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2013/10/18 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
国会の代表質問と答弁を見ていて、改めて分かったのが、この政権のペテン師ぶりだ。
所信表明で、安倍首相は「復興をさらに加速させる」「復興なくして日本の再生なし」と力んでいたが、実際にやっていることは正反対なのだ。
企業の復興特別法人税を前倒しで廃止して、被災地に重くのしかかる消費税増税を強行する。福島には、原発事故のせいで帰れない人がたくさんいるのに、平然と原発再稼働にカジを切る無神経。こうした矛盾、人でなしを代表質問で追及されると、「特別復興税を廃止しても財源は確保している」「強い経済を取り戻すことは被災地にも大きな希望の光をもたらす」と詭弁を弄する。
「安倍首相の所信や答弁を聞いていると、『巧言令色、鮮し仁』という孔子の言葉を思い出します。言葉巧みな人間には仁がないという意味ですが、安倍首相の言葉には誠意がない。真実がない。例えば、IOC総会で首相は『原発の汚染水は完全にコントロール』と言いました。それを国会で聞かれると、こんどは『全体的にコントロール』と微妙な言い換えでゴマカす。そうかと思えば『意志の力』とか言ってキバってみたり、上っ面の言葉だけのパフォーマンスなのです。そこには、国民に対する愛がない。被災地への気配りもありません。本当に国民生活を考えていれば、消費税増税なんてできるわけがないのです」(政治評論家・森田実氏)
その消費税にしても、本来は全額、社会保障に充てられることになっていた。「それならば」と国民も納得した。ところが、実際は社会保障は削られる一方だ。安倍政権が国会に提出した「社会保障制度改革プログラム法案」では、介護分野を公助から切り離し、医療の自己負担率も引き上げられることになっている。すでに生活保護費は削られ、今後は年金の負担も増大する。「自助」などという、もっともらしい言葉を隠れみのに、容赦ない弱者切り捨てが始まるのだ。
◆アメリカのため、グローバル企業のための政治
それで増税分がどこへ行くかといえば軍備とコンクリートに化けてしまう。来年度予算の概算要求で、防衛費は前年度比4%増の4・9兆円を計上。国交省は当初予算から2割増しの5・8兆円を要求している。そのうち国土強靱化に関連する要求額は前年度比1・42倍にまで膨れ上がった。今後は五輪のインフラ整備にもジャンジャン予算がつぎ込まれることになる。カネも人手もそちらに回り被災地の復興が後回しになるのは確実だ。
TPPだって、国民生活を破壊する正体が次第に明らかになってきている。公約だった「聖域」も守れそうにないことが分かった。安倍は「国益が守れないなら撤退」と言っていたはずだが、今では自らTPP年内妥結の旗振り役を買って出ている。いったい誰のために動いているのか、ワケが分からない。
「選挙公約をあっさり反故にして、安倍首相がやろうとしているのは、アメリカのため、グローバル企業のための政治です。TPPでは日本国民を不幸にし、収奪した富をアメリカに差し出そうとしている。恐ろしく反国民的な政権ですよ。彼はアベノミクスで景気が良くなったと言い張っていますが、それは安倍首相の周りの大企業だけの話です。ひと握りの特権階級を優遇して、一般大衆から搾り取ったものを恵まれた人間にバラまこうというのです。これじゃあ奴隷制社会の王様と変わらない。とても血の通った人間のやることではありません」(森田実氏=前出)
財閥、ゼネコン、霞が関、大メディア……。政権与党に連なる連中が、安倍をもてはやす理由はここにある。そりゃ、優遇される特権階級は大喜びだろうが、その裏で泣かされるのは庶民だ。
◆庶民がおとなしいからけんょくがますますツケ上がる
奴隷のように虐げられ、搾取されても、おとなしく、お上の言いなりになっているのが日本の国民だ。生活を直撃する消費税増税も「仕方ない」と受け入れてしまう。庶民に大増税の一方で、儲かっている大企業には減税というデタラメにも目をつぶってしまう。
「だから、ますます権力がツケ上がる。しかも、安倍政権が暴走しても野党には止める力がない。今こそ国民がちゃんと物事を考えないと、大変なことになりますよ。なぜ、こういう生活を強いられているのか。政府の『子や孫の代にツケを残さない』なんて聞こえのいい言葉にダマされないことです。いま現実に、子ども世代は大学を出ても仕事がない、やっと正社員になれたらブラック企業、低賃金で結婚もできないという状況に置かれている。将来世代へのツケを言うなら、増税よりも、まずは金持ち優遇と弱者切り捨ての政策を改めさせるべきでしょう。権力者にとって都合のいい目くらましに引っかかってはダメなのです」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
思えば、この国の政府はいつも国民をダマしてきた。原発事故が起こった時もそうだった。放射性物質の拡散を予測するSPEEDIの情報はすぐに公開されず、事故の深刻な状況は隠され、政府は「ただちに影響はない」と言い続けた。小泉純一郎にも、さんざんダマされた。「痛みを伴う改革」で、いい思いをしたのは大企業だけ。小泉政権の6年間で格差が急速に広がり、庶民は一方的に痛みを押し付けられただけだった。それでも国民が無批判だから、日本の政治を壊した菅や野田や小泉の元首相が、今もデカイ顔をしてエラソーなことを言っている。
◆安倍政権で「半沢直樹」「あまちゃん」がヒットした必然
かと思えば、世の中が「半沢直樹」や東京五輪に浮かれている間に、特定秘密保護法の準備が周到に進められていた。安倍政権は来週にも閣議決定して、法案を提出するつもりだ。わずか2週間のパブリックコメントで「国民の意見を聞いた」ことにして、その約8割が法案に反対だったにもかかわらず、無視して、悪法を進めている。こんな法案が通れば、政府にとって都合の悪いことは公表しなくて済む。国民の「知る権利」を定めた憲法にも挑戦するトンデモない悪法なのだが、安倍の周辺は「総理がやりたいものは(法案が)全部通る」とゴーマンそのもの。国民は完全にナメられている。
「安倍政権の発足と、ドラマ『半沢直樹』や『あまちゃん』の大ヒットは無関係ではない」と、前出の山田厚俊氏はこう指摘した。
「民主党政権がひどすぎて、消去法で誕生したのが安倍政権です。しかし、決められる政治などといって、消費税増税もTPPも秘密保護法も勝手に進めてしまう、こんな政権で本当にいいのか。おそらく、国民感情としても今の政治が最善とは思っていないけれど、民主党政権に戻すわけにもいかない。自民党にも他に目ぼしい政治家がいないから安倍首相でいいかとなる。それは政治に期待していないということでもある。諦めにも似た厭世ムードが蔓延しているように感じます。ニュースを見ても気分が悪くなるだけだから、ドラマに熱中したくなる。もちろん、ドラマ自体の出来も良かったのですが、せめてドラマの世界に没頭して鬱憤を晴らしたいという庶民の現実逃避が、高視聴率につながったように思います」
それでは権力者の思うツボだ。