法に彼は当然、控訴で応えたが、東京高裁もまた、司法の自殺にも等しいデタラメぶりなのだとか。
マイナンバーという名の国民総背番号体制は可決・成立してしまった。国民の「知る権利」を事実上認めない秘密保護法案も近く国会に提出される。
このままでは権力に盲従できない人間の生きる隙間さえ奪われていく。抗わなければならない。仮にも人間ならば。(隔週火曜掲載)
さいとう・たかお 1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「東京電力研究 排除の系譜」「消費税のカラクリ」など著書多数。