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2013/10/15 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
臨時国会がきょう(15日)から始まったが、恐ろしい展開になりそうだ。後世の歴史家も注目するのではないか。
今国会の目玉は「日本版NSC設置法案」と、その前提となる「特定秘密保護法案」である。前者はCIAの物マネ法案、後者は、政府が決めた「特定秘密」を漏らせば、最高懲役10年の刑になる情報統制法案だ。
戦前の治安維持法を彷彿させる中身で、だからこそ、弁護士会をはじめ、多くの識者が反対運動を展開しているのだが、今国会で必ず成立してしまう。安倍与党が圧倒的な数の力を持っているだけでなく、野党第1党の民主党が“共犯”同然だからだ。
安倍政権が提案しようとしている「秘密保護法案」は、民主党政権下の2011年8月に有識者会議が出した報告書「秘密保全のための法制のあり方について」がたたき台なのである。情報公開に熱心だった民主党は一方で秘密保持に注力した。この一点において、民主党の情報公開は見せかけだったと断じていい。
月刊誌「世界」11月号では、元毎日新聞の記者で、ジャーナリストの西山太吉氏がこの辺の事情を書いている。1972年に沖縄返還に絡む密約取材をめぐり、機密漏洩の教唆に問われ逮捕された「運命の人」だけに、この手の嗅覚は鋭い。
〈60年安保から沖縄返還を経て、現在に至るまでの間、自民党政権は終始、日米同盟を日本の存立基盤に据え、その同盟の聖域化に全力を上げてきた〉
〈そうした自民党のやり方をテコ入れし、促進させたのが対抗する相手のはずの民主党政権であった〉
こう断じた西山太吉氏は民主党政権が一度たりとも、情報公開法改正案を成立させようとしなかったこと、それどころか、改正案を永遠に抹殺してしまう秘密保全法制の制定に着手したことを紹介、〈そのためか、かつて、自民党政権時に沖縄密約を徹底否定し、外務担当の内閣官房副長官補に任命された河相元北米局長を、あえて副長官補に再任するという異例の人事を行った。彼が、秘密保全法制のためにつくられた内閣の有識者委員会への資料提供などの面で中心的な役割を演じたのは想像に難くない〉とえぐった。
◇権力の蜜の味が忘れられない民主党
こんなのが野党第1党では、本当に戦前の悪夢がよぎってくる。与野党一致で言論弾圧法案成立なんて、大政翼賛会だが、実際、民主党の大畠幹事長は秘密保護法案について否定も拒絶もしていない。10日の記者会見では「国民の知る権利がどう位置付けられるか誠に不透明だ」と言いながら、法案に賛成するかどうかは「内容を吟味しながら対応方針を定めたい」と言った。条件次第で賛成しますよ、ということだ。
それでなくても民主党は国会開会前から既に自公と一体化した動きを見せている。首相や閣僚の国会答弁を減らす国会改革や選挙制度改革での3党協議に乗っかっているし、一度は離脱した社会保障協議でも復帰の方向だ。
これには、半分与党みたいな維新の会も呆れて、「違和感がある」(松野幹事長)と噛みついたほどだ。政治評論家の野上忠興氏はこう言った。
「民主党は『反対するだけの野党にはならない』とか何とか言うのでしょうが、有権者だってばかじゃない。権力の蜜の味を一度でも味わうと忘れられなくなる。それが今の民主党でしょう。自公にくっついていれば、自民が崩れた時に補完勢力として政権に関われるとでも思っているのか。だとすれば、勘違いも甚だしい。野党というのは権力と徹底抗戦するのが本来の姿です。まして、安倍自公政権の危険な右傾化、横暴、独裁的手法がこれだけあからさまなのに、何をやっているのでしょう。権力にすり寄れば、ますます有権者に見放されるだけです」
これはヒドイ国会になる。言論の府の腐敗堕落、機能停止は目を覆うばかりだ。
◇後がない米国に日本を丸ごと差し出す狂気
安倍首相がかくも秘密保護法の成立を急ぐのは、日米同盟の強化につながると思っているからだ。相変わらずの米国隷従だが、その米国は今、どうなっているか。かつての威信は地にまみれ、のっぴきならない状況だ。そんな米国のために安倍は国を売ろうとしているのだから、狂気の売国政策と言うしかない。
オバマ大統領は債務上限の引き上げ問題で議会との対立が続いている。先週開かれたG20では、「米国は緊急の行動をとる必要がある」と異例の声明を出された。さながらギリシャ、スペイン扱いである。
オバマはシリア問題でも、一度空爆を決めながら立ち往生して、リーダーシップのなさを印象付けた。そんな落ち目の米国が最後にすがっているのがアジアなのだ。
「オバマ大統領はテレビ演説で、『米国は世界の警察官ではない』と宣言しました。その一方で、『我々は世界をリードする』という考え方は変えていません。しかし、超大国として君臨し続けるためには、儲ける仕組みを維持しなければならない。そこで、成長が著しく、今後も消費が伸びるアジアを取り込もうとしているのです」(国際ジャーナリストで早大客員教授の春名幹男氏)
前出の西山太吉氏も「世界」の論文でこう書いていた。
〈(東アジア地域に重点を置き換える)新軍事戦略は、イラク、アフガニスタンの失敗によって、すでに中東を諦めた米国が、対中国抑止をちらつかせながら東南アジア6億の巨大な市場にクサビを打ち込もうとする最後の戦略とまで呼ばれている。(中略)その過程では中国との交流を頻繁にし、必要以上には決して刺戟しないという巧妙な戦術も組み込まれている〉
米国にとって、アジアは最後の砦だ。ここで失敗したら、もう後がない。最後のバクチみたいなものだ。そのために中国とも裏取引する。すり寄ってくる安倍も利用する。日本にTPPの旗振り役をやらせ、日米同盟強化を大義名分に、もっと協力を迫る。安倍はというと、それに応えるために、日本を丸ごと差し出そうとしているわけだ。
◇戦争をする国への入り口が開く
安倍がもくろむ集団的自衛権の行使容認は、米国の最後のバクチのお手伝いだ。その前提条件が日本版NSCと秘密保護法になるのである。
こんな亡国政策を黙認していたら、いずれ、国民の生命も財産も米国に吸い上げられてしまう。日本は重大な岐路なのだが、野党も協力するヤラセ国会を見ていると、暗澹たる気持ちになってくる。
日本は少なくとも表向きは民主主義国家として存在してきたが、それも今国会が最後になるのではないか。そんな予感すらしてくるのだ。
「なぜ、安倍政権は秘密保護法を急ぐのか。今でも国家公務員法に秘密保護の規定がある。現状でも秘密保持はできるのです。裏を返せば、政府は今後、国の針路や国民の命運を大きく左右する重大な秘密が出てくると予想しているのでしょう。そのために規制の網を大きくしておく必要がある。そう考えているとしか思えません。その手の秘密とはもちろん、軍事機密でしょうから、日本はこれから戦争をやる国になるのです。安倍政権は今、その準備を進めようとしているのですよ」(法大教授・五十嵐仁氏=政治学)
この法案を通したら最後、日本は戦争をする国になる。その入り口が公然と開かれてしまう。この国会を歴史に残すようなことがあってはならないのだが、絶望的だ。