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2013/10/21 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
安倍政権は、きょう(21日)にも特定秘密保護法案を閣議決定する。
国家が特定する秘密を漏らした場合は最高懲役10年、情報を得ようとした者も罰せられる、という暗黒法だが、最終案に「取材行為は正当な業務とする」「国民の知る権利と取材の自由には十分配慮する」といった文言を盛り込んだことで、反対していた公明党が了承、今国会で自動成立の見込みだ。
「取材の自由」が保障されたことで、大マスコミは“容認”ムードだが、何をもって取材とするかは、政府の胸三寸だ。自民党プロジェクトチームの町村信孝座長は「ワケのわからないジャーナリストもいる」「テロリストが雑誌会社をつくって『取材の自由』を主張することもありうる」とか言って、議論の余地があることをにおわせていた。
フリージャーナリストによる地を這うような張り込み取材にイチャモンがつかないか。パパラッチ的な撮影はどうなるのか。大いに疑問だし、とってつけたような文言を加えたところで、この法案の恐ろしさは変わらない。政府に都合の悪いことを隠すための法案であり、懲役10年という脅しを使って、取材に圧力をかけるものだからだ。「国民の知る権利には配慮する」って、その言い方はなんだ? お上目線そのままだ。上智大教授の碓井広義氏(メディア論)が言う。
「そもそも政府が一方的に『秘密』を指定できることが危険なのです。秘密にする基準を作るとか言っているが、政府が『これは特定秘密だ』と言い張ればそうなってしまう。しかも、国民は何が秘密かわからない。うっかり探ったら、最高で懲役10年もの重罰が科せられてしまう。『配慮』という言葉も危険で、状況次第でどうにでもなる。それは戦前の歴史が雄弁に物語っていることです」
これから国会で本格議論……なんて思っちゃいけない。野党不在の国会ではあっという間に成立だ。自公協議が終わった時点で、戦前回帰の悪法がよみがえったことになる。
◇海外で戦争するための法案が次々に
秘密保護法案は日本版NSC(国家安全保障会議)をつくるための法律だ。軍事、防衛などの情報を各省庁の縦割りではなく、一元管理するための組織である。
そこに安全保障上の機密情報などを集約させ、首相と官房長官、防衛相、外相の4人が「国の作戦」を決めていく。そこには同盟国、米国からの軍事、偵察情報なども含まれるので、そのために「秘密保護法」をかけるわけで、つまり、NSCをつくるための準備である。
それじゃあ、NSCの先に何があるかというと、もちろん、米との軍事行動一体化、集団的自衛権の行使がある。
安倍はスットボケているが、そこまでセットで、大きな国家改造戦略が練られている。そこが恐ろしいところだ。
「秘密保護法と日本版NSC設置法はワンセットで、日本が米国と一緒に海外で戦争できる国になるための法案といっていい。共同で軍事作戦を展開するには、省庁間の情報を機動的に集約するNSCを設置するのが早いし、秘密保護法は米国と共有した情報を機密扱いにするために必要なのです。07年に海上自衛隊員がイージス艦の構造図面を勝手に持ち出し、情報が漏洩した事件がありました。情報管理に不信を覚えた米国から、日本の秘密保全に強いプレッシャーがあったのだと思います」(軍事ジャーナリスト・世良光弘氏)
自民党は昨年7月、すでに集団的自衛権の行使を可能にする「国家安全保障基本法」を総務会で決定している。来年の通常国会でこの法案を出すつもりだ。秘密保護法→NSC設置法案→国家安全保障基本法という流れである。その背景では集団的自衛権行使容認を議論する安保法制懇が開かれ、準備は着々と進んでいる。もちろん、法案が出てくれば、与党の数の力であっさり成立してしまう。そのときになって、国民が安倍の危うさに気づいても、次の選挙は3年後のダブルだろうから、やりたい放題をされてしまう。この国の形は完全に変わってしまうことになるのである。
◇庶民イジメ安倍独裁を許す野党のテイタラク
おそらく、この3年間で民主主義は完全消滅するのではないか。安倍独裁政治がうなりを上げ、国民の権利は次々と奪われ、増税などの負担増だけが次から次へと押し付けられることになる。
すでに、このシナリオは露骨に動き出している。老人と貧乏人だけが泣く消費税増税が決まってしまったし、社会保障に回るはずだった増税分はコンクリートと軍備に化け、ゼネコンと防衛産業を喜ばせている。TPPにしたって、参院選で公約した「重要5項目」は到底守れないのに、安倍は自らTPP年内妥結の旗振り役を買って出た。
公約破りと庶民イジメの負担増で、本当ならば、国民の怒りが爆発し、安倍は立ち往生するところだ。
しかし、安倍は余裕しゃくしゃく。選挙がずっとない上に、野党が完全に死んでいるからだ。数が足りないだけではない。無力、無能だから、ヒドイものだ。
「安倍政権の横暴を許しているのは、野党の能力不足が大きいと思います。汚染水問題なんて格好の追及材料なのに、民主党の海江田代表は歯切れが悪く、首相を攻めきれない。みんなの党は小さな政党なのに、所属議員が足の引っ張り合いばかりして分裂状態。しかも、渡辺代表は『首相が戦う改革を進めるのならば真摯に協力する』と秋波を送っているのだから、どうかしています。社民党は党そのものが風前のともしびだし、共産党は正論を吐き続けているのはいいが、考え方に幅がないので、国民を動かす大きなうねりをつくれないのです」(政治評論家・本澤二郎氏)
◇ナチスにならった「こっそり改憲」
野党がこのザマでは、憲法改正も時間の問題かもしれない。いや、改憲という手続きを経ずに、解釈改憲という狡猾な手法で、事実上の憲法改正をやってしまう。そうなりゃ、この国は本当に戦前に逆戻りだ。
「解釈改憲で集団的自衛権が認められたら、憲法9条は有名無実化します。そのこと自体も問題ですが、そもそも憲法は権力者を縛るためにある。縛られる側の政府が自分たちに都合がいいように勝手に解釈を変更するなんて、掟破りの禁じ手です。ワイマール憲法下で独裁政権を完成させたナチスの手口で、麻生副総理の“ナチスのように静かに憲法を変える”という発言が現実になってくるのです」(九大名誉教授・斎藤文男氏=憲法)
9条をなし崩しにするような政権だ。国家権力強化のためにはなんでもやる。国民の基本的人権は蹂躙され、財産は次々に収奪されていく。実際、秘密保護法で「知る権利」は取り上げられ、生活保護費を筆頭にした社会保障のカットで、生存権を保障した25条も風前のともしびだ。特区を皮切りに法の下の平等も無視され、五輪のセキュリティーを理由に監視社会も強化されていくのだろう。
民主主義国家ではなく、安倍のような独裁者の国家が、国民を管理し、縛り、言うことをきかせる社会である。
国民はのんきに「まさか」と思っているだろうが、権力はあっという間に腐り、暴走する。これは権力の宿命だ。だからこそ、歯止め=憲法が必要なのに、勝手にタガを外されたら、間違いなく、独裁政権になっていく。
野党が死んでいて、大新聞も腐りきっている日本で、安倍があと3年間も政権を担う恐怖。そのことにあまりにも国民は鈍感だ。