ドコモのiPhone発売でスマホ市場も大きく変わる?
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130915/dms1309150731008-n1.htm
2013.09.15 「日本」の解き方
米アップルの新iPhone(アイフォーン)は、NTTドコモを含めた国内通信大手3社がそろって発売することになった。コンテンツ事業者に通信回線を提供するだけになり、収益源が限定される「土管化」をドコモは危惧して、iPhoneの取り扱いに慎重であったが、au(KDDI)とソフトバンクへの流出に歯止めがかからないため、やむを得ない選択だった。そもそも、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)からスマートフォンへの移行自体が「土管化」ともいえる。
筆者は、auのiPhone、ドコモのギャラクシー、海外用のSIMフリー端末の3台持ちだ。ドコモを使うが、フィーチャーフォンでキャリアメールを使っていた人のためにspモードがある。スマートフォンで「docomo.ne.jp」のアドレスを利用するためだ。しかし、不具合が発生したこともあり、新サービス「ドコモメール」を提供予定となっている。
昨年10月の発表時点では、今年1月開始予定だったが、延期が重なり、現在の提供予定は10月下旬だ。スマートフォンへ移行したために、ドコモ独自のサービス提供が難しくなった「土管化」の象徴だろう。
ただ、「土管化」という言葉にはちょっと違和感がある。NTTの回線は、もともと独占企業の恩恵によって作られた「公共物」である。その意味では、誰でも使える「土管」なのだ。その「土管」を使って独自のサービスで儲けた時代はあっても、いずれなくなるものだろう。
通信会社が「土管」になると、それを使う家電メーカーはどうなるだろうか。iPhoneはOS(基本ソフト)とハードをアップルが作っているため、ユーザーは使いやすい。
これに対し、日本の家電メーカーは、スマートフォンではグーグルのアンドロイドをOSとせざるを得ない。同じアンドロイドOSの韓国・サムスン電子とアップルの挟み撃ちにあっていて苦しいが、アベノミクスの円安によって、ハードの差がなくなりつつあるので、サムスンに対しては勝機が十分あるだろう。
日本でスマートフォンへの移行が進んでいるといっても、総務省が発表した2013年版の情報通信白書によれば、日本国内のスマートフォン利用率は38・2%。韓国(67・8%)、米国(47・6%)等と比べ、低い結果である。政令指定都市クラスでも、東名阪などの大都市以外では、スマートフォン利用者は少なく、さらに地方に行けば、ガラケーのユーザーは多い。
そうした人にとってはiPhoneを買っても、単に通信料が高くなるだけで、特にメリットはない。もともとパソコンを使わない高齢者も多いから、フィーチャーフォンとキャリアメールで十分だという。となると、たとえば富士通の「らくらくスマートフォン」がある。海外では円安メリット活用、国内では高齢者向けというのが当面の日本のスマートフォン戦略だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)