「世界文化遺産」をひっくり返した菅官房長官のバラマキ根性
http://gendai.net/news/view/111095
2013年09月25日 日刊ゲンダイ
逆転の決定だ。「明治日本の産業革命遺産」が、世界文化遺産登録の候補に推薦されることになった。先週末の関係省庁連絡会議で、政府が正式に決めたのだ。今月中に必要書類をユネスコに提出、可否は2年後の2015年に審査される。
各国の文化遺産推薦枠は年1件で、これまでは文化庁の文化審議会が決めてきた。昨年は、同審議会が「富岡製糸場と絹産業遺跡群」を推薦し、政府も決定している。前例に倣えば「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」で決まりだった。
ひっくり返したのは菅官房長官である。
「今年の5月に、稼働中の産業遺産を含む場合は内閣官房の有識者会議で推薦できると閣議決定した上で、最後に文化庁案をはじき飛ばした格好です。『教会群』は長崎、熊本の8市町が対象エリアになりますが、『産業革命』は山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、岩手、静岡の8県11市にまたがる。調整役の菅さんは、『ものづくり大国の歴史を物語るもの』とか言っていましたが、テーマは後付け。エリアが広範囲に分散していることが重要だったのです」(霞が関関係者)
あちこちに分散すれば、テーマがぼやける。地域が限定されている方が海外の人たちにも分かりやすいと思うが、お構いなしだ。
候補地を抱える自治体も一枚岩になれない。長崎県は、文化庁と足並みを揃えて「教会群」を推してきた。「産業革命」でも長崎造船所などが対象となるが、中村知事は「産業遺産の15年登録には反対」「審査に耐えうる熟度にない」と公言している。
それでも官邸が「産業革命」をごり押ししたのは、バラマキの口実に使えるからだ。
「世界文化遺産を目指すとなると、インフラの整備は必須です。例えば長崎市の端島炭坑にはトイレがありません。高島炭坑もそうですが、アクセスは船だけ。観光客の受け入れに耐える環境づくりが必要になる。古い施設は改修も手がけることになるでしょう。案内所や宿泊施設、道路の整備はもちろん、遺産までの遊歩道や広場、公園なども欠かせない。そうやって地元にカネを落としてやれば、票になって返ってくるという計算。自民党らしいやり方です」(永田町事情通)
そういえば「産業革命」に含まれる山口、福岡は、安倍首相と麻生副首相の地元だ。モロ選挙区ではないが、なんとも怪しい決定である。