「ピーチ」の関西初成田行きの初便に自らデザインした制服を着てCAを務めることを発表した篠田麻里子さん=9月28日、東京・代々木競技場
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20131012/ecn1310121128000-n1.htm
2013.10.12
【ビジネスの裏側】
10月27日に関西国際空港と成田空港を結ぶ路線を開設し、ついに首都圏に進出する格安航空会社(LCC)、ピーチ・アビエーション。関空を拠点に約78%と高い搭乗率を誇るが、すでに7社のLCCが参入している成田では後発で、人気アイドルグループ「AKB48」の元メンバーを公認CA(客室乗務員)に起用するなど、PR活動に躍起だ。7年後に五輪開催を控えた首都圏への進出は“悲願”だったピーチ。激烈なLCC競争が展開される首都圏で、果たして勝算はあるのだろうか…。
■空からマリコ!
「このたび、ピーチの公認CA(客室乗務員)になりました!」
9月28日、東京・代々木競技場。国内最大級のファッションと音楽のイベント「ガールズアワード2013」の開場直前、会場が異様な熱気に包まれる中、元AKBメンバーでモデルの篠田麻理子さんは、声を張り上げてこう宣言した。
篠田さんはこの日、ピーチのCAをイメージして自身でデザインしたという制服姿で登場。「公認CA」として、27日には関空発成田行きの初便に搭乗し、機内アナウンスや飲み物の提供などの乗務をこなすという“重大発表”をした。
その後、篠田さんは制服姿のままでガールズアワードにも出演。ピーチの旗を力強く振りながら、ピーチのCAを引き連れてランウェイを闊(かっ)歩(ぽ)し、巨大イベントの舞台を利用してピーチがターゲットとする若い女性たちに、強烈にアピールした。
■“関空拠点ならでは”の強み
ピーチは昨年3月に関空に就航すると、破格の低運賃と高い就航率でこれまで航空機を利用していなかった層を開拓、多くの利用者を獲得してきた。現在、国内線8路線、国際線5路線を展開している。だが、首都圏にはまだ乗り入れていなかった。
関空−成田線はジェットスターも昨年7月に開設しており、ピーチは後発だ。だが、関空を拠点とするピーチには強みがある。
成田には、コスト削減のため同じ機材で複数の路線を結ぶLCCにとって「鬼門」となる発着時間制限があるため、ここを拠点とするLCCはいや応なしに欠航リスクが高まる。だが、関空は24時間空港のため、ピーチにはこのリスクがない。実際、ピーチの欠航率は今年4〜6月で0・24%で、ジェットスター(1・65%)やエアアジア(1・11%)など、他のLCCに比べ格段に低い。
ピーチの井上慎一最高経営責任者(CEO)は「ピーチは成田拠点でないため、欠航リスクが低い」と強調。首都圏での勝ち目は十分とみている。
■就航前から増便!
ピーチの関空−成田線の最安値は3790円。同時期のジェットスターは4090円としており、現時点ではピーチが最安値を突っ走る。予約が好調に推移したのを受け、就航前ながら来年1月10日から1日1往復増便して3往復とすることが決まった。目指す搭乗率は70〜75%と、目標も高い。
「日本最大のマーケットは首都圏。関西と関東はもともと太い旅客需要がある」と井上CEOも指摘していたように、首都圏進出は、ピーチの“悲願”だった。井上CEO自ら、6月には路線開設発表に合わせて東京・増上寺で安全祈願し、8月にはCAらと東京・丸の内で通行人におしぼりを手渡して利用を呼びかけるなど、東京でのPRに力を注いだ。
関空−成田線が開設されれば、国内の流動のみならず、韓国や台湾などアジアと成田を関空経由で結ぶルートも確立でき、大幅な利用増が見込める。7年後には東京五輪も控えており、就航後の新需要創出は充分期待できる。
井上CEOは、「関西だけでなく東京でも旅のイノベーションを起こし、日本全国を元気にしたい」と意気込む。格安運賃と運航品質の高さ、ブランド力−。3つの武器をひっさげて首都圏に殴り込みをかけるピーチは国内外のLCCがしのぎを削る中、関空同様の成功を収められるのか、注目が集まっている。
(中村智●(=隆の生の上に一))